イレギュラーショッピング
「さっさと買う物買ってくださいね?」
この有無を言わさぬ迫力よ。まぁ一緒に買い物するって言ったし、待たせるのも悪いね
「分かりました買ってきます」
つい、蒼音ちゃんの勢いに押されて敬語で話してしまう。
流石にゲームショップの中までは付いてこないのかゆっくり店を見る事出来たが……
(売り切れだと……)
現実は非情である。装コアArrangeは売り切れていた。
(ごめんな、あの時俺が装コアを無くさなかったら今頃は遊べてたのに……)
ヴァイスの為に買ってあげたかったけど売り切れじゃ俺にはどうすることも出来ない。
(いや、気にするなクロトよ。我の我儘を聞いてくれただけでも我は嬉しい)
(そっか……)
今度入荷したら絶対入手してやる。
(あ~クロトよ?我の要件は終わってしまったから後はあの者達の所に戻ってはどうか?)
(それしかないよねぇ……)
逃げる事は出来ないだろうしなぁ。
俺はゲームショップで何も買わずに店を出る事にした。
「あれ?何か買ったんじゃないんですか?」
「売り切れだった……」
「あらら、残念でしたね。でも私達と買い物する約束は有効ですよ!」
それは忘れてませんよ。
「ところで、何を買いに行くの?」
「服ですよ服!」
あぁオシャレしたいのかそれなら荷物持ちくらい出来そうだ。
「あの店は置いている服の種類も豊富ですからね!」「そうだな!」「うふふふふ……」「どのお店なんでしょう?」
約一名どの店か分かってない様だけど俺もそちら側だ。
3名が先導して2人が後を付いていく形でモールを進んでいく。
モールの3階に上がり、どんどん進んでいく彼女達を追いかけるとその店は見えてきた。
【all-rounder】
名前から漂うなんでも置いてます感。
そして彼女達は店の中に入って行くが……
「何してるんですか?早く入りますよ?」
うん、ちょっと待ってほしいこの店名前は万能っぽいけど外から見ただけでひらひらしたスカートやワンピースなんかが置いているのが見える。ここ女性服の店じゃん。
「女性服の店だから外で待ってるよ」
「何言ってるんですか?」「そうだよ主役が居ないと!」「うふふふふ……」「なるほど!そういう事でしたか!」
あれ?さっきまで3対2だったのに4対1になったぞ?そして主役が居ないと?
あぁなるほどね完全に理解したわ。
その瞬間ハンターと化した4人から逃げるべく俺は回れ右をして走り出した。
「逃がしませんよ!」「ここで会ったのが災難だったな!」「うふふふふ……」
なんかめっちゃ足速いんだけどこの三人!?
だが、そんなハンター3人から逃げようとした俺をさらに速いスピードで取り押さえる人物が居た。
「遊馬さんごめんなさい!遊馬さんのコスプレ見たいです」
礼奈ちゃんはやっ!?しかもコスプレだと!?絶対嫌だ。だが、小学生に取り押さえられる25歳って……
「やめろー!放せー!俺はまだ(男としてのプライドが)死にたくなーい!!」
なんでこういう状況の女の子ってめっちゃ力強いの?全然引き剥がせない。
3人が追いつき俺をさらに拘束する。
「遊馬さんのコスプレ写真を撮る、これは今日のメインイベントです!」
「アタシらの服を買いに来たけど玄斗さんを見つけたらこうするしかねぇ!」
「うふふふふふ……」
「普通に可愛く……いや、ここはクール系か?」
後半2名が怖いんですが。
そして俺は【all-rounder】へと引きずりこまれて行くのであった。
(クロトよ、すまぬ。)
ヴァイスが謝って来るがどうしようもない。ここで俺は着せ替え人形にされるしかないのだ。
この4人はそうしないと絶対解放してくれない。
「遊馬さん?そんな恰好だとダメですよ?オシャレしましょう?」
オシャレって言葉に恐怖を感じたの初めてだよ。