序章
オレ「山田 涼平」は仕事でちょっとしたトラブルのせいでニートになってしまった。
自分で言うのもなんだが正義感溢れる人間だったと思う。
顔はまぁフツメンだけど決して悪くは無い……はずだ。
告白をされた事もある。
OKして嫌な顔をされた事に驚いたが……。
後で分かった事だが学生によくある罰ゲームの相手だった理由だ……だが1は1だ!
オレも大人だから自慢はこのくらいにしておく。
話がそれてしまったが当時20歳のオレはブラックな会社を辞め、この溢れんばかりの正義感から自宅警備員になった。
だって家族は心配だろ??
自宅警備員になったオレは今まで見なかったアニメや漫画、ゲームに度ハマりし、優秀な自宅警備員に出世してしまった。
親からは働けだの、近所のなになに君は良い会社に就職し、なになにちゃんは結婚しただのと説教ばかりだ。
その度オレは決まって「明日から頑張る」と言い、自室に籠る。
明日から頑張る……そう言って気付けば30歳になろうとしていた。
朝から親からのありがたいお話(説教)が終わり自室のベッドに飛び込む。
明日になれば30歳だ。
仕事を辞めてから10年あっという間だった。そろそろ頑張らないと取り返しが着かない。
オレはそろそろ本気を出すことを誓い、ゲームの電源を入れた。
いや、明日から頑張るよ?
オレの本当の明日は30歳からなのだよ。
いや~ほんと明日ってなかなか来ないよね☆
そしてオレは今日も1日自宅警備員の仕事を全うし、ぐっすり眠った……。
「いち……りょういち」
なんだ??頭の中に響くように女性の声が聞こえる……それも透き通るような綺麗な声だ。
「目を覚ましなさい。山田 亮一」
オレは目を擦りながら起き上がると、そこは布団の上ではなく真っ白な部屋の中だった。
正確には壁など無いので部屋なのかはわからないが床も景色も真っ白な空間だ。そこにこの世の者とは思えないほど美しい美女が優しく微笑み、オレが目を覚ました事を確認してから口を開く。
「やっと目覚めましたか、山田 亮一」
オレは頭に「?」を浮かべ首を傾げる。
「山田 亮一、貴方は正義感が強く、清く正しく生きてきました。」
オレは美女の言葉に首を傾げたまま思案し、話を聞くことにする。
「驚くのも無理はありません。私は「ウラヌス」この世界の神です。貴方はその生涯を全うし、死にました。貴方の人生は実に誠実で、素晴らしい者でした。なので次の生は裕福な家庭に産まれ何不自由無く暮らせる生を保証しましょう。」
女神様はそう告げると優しく微笑みオレへと手を差し伸べた。
いくつものライトノベルを読んできたオレは今の状況にピーンと来た。
これはよくある転生的なやつだと思う。だが、裕福な家で何不自由無く暮らすか……よくあるオレTUEEEE系では無いのが少し残念な気もするが、まぁ何不自由無く暮らせるならいいか!オレは暫く思案した後、笑顔で差し伸べられた手を掴んだ。
「ん??」
女神様からマヌケな声が漏れ、首を横へ傾げる。
「…………。」
女神様の笑顔が引き攣り、顔色が青くなっていき、額からも汗が流れている。
「貴方……誰??」
「山田 亮一です!」
オレは胸を張って嘘をついた。




