ドッペル・コミューン
「はぁ!」
「しょ!」
「中々やるじゃないか……俺の3つ負けだな?」
「さっきは我が4つ負けだったからなこれでもまだイーブンでは無い」
今俺達がやっているのは影の腕を使ったじゃんけんだ。何かを掴むとか撫でるとかはまだ単純な動きだがやはりじゃんけんとなるとかなり頭がこんがらがる。しかも……
「うん、大丈夫、セーフ」
シルエッタの指示で隣り合った腕で同じ物を出さない様にと言われ、出してしまうとその時点で負けと言われていたのだ
「これかなり頭を使うな?」
「うっかりしていると勢いで同時に同じ物を出してしまいそうになるからな……」
右上、右下、左上、左下の4つの腕でグーチョキパーが隣で被らない様にというのが俺の脳みそを刺激する
「はい、負けた方は、肩揉みか、喉撫でか、選んで」
訓練としてのじゃんけんをして、負けたらシルエッタの肩揉みをするか今は魔物状態のケルベートの喉や頭を撫でるかを選んでやる事にしていた。ケルの方は後からやって来てシルエッタの肩揉みを見て「私もなのー!」って来たのでじゃあ負けた方の追加訓練でって事でそこに座っている
「今回は肩揉みにしよう。次負けた時は喉を撫でてやるぞ」
「ちょっと、良い気分」
魔王様に肩揉ませる配下……そりゃ気分も良くなるか?
「皆が、影の力、理解してくれる、嬉しい。ついでに、丁度良い、力加減」
肩揉みが気持ちいいのはついでなんだ……
「だが、これは良い訓練になるな?じゃんけんによってどう操作するか脳を慣らす事が出来る。肩揉みや喉撫でで力加減も学べるしな?」
勝っても負けても訓練になる。やっぱ良い先生だね
「腕の、操作、もっと、慣れれば、色々、出来る、だから、頑張って」
肩を揉まれながらも俺達にエールを送るシルエッタ。ヴァイスが肩揉みしている間も俺は影の腕で木に掴まって懸垂してみたり、持ってきていた折り紙を折ってみたり等色々やっていた
「次、行こう」
「よし!次は負けんぞ!」
「おぉし!じゃんけんぽん!あっ」
勢いに任せてじゃんけんしちゃったせいで右下と左下がチョキで被ってしまった。これは俺が反則負けでヴァイスが反則していない限り俺の負けは確定だ
「やってしまったな?我は今回ミスしていないぞ?」
ヴァイスは隣り合った手が同じ手で被っていなかったので俺の負け確定だ
「どっち?」
シルエッタとケルベートが並んでいる。いや待てよ?
「俺はヴァイスより影の腕の操作が上手い!」
「いきなりどうした?」
そんな宣言されたら普通はどうしたコイツ?ってなるだろう
「4本じゃ足りないって話だ」
さっきまで4本出していた影の腕を6本に増やす。かなり脳が混乱しそうだけど何とか制御出来る。じゃんけんしてる訳じゃないんだ
「よし!二人とも同時にやってやる」
一番上の影の腕を伸ばしてシルエッタの肩に、残りの4本はケルベートの左右の頭と喉に俺自身の腕はケルベート中央の頭に、図らずもケルベートを宥めた時と似た構図だ。そこにシルエッタの肩揉みも追加だけど
「凄い、6本と、自分の腕、ちゃんと、使ってる」
「わふぅ……」
2人の顔を見るに力加減も丁度良いかな?
「どうだ?ヴァイスめ、ここまでの操作は出来ないだろう?」
「ぐぬぬ……悔しいが我はそこまでの精度でその本数を動かす事は出来ぬ……」
じゃんけんで勝ったヴァイスは影の腕で腕立て伏せをしていたけど……それじゃあ腕の精度上がらないんじゃないかな?
「やり方は色々あると思うけどヴァイス?そこにある折り紙使って良いから紙飛行機でも作ってみたら?」
影の腕の腕部分より手先の訓練をした方がイメージ力とかその他諸々が訓練出来る(※個人的な差はあります)みたいな注釈が付きそうだけど
「クロトがそれだけ出来るという事はそうしてみるのも良いかもしれぬな……よし、ちょっと折ってみよう」
そう言って俺は肩揉み、喉撫でヴァイスは折り紙と訓練してるのかどうか分からない光景が広がっていた




