第6話
よく寝た……
いや、寝ていたのか?
頭がボーっとする。体がだるい……
「目が覚めましたか?」
目の前に現れた手のひらが左右に揺れる。声のする方を見ると、可愛らしい顔をした女の子がこちらを覗き込んでいる。
「あ? ……はい」
「ちょっと待っていてくださいね」
女の子は後ろを向くと、テトテトと歩いて扉を開けて出て行った。
そのままボーっと扉を見ること数分、再び開いた扉から男性が二人入ってきた。
「大丈夫かい?」
年配の男性、顔は強面だが笑顔を作り話しかけてくれる。
「はい、大丈夫です」
僕は体を起こしながら答えた。少し首が痛い……
「何があったか覚えているかい?」
少し下を向き考える。
何があったか?
徐々に記憶が蘇る。僕は頭を撃たれて死んでしまったんじゃなかったか?
「郵便局で……頭を……」
顔を上げると、おじさんは強面の顔を鬼の形相に変えている。
「おい! こいつ覚えてるぞ! 山崎、みんなを連れて来い!!」
「はい!」
後ろに控えていた爽やかな雰囲気の男性、山崎は扉も閉めずに外へ駆け出していく。
「えっ?」
何かヤバそうな気がする……
「おまえ、ちょっと両手出せ!」
あまりの迫力に体が勝手に動いてしまう。
カチャッ! カチャッ!
「ちょっと! なんですかこれ!」
「はぁ? 見たら分かるだろ! 手錠だよ!」
何が起こっているのか分からない。
いや、うすうす分かってきたが分からないフリをしなければならない!!
「なんで手錠なんか――」
「おまえが犯罪者だからだろ!!」
ヤバい!!
バレてる!!
だが僕は諦めない!
「いや……よくわからないです……」
「おまえが頭撃たれて倒れてたのは、監視カメラで確認されてるんだよ!」
頭を掴まれ眉間に指をぐりぐりされる。
「痛い痛い! やめて!」
バタバタバタ!
先ほど出て行った山崎に続いて、ぞろぞろと人が入ってくる。
その内の一人が話しかける。
「南さん、覚えてるって本当ですか!?」
「おう、こいつ覚えてるぞ!」
「いや……知らないです……」
「誰か鏡持ってないか?」
僕の言葉を無視するおじさん(南)に、最初に部屋にいた女の子が手鏡を渡す。
「おら、見ろ」
覗き込む僕の眉間には、黒くなった痣があった……