魔刀ルーゼ
「ん?遊馬……さん?」
「「「「え!?」」」」
しまった、完全に忘れてた……自分で紹介おいてなんだけど何で今日君達が居るんですかね?
「ひ、人違いじゃ、な、ない、ですかね?」
精いっぱいの否定。こんな地獄めいた出会いは勘弁して欲しい
「あれ?あの時居なかった人も居ますけど玄斗さんの家でホームステイしていた人達ですよね?」
はい、詰みー。もう逃れられない!
「じゃあやっぱ玄斗さんだ!」
「あららぁ?その恰好はぁ?」
「玄斗さん……やっとあなた女装の良さに目覚めたのね!」
やめろぉ!そんな期待した目で見るなぁ!
「あはは……こちらの席へどうぞ?」
店長さんが魔法少女と梓さんの居る席の隣の席に誘導する。うん、大人数だから場所的にもここしか無いのは分かるよ?でも今ここはやめてほしかったかな?
「ね?ね?写真撮っても良い?良いよね?撮るよ?撮るね?」
「いえーい!ピースピース」
「私もぉ記念に一枚撮ってぇ」
「私も撮ってください」
「遊馬さん、私も一枚お願いします」
どこからか取り出した一眼レフのカメラでパッシャパシャ撮り始める梓さん。なんか周りの皆もピースサインとか取りながら俺と写真を撮る。皆まだ俺の許可まだ取ってないやん……
「うほぉ~!素晴らしい写真が大量に!」
女性がうほぉ~とか言わない……
「ご注文はどうしましょうか?」
「あ、いつもの7つで」
「そう言ったら玄斗君って認めちゃってる様な物だけど……はいハンバーグ7つですね」
「あっ」
すっかり気が抜けてたけどそうじゃん。何が「いつもの7つで」だよ。いつか言ってみたいセリフだけど今じゃねーよ……
「玄斗ちゃんはどうしてそんな恰好をしてるんですか?」
ピクッと眉間に皺が寄りそうになるが抑えろ……知り合いに見られたらこうなる可能性もあると考えていなかった俺が悪いんだ。梓さんが俺を煽っている訳じゃ無いだろう。多分自然と俺の恰好を見てそういう言葉が出たんだろう……ただ玄斗ちゃんは結構煽り力が高い
「買い物する時にこういう姿の方が得な事があるかなって……今の所お得になったっていうより損してる気がしますけどね、ハハハ……はぁ」
モールじゃ人が多くてお昼ご飯を食べるのが大変そうだったからこっちに来たけどこっちで梓さん達に出会った段階でマイナスの方が多すぎる
「女装しようとしたのは玄斗君の意思?」
「そう、でも、その、恰好を、させたのは、私達」
「貴方達……素晴らしいセンスだわ!ロングヘア黒ワンピに感謝!」
「良いなぁ、玄斗さんを毎日着せ替えさせる事が出来るとか楽しそう!」
「毎日美味しい料理に玄斗さんの着せ替え……どうやら天国に一番近い場所みたいですね……」
「まぁ確かに天国かもしれんのぅ?」
(一応皆気を付けてな?こういう会話からボロが出るかもしれないから)
自然とこっちのサイドの皆と魔法少女サイドの交流が始まる。こういう会話でボロを出すと皆と居られなくなってしまうかもしれないからこういう所は慎重になる。俺の表情は苦笑いかもしれないけど中身はかなり思案しながら話している。本当は話を切るべきなんだろうけどそれは明らかに不自然だから別の方法を取るべきなんだろうけど……ダメだ、何も思い浮かばない……アレ、やってみるか
「梓さん?」
「ん?なに?」
「俺の女装が本当に得が出来るか試してみても良いですか?」
「え?」
梓さんが一番近くに居たので椅子を寄せて近付く。その様子を皆が無言でジッと見る……図らずも会話を切る事に成功したぞ?
梓さんの目を見つめながらも梓さんの右手を両手でそっと掴む
「梓さん?お願い、聞いてくれる?」
過去数回シルエッタとかがやってきた小首を傾げるあのポーズを真似してみる。ダメだ、今正気に戻るな?今正気に戻ったらこれからずっと使えなくなるぞ?
「ダメ、ですか?」
少しだけ握る手に力を入れる。反応が無い……ダメだったか?
「反則過ぎィ!!」
鼻血を出して倒れる梓さん。流石に地面に倒れるのは危険なので受け止めてティッシュで鼻から出た血を拭き取る
「ん?やり過ぎちゃった?」