激突
「まぁアイツらは殺してないから連れ帰って治療してやれ」
「そうしたいのは山々なんだがな」
あぁ帰る分の魔力が無いって事か?
「魔力があれば帰れるのか?」
「あぁ、この王冠に魔力を溜めてもらえればここの城ごと帰る事が出来る」
そういって自分の頭の上に乗っていた小ぶりな王冠を指差すベールゼイド
「とりあえず込めてみるか」
「なに?」
王冠に魔力を流す。うぉぉ、これかなり持ってかれるぜ?
「一人で王冠のほとんどを溜めてしまうとは……凄まじいな」
「おっと……」
魔力が空になりかける程込めたけど流石に全部は溜められなかった。ちょっと回復するまで待つか
「大丈夫か?出会った時から思っていたがお主は優しいのか非情なのか良く分からんな?」
「そうかなぁ?」
それ相応の対応をしてるに過ぎないんだけどなぁ?
「まぁ残りはそっちで溜めてもらって帰ってくれればこっちとしては問題無いかな」
「あぁ、流石にこのくらいなら余でも何とかなるがまだこちらに来たばかりなのでな?余も魔力が溜まるまで待って欲しいのだが構わないか?」
「別にいいぜ?」
城の中に入って会話してるけどやっぱ俺を嵌めようとかそういう感覚は無い。流石に罠とか何かあればこんな俺の隣ぴったりを歩くとは思えない
「なぁ?なんでそんなに近いんだ?」
気になったし聞いてみた
「余は別にこの世界が欲しい訳では無い。父上が魔王だったから余が跡を継いだだけだ」
あれ?おかしいな?話通じてない?
「余の配下は皆先代の父上の配下だった者達がそのまま余の配下になっただけに過ぎない。だから信頼関係が無いんだ。あの者達は戦いしかしたことが無いし、余は戦いを出来るだけ避けたい」
んー、意見の違いかぁそれは纏めるの大変だよなぁ……しかも自分の父親から引き継ぎで来てるとなれば簡単に切る事だって難しいだろうし
「この世界はあやつらが侵略したいと言い出して余も流石に何か実績を立てねば誰にも認められぬ形だけの魔王になってしまうのでな?」
実績無しで侵略しない……まぁあの4人を見てた感じそれで押し通せるとは思えんな
「まぁそういう世界もあるか」
ヴァイスの方は平和な感じで魔王が別世界に旅に出ても問題ないとかだけど……こういうのが普通の魔王の世界なのかね?
「そんな中、種族の壁さえ超えて信頼されているお主を見た時に余の求めている物を見つけたと思った」
あぁこれはあれだな?産まれる場所を間違えたって奴だな
「そんなお主を見た時に余の中に初めてこの者が欲しい!と思ったのだ!」
ん?なんか雲行きが……
「お主、余のモノにならないか?」
「は?」
「余の下に付くのが嫌なら余の夫にならないか?」
「ちょっと?」
「お主が欲しい欲しい欲しい!」
なんか駄々っ子みたいになったぞ!?
俺の横にぴったりくっついていたのはこういう事か!
「ちょっと離れろ!」
「きゃん!激しいのが好みなのか!?」
だぁぁなんだコイツ!?キャラ崩壊も程々にしろ!
(凄く、ムカつく、殺しても、良い?)
あぁシルエッタがキレてる……これ収拾着くのか?
少し時間が掛かったがシルエッタを宥めて、ベールゼイドを落ち着かせた
「まず俺はお前のモノになる気は無いし、お前は元の世界に返れ。魔王としてはダメかもしれないけどお前のやりたい様にやってみれば良いんじゃね?上手く行けば皆が認めてくれるかもしれないぜ?」
「……やはりお主も一緒に来ないか?」
「悪いけど俺はこの世界が好きなんでな?まぁやるだけやってみろよ?」
「そうか……ふふ、何故かお主に言われると出来そうな気がしてくるな!やってみせるさ!」
そうそう、やる気があれば意外となんとかなるもんだ
「では皆を連れて帰るとするか!」
魔力ががっつり入ったお陰か王冠も少し輝いている気がする
城の中から出て外に行くと4人が多少回復した状態でそこに居た
「皆、帰るぞ」
「はぁ?何言ってんだ!これからだろうが!」
「皆この者に負けたのだ。この世界を支配するのは無理だろう」
「この者が余達が帰る為に必要な魔力の大半を供給してくれたのでな?」
「あ?俺達が帰る分?」
なんか顔つきが変わったぞ?なんだ?
「魔力の大半っつってたな?それじゃあ俺達も出せば良いのか?」
「あぁ、そうすれば皆帰れるぞ」
足りない分の魔力を王冠に補充する為王冠を下ろして4人の前に出す
「頼むぞ?」
「あぁ、任せろ」
その顔に暗い笑みを浮かべていたのが見えてすぐに動き出したが遅かった
「え?……ごふっ」
「ふふふ、やっと私達の時代よ~」
ヴァードに腹部を貫かれてベールゼイドが地面に倒れた