第66話
何処に向かっているのだろう? 大きい建物を回り込み、外を進んでいく。そして隊長は一つの建物の前で一旦止まり、何かを探すようにぐるりとその建物を一周した。同じく目的地の分かっていない仲間達も、列になってぐるりと建物を一周した。
一周して分かったがこの建物は他の建物より窓が多く、中はいくつかの部屋で区切られている。ここが事務所だろうか。
「オイ、オ前達! 階段ヲ上ガッタ所ニダンボールガアル筈ダカラ、ソレヲ此処マデ持ッテコイ」
「イーッ!」
「イイーッ!」
命令された仲間達は、建物に外付けされた階段をゾロゾロと上がっていく。二階に上がり建物の中へ。
僕もその中に混じって進んでいく。
ダンボールは直ぐに見つかり、通路の奥に積みあがっていた。だが建物の通路はそれ程広くはなく、そのダンボールの山の側で仲間達がごった返している。
「イーッ!」
「イイーッ!」
口々に仲間達が叫んでいる。
僕はその様子を最後尾から眺めていたのだが、前の仲間が押されるように下がってきて僕にぶつかり僕も後ろへ下がる。前の仲間はそれでも止まらず下がってきて、僕はどんどん後ろへと押し戻されていく。
どうしたのかと少し横にずれ前の様子を探ると、前からバケツリレーの要領でダンボールが送られてきているところだった。
僕の少し前の方にいる仲間も理解したらしく、列を間延びさせようと振り向いて後ろに下がってくる。
最後尾に居た僕はその流れで結局、階段の下まで戻されてしまった。
コミュニケーションがほとんど取れない状況の中、二階に上がってから大した時間も経っていないのにバケツリレーでダンボールを降ろそうと、よく皆が理解できたなぁと感心してしまう。
そんな事を思っていたら、上の方からイーッイーッという声がこちらに近づいてくる。そしてその声と共にダンボールもやってきた。
僕に手渡されたダンボールはずっしりと重く、底が抜けるんじゃないかと心配になるような重さがあった。僕が最後尾なのでこのダンボールはどうしようかと迷っていると、直ぐ近くまで来ていた隊長に声を掛けられる。
「ソコニ積ンデイケ」
隊長が地面を指差す。僕は指示に従い、前から次々と送られてくるダンボールを側の地面に積み上げていく。そんな僕を隊長は腕を組みながら監督していた。
できるだけ目立たないように行動しようとしていた筈なのに、なんで隊長の側で作業する事になってしまったのか。命が危うい状況なのに……
隊長の事が気になりチラチラと様子を窺っていると、前の仲間から渡されたダンボールを掴み損ねる。危うく落としかけたが、何とかスーツの筋力のおかげで重いダンボールを持ち直すことができた。
「オイ! 気ヲ付ケロ!」
その様子は当然見られてしまい、怒られてしまう……
数分後、全部のダンボールを運び終えたようで、二階に居た仲間達が最後のダンボールを持って戻ってくる。最後の一つを山に積み、自然と隊長の前に整列するような形で仲間達が並んだ。
列の一番前、中心には僕が居る。
さっきまで隊長の一番側に居たので、集まった仲間達がそのまま僕の左右と後ろに並んでいってしまった。慌てて後ろに並ぶのも不自然なので、ここは中心で堂々としていよう。
「ヨシッ、運ビ終エタナ! オ前等、コノ中ニハ爆弾ガ入ッテイル」
「イーッ!」
「イイーッ!」
仲間達は爆弾という言葉を聞き、口々に何か感想でも言っているのだろう。騒がしくしているが、そんな中で僕だけが言葉を失ってしまった。冷や汗が流れる。
さっき取り落としそうになったが、そりゃ隊長が怒るはずだ。危うく爆死するところだった……
「オ前等、静カニシロ! 今カラコノ中ニアル爆弾ヲ持ッテ行ッテ、工場施設ニ仕掛ケテコイ!」
こりゃダメだ。こちらに潜入して最低手掛かり見つける筈だったが、全部爆破するつもりらしい。手掛かりなどは放っておいて僕も仕掛けに行く振りをしながら赤井達と合流し、さっさと逃げないと巻き込まれかねない。
隊長が近づいて来て僕の目の前に立った。
「オ前トオ前、ソレトオ前」
隊長のごつい腕が、僕の頭とと左右の仲間の頭にポンポンと乗せられていく。
「オ前等ハダンボールヲ一人2ツズツ持ッテ付イテ来イ」
指名されてしまった……
どうするか考えている余裕も無くこちらを待たずにずんずん進んでいく隊長を追う為、急いでダンボールを二つ持ち上げて後に続く。振り返って残された仲間達を見てみると、飴に群がる蟻の様に爆弾の山に群がっている。そして爆弾を手に取った仲間から順次、工場に仕掛ける為に走り去っていく。
隊長は目的の建物があるのか、僕等3人を引き連れて一つの建物の中に入って行った。
ベルトコンベアーなどがありここも普通の工場に見えるのだが、ここに何かあるのだろうか?




