アクティブスキルって?
「マサ、無事に使役契約がなされたよ。」
ネルの言葉に答えるように、瞳を開き立ち上がる。ネルと目が合うと、ネルへの親密感が増した気がする。
これが、使役魔法の効果なのだろう。
「ああ、何となくネルが近くに感じられる。………言葉の発声が矯正されたのか?」
俺は、先程までの会話での不都合さに辟易としていたこともあり、都合よく使役魔法が言語発声へ効果をもたらした事実に、嫌悪感など吹き飛んでしまった。
「そうみたいだね。これで普通に話ができるね。」
ネルが、頬をほんのり染めながら、嬉しそうに微笑む。
「二人とも、こんなところで朝までお喋りするつもりなのかしら?」
帰還準備をしながら、リズが若干呆れた顔で俺とネルに言った。
「ごめんなさい。」
「すまない。」
ネルと言葉がユニゾンし、何だか初めて誰かを好きになった時ような、恥ずかしくも心地好い感情に包まれる。
「使役魔法行使後の使従間で、意志疎通きっちりできるのって珍しいわよね。大概、お互いの主要言語が違ったり、そもそも感情や意思を言葉で表現する事自体が無いとかね。おっと、私までここで朝を迎える羽目になりそう。」
リズは、おどけて場を仕切り直す。
「ロイと私が先頭、ダンカンはジェイルと共に中衛。その後ろにネルが、怪我人二人をサポートしつつ警戒と遊撃。しんがりはゾーラと……マサかぁ……」
リズは矢継ぎ早に指示を伝えていき、最後に俺をどうするか少し思案する。
「リズ、俺は荷物の運搬を生業にしてきた。戦闘と言うか、戦う事は経験がほとんど出来無い。」
俺は、リズの判断の足しにと、自身の今出来ることを伝えた。
「わかったわマサ。では悪いけどダンカンと代わって、ジェイルを………この際、優しく運んじゃってくれる?…かしら。」
「それって、どんなバツゲームだよ。」
それを聞いてたジェイルが、痛みに耐えながら文句を言う。
「大丈夫だジェイル、これでも荷扱いには定評があった。」
そう言ってジェイルに近付く。
「俺は、荷物じゃねぇよ。」
「二種は持っていなかったが、人を運んで苦情を言われた事は無い。」
俺は、弱々しく抵抗するジェイルを、両手で掬い上げる様に抱える。所謂、お姫様ダッコだ。
ジェイルを丁寧に抱き上げた瞬間、頭の中に『アクティブスキルを有効化しますか? YES/NO』と、選択メッセージが浮かびあがる。
ジェイルの諦めの悪い苦情を、取り敢えず無視して、頭の中の問い掛けに集中する。
俺はメッセージの内容を理解すると共に、何故だかイタズラを成功さて喜んでいる、俺をここに連れ込んだアイツが、心によぎった。
俺は首を振り、頭の中にあるメッセージに、意識をもどす。
そもそも、アクティブスキルって何だよ?と、意識の中で疑問を誰それとなく問いかける。
『有効化出来るアクティブスキルを、すべて表示しますか? YES/NO』
相手からの機械的なやり取りに、銀行ATMを思い出す。
『キャッシュディスペンサスキルは未修得の為、有効化出来ません。』
「ブフッ」
この先、俺はATMにもATMにもなれるのかと、思わず声を出して笑ってしまった。
「おいおい、俺にそっちの趣味は無いぞ。」
ジェイルが、ひきつった顔で呻く。
「俺も同じだ。」
そう言葉を返して、気になる『アクティブスキル』に意識に意識を向け直し、アクティブスキルの詳細を表示する旨を意識する。
『 アクティブスキル一覧から、個別に選択して有効化してください。
車輌リンクLV1 YES/NO
ヘッドライトLV1 YES/NO
フォグライトLV1 YES/NO
ウインカーLV1 YES/NO
チョーキングLV1 YES/NO
エアーサスペンションLV1 YES/NO
ワイパーLV1 YES/NO 』
俺は頭の中でトラックかッ!と、アイツにツッコミを入れながら、呆れながらも一目瞭然なスキルの中から、エアーサスペンションを有効化する。
「待たせたな、多分これで荷物が壊れる心配が少し減るだろう。」
俺は皆に、準備が整った事を合図し、行動の促進をうながす。
「だから荷物じゃ無くは無いけど、俺を壊さないでくれよ。」
ジェイルの泣き言に、皆の顔に笑いに歪む。
「では、行きましょう。」
リズの掛け声を合図に、街へ向けて森の中を進みはじめる。
「おい凄いなお前、多少は揺れを感じるが、上下への衝撃はほとんど無いぞ。いったいどうなってるんだよ。」
ジェイルが、驚きながら俺に賞賛を掛ける。
「全力で走っても、多分揺れは大丈夫だと思う。多分な。」
俺はニヤリとして、少しはしゃぎ気味のジェイルに、冗談を言ってみた。
「あ、『多分』が、二回ほど聞こえたので、無理せず現状維持での進行で、よろしく頼みます。」
「リズ、少し移動速度をあげて試してみようか?」
「それは、ジェイルが何処まで壊れないで、この森を抜けられるかって事?」
リズが、惚けた返事を提示すると。
「全力ダッシュ、二十歩で貨物事故。」
ロイが、一番に悪ノリに参加する。
「最後まで行って欲しいと、希望的に……。」
「虫の息で、何とか。」
「ジェイル、ガンバ。」
ネル、ダンカン、ゾーラもノリノリだ。
「皆で俺をオモチャにしやがって、覚えてろよッ!」
ジェイルが、芝居がかった感じで、楽しそうに答えるも、しっかりと自分の身体を極力揺れないよ固定する事に従事する。
「忘れたら聞きに行くよ。」
「「「「「「アハハハハ………」」」」」」
森を抜けるまで、緊張感を誤魔化すかのような、会話と笑い声が続いたのだった。
主人公のドテチン化解除(笑)&トラックなオーガのハイブリッドな部分を開示(笑)