野良猫デュエット
まずは脚部装甲から行こうか。
黒く光沢が有り、膝上まで装甲で守られている。その上はホットパンツとの間の広めの絶対領域だ。
「こいつのダッシュには救われたからしっかり知っておきたい所だ。」
残像ダッシュは使いこなせば攻めにも守りにも使える。
ブーツにエネルギーが流れ、青い燐光が出る。すると目にも止まらぬ速さで体が前に進む。
フォンッ……
「くっ、やっぱ速すぎて視界が……」
(なれば、バイザーを使えば良いではないか?)
視覚補助の機能ってこの状況にも対応するのか。だったら……
「バイザー起動」カシャン!
もう一度ブーツにエネルギーを送りダッシュを試みる。
フォンッ……フォンッフォンッ
「おぉ!視界がブレないし、連続で使っても問題無さそうだ!」
最初に直線で飛び、残りの2回は直角で曲がったり、飛ぶ距離を短くしてみた。
結構自由が利く。
次は腕部だ。
見るからにデカい、腕を下ろせば地面に手が着きそうだ。肩から手先にかけてデカくなっている黒い金属の腕部、元の腕はどうなっているんだろう?性別も変わっちゃってるくらいだし、気にしたら負けか。
(クロトよこの間の鰐頭の魔石、我の居た世界の魔石と似ていたが、若干違った様だ。少し魔力が濃い)
もしかして、そのせいで俺の心臓が変身アイテムになったんじゃない?
「ところで、なんで今鰐頭の話?」
(鰐頭の魔石を取り込んだ事でアームから射撃出来るようになったぞ!)
まじ?遠近対応出来るの?それいいじゃん!
「早速一発撃ってみようか。」
右手を約10m程離れた木の幹に向かって伸ばす。
掌に銃口が現れ、木に向かってビームがバシューン!と出た。
「すっげぇ……」
狙っていた木のさらに後ろの方の木の幹が撃ち抜かれていた。
「すっげぇけどこれさ……」
(む?威力がまだ足りないか?)
いや、そうじゃないんだ。
「これ、手がデカすぎて狙えねぇ!」
そう、巨腕は殴るときには威力が有るが、ビームが撃てる様になっても精密射撃が出来ない。
(うむ……そうであるか……)
ヴァイスも残念そうだ。そりゃあ折角新しい武器が手に入っても使い辛いなら無くてもいい。
(クロトよ提案があるのだ。)
「提案?何?」
(クロガネの腕部を銃にしてしまうというのはどうだ?)
腕部を銃にする…?何ソレ?そんなのやばくない?
「それいいね!早速やってみよう!」
ヤバいカッコ良くない?
(では早速腕部を構築し直すから少し待ってくれ)
ヴァイスが構築し直している影響か腕部がガチャンガチャン音を立て変形していく。
変形が終わるとそこに巨腕ではなく、長く太い銃身と銃口が現れる。
(銃形態だ、撃ってみよ)
腕が銃になった事で狙いを付ける事が出来る。
「サンキュー!これでビームが使える!もう一度撃ってみるか、次は威力落としてね?」
(任せよ!)
銃口をまた木の幹に向ける。次はバイザーも視界が確保されている為、照準の補正をしてくれる。
シュゥン!と木を撃ち抜き、既に撃ち抜いた穴をもう一度ビームが抜ける。良い精度だ。
「これなら狙撃も出来そうだな?今は両手とも銃だけど片手だけとかにも出来る?」
(腕の機構は構築済みだからすぐに変更することが出来るぞ!)
ヴァイスは優秀だなぁ。
左右で別の武装を使えるのも戦い方の幅が広がるというものだ。
「ありがとうヴァイス!流石だな!」
(一緒に戦っているのだ!クロトが戦いやすい様にするのも我の仕事だ!)
ありがたい話だ。
「じゃあ次は魔法だな」
(魔法は我の領分だ!我の力見せてやろう!)
そういってヴァイスは魔法を行使する。
(フリージング!)
そして森が凍り付いた。
「これは……すごいな」
一瞬にして辺りが凍り付くなど自然ではありえない。まさに魔法としか言えない。
(ふっふっふどうだ!凄いだろう!)
きっとドヤ顔だろう。だが、そうしたくなるのも分かる。前に蒼音ちゃんがモールを修復した時にドヤ顔だったのはこういう気持ちだったのだろう。
大体の性能も分かった所でそろそろ帰ろうと思った時、それを感じた。
「ヴァイス、今何か感じた?」
(あぁ、我も感じた。この感じはあの時と似ている。)
あの時と似ている、という事は……
「(魔物……!)」