表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

  #10 邦明

 とりあえず、あの解創を試すことはできた……今はこれで十分だろう。邦明はまずまず、実験の結果に満足していた。

 三年前の上宮家殲滅事件――その時に見た裁定委員会十六課課長、鶴野温実の解創――『我が名をそのままに』。

 一部始終を目撃していた邦明は、あの解創を自分なりに作れないか考えた。祖父にあたる卓造が『我が名をそのままに』の使用を妨害できた以上、あれと似たようなものを自分が作り、使える可能性は高い。

 邦明はあの日観察して、『我が命をそのままに』は、不定形の流体による切断、射出、爆発といった変幻自在さを『従わせる』という願いで叶えるものだと判断した。

 その後の鶴野温実を調べることで、それが彼女の精神的な一面を象徴する、いわば『彼女専用の道具』である点から、邦明もその発想を真似つつ、かつ自分に当てはめて、そして『我が命をそのままに』並の汎用性を備えた道具を作成する事に努めた。

 結果として完成したのは、流体ではなく人型の『我が復讐の権化』だった。

 邦明の成す追求――復讐の追求は、自分から奪ったものから奪い返し、そして自分の糧とする――ということに終始する。

 それを具現化したのが、この解創だった……つまり他人の解創を奪い使う解創。三年前の上宮や、その時の裁定委員会から奪い取った解創を備え、状況に応じて解創を奪い、かつストックした解創を使用する。

 この道具のカギとなるのは、邦明ではなく『我が復讐の権化』という解創の道具が、ほかの解創を使用するという点だ。卓造の血を引く者が得意とする複雑な解創……捻くれた願いの成立は、邦明にも引き継がれていた。

 『我が復讐の権化』の道具の正体(なかみ)――それが、別の解創を使用しているのだ。

 ――問題としては……。

 上宮斉明に対して有効な手が見つからなかったことである。

 『探り手』は、『使い「手」』や『使い「手」作り』に比べると、手を加える優先順位が低く、他二つの課題の方が多いだろうから、『探り手』の課題修正は後回しになるだろうと踏んでいたが……まさか、携帯性をすでに解決しているとは思っていなかった。

 だが問題ばかりではない。上宮斉明の『探り手』の活躍を『我が復讐の権化』はしかと見届けた。

 ここから邦明は、さらに追求する。ある意味今回の戦闘は、上宮斉明が誰にも見せたくなかったはずの道具を、参考資本のように眺められたも同義だ。

 稀代の作り手である上宮斉明の製作物――これから邦明は『探り手』を元に新しく道具を作るだろう。

 ――そして……。

 邦明はポケットから銀色の物体を取り出す。いざという時は、この切り札もある。とはいえ、策は数々講じておくに越したことはない。

 しばらく時間を置きつつ準備を進めよう。予定は順調だとばかりに、邦明は、ほくそ笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ