魔装少女 起動
「俺の名前は魔装少女クロガネだ!」
俺はそうアルタイルに宣言した。
「魔装少女?よくは分かりませんがこれは貴女がやったんですか?」
「あぁ」
短く肯定する。
「うわぁ……」
ドン引きですよ。うん知ってた。さっき「ヒィ!?」とか言ってましたもんね?
「と、とにかく未所属の魔法少女は保護対象なので私と一緒に北海道第一支部まで来てください!」
まぁ確かにここは北一支部の管轄か。ただし、一緒に行く訳にはいかない。
「悪いが一緒に行く訳にはいかないかな?」
だって俺男だし、後ヴァイスも一緒だし。変身解いたら阿鼻叫喚でしょ?
すると彼女は良い返事が貰えなかった事にイラついた様で怒り出した。
「もう!どうして野良の人っていつもいつも従ってくれないんですか!」
「そりゃあ個人の事情があるってヤツだろう?」
じゃなきゃ拒否する理由が無いからなぁ? 政府公認の魔法少女はお給料が出るし、色々な面で優遇されるらしい。その代わり、魔物が出たらその討伐に向かうという義務が課される。俺の場合は正体がバレたくないって事情があるからお断りしているのだが。
(クロトよ話している最中に悪いが鰐頭の死体が魔石に変わったぞ!)
視線を死体があった方に向けると先程まで辺り一面血の海だったのがきれいさっぱり無くなり、代わりに何かクリスタルの様な物が落ちていた。あれが魔石ですか。
「個人の事情ですか……では私が貴女を支部まで連行するのも私の事情です!」
あれ?なんでクローを構えてるんですかねぇ?
(クロトよ我にも分かるぞ。あれは倒して無理やり連れて行くつもりだ。)
ですよねぇ
アルタイルとの距離は20m魔石との距離は5m程といった所か。
(クロトよ変身した事で我も魔法が色々使えるようになったぞ!)
おぉ!この場面を乗り切れそうな気がしてきた。
「覚悟!」
アルタイルが右手のクローを前に突っ込んでくる。だけど
「悪いな、戦うつもりは無いんだ。」(フラッシュ!)
アルタイルの目前でヴァイスの閃光魔法が発動する。
「うわっ!まぶしっ!」
よし、今のうちに魔石回収だ。ブーツの加速性能が良くて拾えずに追い越しそうになったが、手がデカくて良かった。
(おまけだ!スモーク!)
白い煙が俺達を包み込む。視界は2mが良いところかな?だが俺は再びバイザーを閉じると視界は平時と同じ様にクリアな視界になる。そして辺りを見回すアルタイルの姿もばっちり見える。
「煙幕ですか?卑怯な!」
「卑怯も何も、逃げる為さ!さらばだアルタイル!」
うーんなんかノリで言っちゃったけど悪者っぽいなー。でももう折角だし、ここまで来たら突き抜けた方が良いか。
「また会おう!フハハハハ!」
そしてモール内を爆走しモールから出た後、近くの森へと隠れた。
(先程のは意外と魔王っぽかったぞ?クロトよw)
何笑ってるんだ魔王様
とにかくあの魔物を倒し、魔法少女からも逃げ、生き残ることが出来た。後は……
「これって解除できるの?」
(……)
おいなんか言えよ
(ちょっと待ってくれ……今思い出しておるから)
頼むぜ?このままだと日常生活送るのがやべーレベルで難しくなる。
(思い出した!変身する為の変身アイテムを作る必要があるのだ!)
変身解除するために変身する為のアイテムを作る必要があるとはどういうことなの?
(初めて変身した時みたいに何度も死に掛けなければならない事態を回避する為に我が改良したのを忘れておった。)
わぁお。とんだロストマジックだ。だが戻れるのなら別に良いか。
「で?その変身アイテムってどう作るの?」
(うむ!魔石を使って作る事が出来るぞ!)
……あっぶねぇ!?さっき拾い忘れてたら取り返しがつかない所だったぞこれ!?
「と、とりあえず変身アイテム作ってさっさと元に戻ろう。」
これ以上疲れるのは避けたい。
(分かった。ではクロトよ魔石を握りしめるのだ!)
言われた通りに魔石を巨腕で握りしめる。
(ぬっ!?なんだこれは?)
またか、また何か起きたのか。
(えぇぇっと……言いにくいのだがクロトよ。)
「まさか変身アイテムの作成に失敗した?」
(いや、作成は出来たのだが……)
「でも何も持ってないよ?」
だとしたら何処に変身アイテムがあるのか。
(クロトの体内に変身アイテムがある……)




