少女の決意と誠意
俺は立ち上がり、ネルの後をの後に続く。
ゾーラも、俺の後ろを歩いているが、槍の穂先は俺に向けられてはいない。だいぶ警戒心をとかれたのかもしれない。
「どう、リズ?」
大人二人が両手を伸ばして抱えられる位の木の根元
で、ダンカンとジェイルの応急措置をしながら、リズが振り向く。
「ダンカンは打撲だけだけど、ブレストプレートがオシャカかな。ジェイルの方は、骨が折れてるわ。狩りに来た早々残念だけど、街に戻りましょう。」
「こんな日も、たまにはある。あまりあってはいいものでは無いが、今回は運が悪かった。」
ダンカンはため息をついた後、口をヘの字にして背中を木にもたれ掛かかる。
骨折した肩に添え木とともに、厚手の帯の様な包帯で、身体に右腕をグルグル巻きに固定されているジェイルは、言葉を発する事無く項垂れている。
「ネルの方は、どうするか決まった?」
と、リズは俺を見つめながらネルに問いかける。
「言葉は通じるけど、どうも発音がうまく出来ないみたいなんだよね。」
ネルも、そう言いながら、俺の方を振り返る。
「ゴグギガガンガ(どうしたもんか)……。」
移動中会話をする度に、止まって筆談するわけにもいかないよなぁ。
そんな事をしていると、ロイが弓を携えて戻ってきた。
「今日はもう戻るだろリズ。ほら、これ。」
「ありがと。当然こんな常態で、奥に狩りに行くなんて、自殺しにいくようなもんね。」
「そりゃそうだ。」
ロイは肩を竦めて、苦笑をうかべる。
「ネル、ソイツをどうすつもりだ?」
ロイが、考え事に夢中になっているネルに訪ねる。
「勿論、街に連れて行くわ。」
ネルはそう答えると、真剣な眼差しで俺を見つめ口を開く。
「マサ、ここに置いて行かれたくは無いよね?」
「ガガッ(ああッ)。」
「だけど、街に魔物は街には入れない。」
「ガゴグガ(だろうな)。」
「でも、特別に一つだけ魔物が街へ入れる方法がある。」
「ゴンゴグガ?(本当か?)。」
ネルは指揮棒をとりだして、それを俺に向ける。
「動物や魔物を、使役する魔法でアナタを隷族させるって方法なんだけれども。」
俺の頭の中『隷族』と言う単語とともに、幼い頃にテレビの再放送で、『キンタクンテ』と言う、奴隷が主役だった海外ドラマを思い浮かべた。
そのドラマは、アメリカに奴隷が、どのように連れて来られ、強制的な重労働に加え、モノであって人間では無いと、差別的な扱われてていたのが、記憶によみがえり思わず、溢れた嫌悪感で、ネルを睨んでしまった。
「くぅッ…。」
ネルは一瞬怯えながらも、真剣な表情に戻り話かける。
「マサの、屈辱的な気持ちはわかる。これは、悪魔でもマサを街に連れて行く為だけに、使役魔法をかけるんだ。勿論、私はマサを不当に蔑む行為はしないし、皆にもそんなことはさせない。」
俺は瞼を閉じ腕を胸で組んだまま、ネルの言葉を噛み締めるように、頭の中でこの世界へ連れて来られた事、魔物の姿になってしまった事、そして死ぬまで奴隷の様な扱いわれてしまうかもしれない事を、改めて考え直す。
いくらなんでも理不尽過ぎる事ばかりで、この現状を産み出した得体の知れないアイツに、苛立ちが沸々と煮え湯の如く溢れける思考に支配されかかる。
「マサ、私は決して裏切らない。会ったばかりで、何言ってるんだと思うかも知れないけど、私を信じて欲しい。」
誠意の籠った、ネルの真っ直ぐな感情が、俺のやさぐれた心を強く暖かなモノで包み込む。
俺は瞼を開き、ネルを見つめ返しながら、自分自身の小ささに呆れかえる。
こんな小さな少女に、俺は何を八つ当たりののようなことをしてんだよ。
「ガガッガ。ゴゲガ、ゲグガギンギグ(わかった。俺は、ネルを信じる)。」
俺はそう答えると、両膝を地に着け、聖者が祈りを捧げる様して、ネルに頭を垂れる。
「信じてくれて、ありがとう。」
ネルは、はにかみながら静かに優しくささやいた。
それからすぐに、ネルは俺に使役魔法を唱えはじめる。
そして俺は、『隷族』受け入れる覚悟のまま、ただ強くネルを信じろと、自分に言い聞かせて、ネルの魔力が感じられるかのような、優しい言葉の旋律が終わるのを待った。
私が高校生ぐらいの頃だっただろうか。父親が『ルーツ』と言う。アメリカのテレビドラマのビデオテープを、私に薦めてきた。
『マッドマックス』や、『ランボー』のように、派手なアクション映画ばかり、好んで見ていた父親が、薦めて来たのでてっきり、またド派手なアクション映画だと思って、そのビデオテープを見のだが。
物凄くシリアルな話の内容で、過去の時代に人が『奴隷』を、どのように集め扱い、そして解放されて行ったのか。
奴隷の主人公が何代も世代交代しながら、物語が続いていき、最終話の最後で主人公の末裔が出てきて、視聴者に向かい自己紹介とともに、『奴隷』と言う人達の存在を問いかける場面で終わる。
私は物凄いカルチャーショックをうけました。
【小説家になろう】での、奴隷が扱っている作品を、読んでいると、いつも『ルーツ』が頭に浮かぶのです。