ドッペル・コミューン
ピロンピロンピロン
「おい……おい……」
ピロンピロン
「どうするんだよ……これ」
俺はディールに詰め寄っていた
「あはは……まさか、こんな事になるとは」
さっきからメールが止まらない。誰からって?神名さんからだよ
俺のメイド姿でポーズも決めた写真をディールが神名さんに送ったらすげぇ量のメールが来た。まぁちょこっと内容を見てみると……
「さっきの写真は何!?なんであんなに可愛くなるの?」「もう少しローアンから頂戴!」「これディールちゃんが撮ったの?凄い!カメラマンのセンスあるよ!だからもう何十枚か写真をお願いします」「写真写真写真写真写……」
「ヒエッ……」
最近文章にビビってばっかりな気がする
「これは覚悟を決めて写真を撮った方が良いのでは?」
「え、でもなぁ……」
そうこう言ってる間にもピロンピロンとメールが来ている。返事を返さないとこれは止まらないぞ……
「撮って送った方が良いの!」「送ってしまって楽になるのじゃ」「大丈夫、減るような、物じゃ無い」
むしろ増えてんだよなぁ?俺の黒歴史が
ヴァイスは我関せずって感じだ。下手に触れても何も変わらないと分かっているのだろう
悩んでいるとディールが提案してきた
「じゃあ後5枚って制限を付けたらどうでしょう?」
「5枚か……それならまぁ……良いかな?」
制限を付ければ拒否してる訳じゃ無いから通るか?
「じゃあそういう風に送りますね」
「あぁ、頼むよ」
俺には自分でメールを送る気力は無かった。これから自分のベストショット(不本意)を撮るのに表情だって作らなきゃいけないのだ。撮り直しなんて絶対させねぇ
「返信来ました。『5枚かぁ、ちょっと少ないけどまぁ良いよ!』だそうです」
そこからは俺にとって地獄の様な時間がやってきた
「もうちょい胸元強調するような感じでェ!妖艶な表情でェ!」
監督の指示に従い、頑張ってポーズや表情を決める。胸元を強調したところで何も無いのだが
「あぁ!良い!良いよー!じゃあまずはコレを……」
俺の写真が送られてますね……スマホが振動しているからお返事メールが届いているのだろう
「ふむふむ、では次は肩出しですね!」
酷くない?俺の尊厳がガリッガリ削られていく
「舌チロッと出して舌ァ!」
監督も熱が入っている。過激な要望が追加される
撮り直しなんて事になったら苦行が更に続く事になるので心を無にして指示通りにポーズと表情を決める
「はいオッケー!送ります」
そして送って確認してを繰り返して4回目
「ローアングルからスカートの中身を、ですか!良いですねぇ!」
良くねぇよ
「ちょっと待って?スカートの中って俺もまだ確認してないんだけど……シルエッタ?」
「もちろん、女性用」
グッと拳を握るディール。やめてくれよ……
「さぁ!撮りましょう!さぁ!」
グイグイと地面を這ってこっちを見上げてくるディール。もちろん流石にそれは今までのものより遥かに恥ずかしいのでスカートを押さえて後退る
「あぁ!良いですよその表情!自然で素晴らしい!」
ズリズリと地面を這うディールのその目はカメラと一緒だ。絶対に見られる訳にはいかない
ディールと俺の攻防は壁際まで続き、遂に退路が無くなった。最後の時が来た
「シャッターチャーンス!パシャパシャ!」
口でパシャパシャ言ってるけど実際見られてしまったんだろう。終わったと思った
「う、うぅ……」
俺の中で何か壊れてしまった気がする。泣いてしまった
「泣かないで?」「流石にやりすぎじゃったようじゃ」「ちょっと可哀想なの……」「だ、大丈夫か?とりあえずシルエッタは服を元に戻してやってくれ。後ディールも、もう勘弁してやれ」
ヴァイスが皆を纏めて一旦落ち着いた
「えぇ、今確認を取っています。虐めすぎて可哀想なんでもう止めてもらっても良いですか?って」
ディールは黙っていたが今までのやり取りは全て録画もしていた。その中でも使えそうな場面を編集してこれを5枚目の分として勘弁してあげてくださいと送っていた。玄斗はディールが送っているメールの文章は見ていないのでそんな事には気が付いていない




