野良猫デュエット
「ところで、一つ提案があるんだが良いか?」
怪我して終わるというのはあまり良いものではない。
「ほう?もしかして野良猫同盟に入りたいとか協力したいとかか!?」
いや、ちげーよ。
「怪我したら負けじゃ無くて、降参したら負けじゃダメか?」
「ほう?余程自信がある様だ。良いだろう、降参させたら勝ちだ。」
向こうは自信があるのか、後ろでマーシャルさんがふっふっふと笑っている。
二人がどれだけコンビでやってきたかは分からないが、俺達も負けるわけにはいかない。
「では改めて、いざ勝負!!」
明星さんが開始の合図を出す。
俺もバイザーを閉じ、戦闘態勢を取る。
「ふっ!」
マーシャルさんが軍帽の鍔を掴むと俺の左右の地面から戦車の砲塔が現れた。
そして
「式神ドロー!」
明星さんがブレスレットから紙を一枚引き抜く。
「こっちも仕掛けるぜ?」
左右の戦車砲はこちらを見ている為、彼女達に近づけば誤射かそれを恐れて撃ってこないと予想し、接近を試みる。だが
「行け!」
明星さんは先程引き抜いた紙を投げると、その紙が虎に変化した。
「グルルルル……」
見た目は紙だがこれも魔法で出来ているのだろう。前足の爪が地面をガッチリ掴んでいる。あれで引っ掻かれたら痛いでは済まなそうな気もする。
戦車砲から逃れる為彼女達に近寄ろうにも、目前には紙の虎。これでは近寄れない
なるほど自信があるのも頷ける。だが、それは魔物相手の話であるけど。
(ふむ、左右の砲は防げそうであるな、正面の虎は我に任せよ。)
心強いねぇ
「この状況で降参しないか、ではその自信砕いてやろう!」
マーシャルさんがまた軍帽の鍔を掴む。すると戦車砲はこちらに狙いを定め、発砲してきた。
ガァァン!と金属のぶつかる音がする。放たれた戦車砲はクロガネの巨腕の手の甲で受けた。
「ふぅ結構衝撃がくるな?」
砲の痛みは感じなかったが衝撃で手が内側に押され、若干頭に腕が当たったのがちょっと痛かった。こんな事ならブーツ使って回避した方が良かったかな?
「なっ!?効いてない?」
驚いてる様だがまだこれからだぜ?
(フレイム!!)
「ガアァァァ!」
紙で出来た虎が燃えている。
「そんな!火の魔法なんて何時使ったの!?」
明星さんが驚いている。燃やした張本人はまだまだ余裕があるようで火力をさらに上げていた。
「くっまだだ!式神ドロー!」
また明星さんが紙を引き抜き、投げられた紙は象に姿を変える。
「パオォォォン!」「合わせる!」
(ふむ、では別の魔法でも使うか)
象がこちらに迫りくる。マーシャルさんも注意を逸らす様に戦車砲で援護射撃をしてくる為動けない。いや、動かない。我等がヴァイス様がなんとかしてくれるそうなのでお任せして戦車砲を腕で受ける。
(リミット、レンジ、テンペスト!)
ヴァイスが魔法を行使した瞬間、嵐の様な突風が巻き起こり、紙の象が引き裂かれ、戦車砲は地面から吹き飛んでいた。だが、嵐が巻き起こっているのは俺の周りのみで二人組には届いていない。きっと範囲を限定して魔法を行使しているのだろう。二人に当たったら怪我すると判断したヴァイスの優しさだ。
「「うっそぉ!?」」
二人は驚きを隠せないでいる。
「まだやるのか?」
大分相手の気持ちを削いだと思うんだが……
「くっ……だが、まだ諦める訳にはいかない!」
マーシャルさんはまだ諦めるつもりは無い様だ。
「そ、そうだ!諦めて堪るか!」
明星さんもまだ諦めないみたいだ。
「そうか、なら叩きのめすまでだ」
あれ?なーんかこれ俺が悪役っぽくなってない?諦めないで戦うって言ってる二人に対して叩きのめすとか言っちゃったし。前にもあったぞこんな悪役ムーブ。
「明星!時間稼ぎを頼む!」
「分かった、式神ドロー!付喪!」
明星さんが紙を引き抜いてブレスレットの下側に紙を貼ると今までの様な紙の獣では無く、紙の刀がその手に握られていた。
「このぉ!!」
明星が接近して袈裟切りを仕掛けてくる。二人とも忘れてない?降参させたら勝ちだよ?殺しちゃいかんでしょ?
残像ダッシュを使い、後方に避ける。
「だったらぁ!」
すると、避けられる事を予測していたのか次は紙の刀を解除して、蛇の式神に変化させ、俺との距離をさらに作る。
「今だ!」
「これで、どうだぁ!!」
マーシャルさんが自分の前に先程よりデカい戦車砲を6門展開してこちらに照準を合わせていた。なるほど、だから距離を取ったのね。
砲からの一斉射を喰らう。
そして爆発




