復旧
『あ、おかえりー』
「戻りましたー」
「はい、あなた達の分よ?」
切り分けられたハンバーグが乗った皿を渡される。うん、美味そうだ
『あ、スカーレット?これ少しあげる』
「え?玄斗さん?ハンバーグ食べたくないんですか?」
『なんとなーく、お腹が空いてる小さい子が居るんじゃないかなぁって』
「そういう事ならありがたく頂きます!」
クッソ悔しいけど約束は約束だ。これでもし秘密を洩らしたらギンをボッコボコにしなければならない
「なんか寒気が……」
「ん?大丈夫か?」
おっと、もしかしたら殺気を出してしまったかもしれない。抑えなきゃ
「まぁ喰おうぜ?」
ハンバーグを一口食べる。肉汁が口の中に広がると美味さが爆発する。これは止まらなくなるやつや
『いただきまーす』
玄斗デコイは内部で影が動きを操っているのでその影を通してクロガネ側に送る事が出来る。味覚共有が多分出来ないだろうルーゼとかはこの方法で食べてもらう。一口サイズずつの転送になるからちまちま食べてくれ
(おぉ!口の中に味が広がる!)
(食べてないけど、美味しい)
(不思議な感覚なの!)
(こんな事も出来たのかのぅ?とにかく美味いのじゃ!)
(んー美味しいけどやっぱり自分で食べたいですね……)
味覚共有出来る側は口の中にハンバーグの味が広がっているらしい
(はむっ!はむはむっ!うまーい!)
転送されるハンバーグを食べているルーゼは実際にパクパクとハンバーグを食べているけどどう考えてもペースが速すぎて転送される度に食べてる
(次!早く次をくれー!)
仕方ないので玄斗デコイの食べるスピードを上げる。行儀悪くならない様にするけどそこまで気にする必要も無い。だって……
「もっと欲しい!」
「でももう無いわよぉ?」
「くぅ、もっと食べたい……」
玄斗デコイより先に食べ終わっている人が多い。行儀悪いとかそういうのもう超越してるよ……
デコイの分も、クロガネの分のハンバーグも無くなった
「ごちそうさん。すっげぇ美味かったぜ?」
「君の事を良くは知らないんだけど……満足してくれた様で何よりだよ」
「クロガネ。魔装少女クロガネが俺の名だ。じゃあな!」
ここで恥ずかしがったら負けだ。自身たっぷりに言って飛び立とう
「あ、あの!」
恨めしそうな顔で後ろを振り返る。アルタイルが俺を呼び止めていた。今俺が飛び立ってここから離脱しようとしたじゃん……
「今回もありがとうございました!」
深々とお辞儀するアルタイル。するとその隣にも他の魔法少女が集まる
「ありがとうクロガネ!」
「ありがとぉ」
「お世話になりました!」
他の皆もお辞儀をするのを見て俺は急いでそこに駆け寄る
「早く頭上げろ。お前らが頭下げちゃダメだ」
「「「「え?」」」」
分かってないのか……
「ここを守ってるのはお前らだろ?それが人前で簡単に頭なんか下げたら……君らの信用が下がってしまう。そんな事は俺は望んでいないからさっさと頭を上げてくれ」
守る側の人が守られる側の人の前で知らない奴に頭を下げるとかどう考えても良くない。さっさと居なくなるとしよう
「ま、俺からはこんだけだ。んじゃあな」
飛び立つのはやめて影に沈む方にした。そもそも俺は玄斗デコイと入れ替わらなきゃいけないからここから思いっきり離れる訳にはいかないじゃん……すっかり忘れてたわ
『どっか行っちゃいましたね?』
「そうだね……とりあえず皆食べ終わったみたいだし片付けしようか」
店長さんのジャストなタイミングで片付け提案……もちろん受ける
『そうですね、あの子が置いてった皿とかも集めないと』
皿を集めたり、ゴミを拾ったりしながら一人になり、入れ替わる
「よし、んじゃここでの仕事を終わらせたら久々の我が家に帰りますかー」
(そうだな!)
神名さんに帰る挨拶を言った時とかいつの間に入れ替わったのか分からないとか言ってたし、玄斗デコイがどのくらい離れても使えるのか検証出来たらクロガネで動いている間に家で留守番とかもさせる事が出来そうだ