クロスドレッサー・ゲームセンター
皆を見送り、ベンチで休む玄斗。おっと忘れていた
(何かあったらこっちで教えてねー)
ゲームセンターの中だから遠くから声を掛けても周りの音に声をかき消されてしまう。でもこっちなら邪魔される事も無く会話する事が出来る
(うむ)(はーい)(分かったです)
よし、これで安心。後はベンチでゆっくり……
「おい、あの子一人になったぞ?やっぱ彼女じゃないって!」
「いやいや、まだ分かんないだろ!」
「これは……どっちなんだ?やっぱり親戚の可能性が一番高いんじゃないか?」
まだ着いてきてたのかあの3人……予想するのは勝手なんだが、全部外れなんだよなぁ。もういっそ手でも振った方が良いのか?
「あ、あはは……」
若干ぎこちないけど軽く笑いながら手をひらひらと振る
「「「うっ!」」」
3人共なんか胸を押さえてる。なんだ?調子悪いのか?
「あれが天使か」
「恋に落ちるってこういう事なのか」
「こんな俺にも手を振ってくれるとか……あぁ^~」
なんか恐ろしい言葉が聞こえた気がした。手振るんじゃなかった……
「やっべぇどうしよ……」
この3人とベンチの俺の距離は普通の大きさの声ならギリ聞こえる距離だから小声なら相手も自分も何を言っているか分からないハズだ。とりあえずこの状況なんとかならないか?行ったばかりの3人を呼び戻すのもアレだし、休憩したいのも事実だからベンチから離れたくも無い。誰かあの3人をなんとかして……
「いでっ!」
困っていた所にゲームセンター内をキョロキョロしていた女の子が俺の目の前でコケた。とりあえず怪我が無いか確認する為、駆け寄る
「大丈夫?怪我してない?」
「いてて……」
ちょっと瞳に涙を溜めている。膝を押さえているけど擦りむいてはいないか、これはぶつけて痛い感じか?それなら……
「泣かなかったの偉い偉い。痛いの痛いの飛んでけ~」
確かこんな感じのをテレビで見た。合ってるかどうか分からないけど今の俺にはこのくらいしか出来ない
「うわぁ痛くなくなったー!おねぇちゃんありがとう!」
ナチュラルにおねぇちゃん……いや、今の恰好を見て小さな女の子が女装した男だって即見破ったらそれはそれで怖いけど
「良かったぁ怪我無くて、それじゃあ……」
ベンチに戻ろうかと思ったらスカートを掴まれた。初めての経験だけどスカート掴まれるってちょっと怖いわ
「「「バンッ」」」
3人が一斉に這い蹲る。こいつらスカート覗こうとしてたのか……犯罪スレスレだけど残念ながら俺は男だ
それは一旦置いといて今は目の前の女の子だ
「どうかした?」
「お母さん居ないの」
親と逸れちゃったのかな?
「そっか、じゃあ一緒に探そうか?」
困っている人は助けたい。ただそれだけだ
「良いの?」
「良いよ良いよ、探すからお母さんの特徴とか教えてもらえるかな?」
探すからには特徴を聞かないと探せないからね
「あぁ、でもちょっと待って?そこの3人!この子のお母さん探し手伝って!」
どうせ後ろから見てるだけなら3人も居るんだから手伝ってもらおう。さっきの事もあるから絶対断らせないぞ
「おい!話しかけられちゃったぞ!」
「あの子のお母さん探しだってさ」
「やるしかないだろ!」
よし、人手もある程度揃えたからこれで探しやすいな
「じゃあお母さんの特徴、服の色とかで良いから教えてくれるかな?」
「えーと、赤い服と白いスカート」
情報としては上出来だ。赤い服と白いスカートの女性で女の子と逸れてるならお母さんの方も女の子を探してるハズだ。だったらその服装で焦ってる、若しくはキョロキョロしている女性が探してるお母さんなのだろう
「オッケー、そこの3人も分かった?見つけたらここのベンチに連れてくる事!見つからなくてもとりあえず30分後には一度ここに集合!」
集合場所と時間を決めておけば入れ違いもないだろう
「「「了解!」」」
シュバっと音がしそうな勢いで3人が駆けていった。ゲーセン内を走るんじゃない
「じゃあ、一緒に探そうか?」
こっちはゆっくり歩いて探す事にしよう。あっ、皆に連絡だけしよう
(ちょっと迷子のお母さん探してくるから)
(なぬ?我も行こう)
(付いて行く)
(今戻るです)
3人とも戻ると言ってくれるが
(良いよ良いよ皆は遊んでて?)
皆に遠慮して自分だけで探そうと思っていた。だが、ヴァイスが待ったを掛ける
(2人は遊んでいると良い、我は探知が使えるから我が手伝えばすぐ見つかるだろう)
そういえばケルもシルエッタもヴァイスが見つけてたもんなぁ
(そういう、事なら)
(ご主人様に任せるです)
(それなら手伝ってもらおうかな?)
早く見つけられるならそれに越したことは無い。ヴァイスにも活躍してもらおう