言葉の壁を乗り越えろ
俺は、グガグガと発する自分の声に驚き、挙げていたてを、咄嗟に口元に持っていき、手のひらを通した感触があまりにも馴染みの無さに、それと同時に視界に入った自分の手の大きさと、ゴツい皮膚に頭が真っ白になり固まる。
「気を付けろッ!何か仕掛けて来るかも知れねぇッ!」
探るような目付きで此方を警戒しているロイが、仲間内に注意をうながす。
「先に倒した二体と、何か雰囲気が違う。特異種か、異常種かも。」
リズのその言葉に、ダンカンが俺の目の前に、リズ、ロイ、ゾーラが10時、8時、3時方向に、それぞれ俺を素早く取り囲む。
「ガゴムガガ、ガガギゴギギゲグェッ!(頼むから、話を聞いてくれぇッ!)」
俺は慌てて両膝を地に着き、また両手を挙げて無抵抗を示す。
「何だよコイツ、命乞いか?」
少し戸惑いを見せるロイ。
俺は破れかぶれで、自分の意思を伝えようと、身ぶり手振りでを介し表現することにしてみた。
俺は必死でジェスチャーを繰りす。
「所詮オーガは魔物、逃がしたり放ってはおけないわ」
それまで黙って睨み付けていたリズが、一瞬申し訳無さそうな表情を見せた後、剣呑な殺意を瞳に宿す。
それを見た俺は、手のひらと顔を天に挙げ。
「ゴーガイガッッ(オーマイガッッ)。」
神は我を見捨てたかと嘆いた。
「リズ、ちょっとまって。」
今までダンカンの背後に隠れていたネルが、ゆっくりと近付いて来る。
「ネル、危険よ戻りなさい。」
ネルは、リズの指示を視線で拒絶し、ゆっくりと俺に歩み寄りながら話かけてくる。
「アナタ、私達の会話を理解してるよおね?」
「ガガ、ガガグゴ(ああ、わかるよ)」
俺は、相づちをうつ。
「じゃあ……」
ネルは徐にしゃがみ込み、拾った木の枝を使い地面に文字を書き上げた。
しかし書かれた文字は、俺の知っているものでは無く、理解出来ずに落胆する。
「グガガギ、ガンゲガギゲガグガゴゲガギ(すまない、何て書いてあるのか読めない)。」
俺は、その場に胡座をかき、地面に指で『助けてくれ』と書いて、視線でネルに促す。
ネルは、驚いた表情をし、俺の書いた文字に思案する。
「タ…スケテ…ク…レ?『助けてくれ』かな。古代サンプレゼ語みたい。」
辿々しくも読みといたネルに向かい、俺はブンブンと頷く。
そこから、俺は必死で地面に指を走らせる。
「オレハ、ニ…ンゲ…ンダ」
「マモ…ノ……ジャナイ」
「ソレ…ニ、ココガ…ド…コ…ダカ…オシエテ…クレ」
……………
そして森の中、四人に武器を向けられたまま、地面に座り込んで筆談するボディビルダーとポンチョ少女のシュールな、時間は暫く続いたのであった。