復旧
歩いて皆の元から離れて皿を取りに行く。皿は必要だからな
周りに誰も見当たらない。カメラの類もヴァイスに調べてもらったら無かったからこれ以上のチャンスは無い。念の為木の影に向かう
「変身」
木の影からは2人の人物が出てくる。クロガネと玄斗デコイだ
「じゃ、よろしく頼んだ」
『任せとけー』
一人芝居だけどこういうのは気分だ気分
玄斗デコイは皿を手に持ち皆の元に帰る。玄斗デコイの瞳には投映陣が仕込んであるから一応デコイ側の視点も確認する事が出来る。陣が相手に見られない様に光を調節してあったり……体温調節出来たり……何気に玄斗デコイってかなりの技術詰まってるよね……
「さて、どのタイミングで出るかね……」
影に沈み込んで一旦ここから離れる事にする。玄斗とクロガネが別の人物であると思わせる必要がある為こんな回りくどい事をしているけど元々は皆がハンバーグを味わいたいという結構しょうもない理由で始まった事だ。だがそれは今後の事を考えれば大いに役立つ事だから俺はこれをやろうと思ったんだ。だからこそこれは出るタイミングが重要だ
「うーん……やっぱ焼いてる途中だな」
匂いに釣られてやってきた感じにしようか
そうして俺は影の中から玄斗デコイの操作を練習しながら鼻歌とかをしながら皆の元に戻った
「あぁ~かわいい」
「癒される……」
残念ながら聴力の方はそこまでしっかり作っていなかったので何か言われたのは分かったけど何を言われたのかは分からなかった。今後は聴力をもう少し強化した方が良いかな?これは正直実際に使ってみないと分からないな
『戻りましたー』
「ありがとう。皆も帰って来て復旧作業も終了したから始めるわね?」
どうやら皿を運んでいる間に皆が帰って来ていたみたいだ。魔法少女の目を誤魔化せるか……?
「全部終わりましたよ!」
「やっと終わったわぁ」
「ハンバーグ!ハンバーグ!」
『お疲れ様、はい先に皿あげる』
こっちから声を掛ける
「ありがとうございます。食べるぞー!」
「どうもぉ、こんなおっきい鉄板初めて見たぁ」
「皿ありがとー!がっつり食べるぞー!」
「ありがとうございます。でも今回私は焼き担当なので……」
『それで食べられないって事になったら俺達泣くよ?』
「そうだね、せっかく頑張ってもらうんだから最初に食べて欲しいな」
『そうそう、頑張るんだから最初に食べてよ』
「そこまで言うなら分かりました。最初の一口は頂きますね?」
「「「異議なし!」」」
ナイス店長!で、バレてはいないな
「では、焼きます!」
炎の翼が出ているって事はギンとエンゲージ?だかなんだかしてるんだな、道理でギンが見当たらない訳だ……っていうか見当たったらダメか
「「「「「おぉー」」」」」
肉だねが浮遊して鉄板の上にゆっくりと移動しているのを見ると不思議な感覚だ。そしてその肉だねが鉄板の上にゆっくりと落ちる。じゅわぁっと肉の焼ける音、そして匂いが辺りに広がる……やるか
「うん、そろそろひっくり返しても良いかな?」
「分かりました!」
ハンバーグが形を崩さない様にふわぁっと浮き上がり、反転して綺麗に焼けた片面が上になる
「「「「「おぉー!!」」」」」
先程の浮遊への歓声では無く焼き色への歓声。あれは絶対美味い
「美味そうだなー?」
「「「「!?」」」」
クロガネをみて驚きの表情をする4人。だがそれ以上に驚愕の表情を浮かべている人が居る
「嘘……なんで?」
神名さんがクロガネと玄斗デコイを交互に見ている。バレると困るからあんまり激しい動きは勘弁して欲しいんだけど……仕方が無い。玄斗デコイを向かわせるか
『まぁ、俺達の技みたいなものです』
こっそり神名さんの耳元で呟いて片目の投映陣を隠していた光を一旦消して神名さんにだけ見せる
「えっ……じゃあ本体は」
『あっちですよ』
木の上でハンバーグを見ながらクンクン鼻で匂いを嗅ぐクロガネの姿を皆見ている。乱入者に注目が集まるのは当然だ
「かなり良い匂いだな?とりあえず俺に注目してると焦げちまうからそっちのハンバーグに集中しな?」
「は、はい!」
スカーレットは正直にハンバーグに向き直り、店長と一緒に焼き加減をしっかりみていた
「おひさー!」
「まぁ久しぶりかな?」
やっぱデネブはとっつきやすくて良いな
「タイミングがぁ良いわねぇ?」
「これだけ良い匂いしてたら気になるからな?一口くらい貰えないかなぁって」
ベガは結構痛い所突いて来るけどそこまで気にしなくても良いって最近思って来た
「あの、ありがとうございました!」
「ん?」
「クロガネのお陰で被害は広がらずに済みました。クロガネも食べて行ってください」
「おっマジ?食べて行って良いのか?」
「皆も良いですよね?」
「「「もちろん」」」
アルタイルが他の皆にも尋ねたらすぐにオッケーが返って来た
「んじゃ俺も参加させてもらうぜ?」
クロガネも交えてハンバーグ食事会が始まった




