第4話
「ガハハハハ! サア、ソロソロ行コウカ!」
煙が晴れていき視界を取り戻していく中、隊長の声に周りの仲間が反応する。
「イーッ」
「イイーッ」
「よしっ! いくぞー!」
僕も仲間たちに声を掛け、一斉に郵便局の中へ流れ込む。
「なに? なに?」
「なんだよ、お前ら……」
駆け込んで行くと、突然のことに固まって動けなくなっている客が目に入る。
「カンケーない奴は早く出て行け!」
叫びながら近くにいたサラリーマンの襟首を掴み、後ろへ投げ飛ばす。
ソファーには娘を抱きしめる母子が座っている。
「早く行けって言ってるだろ!」
母親の腕を掴み無理やり立たせる。そのまま入り口の方へ引き倒した。
「ママー!」
「お前も早く行けよ!」
服を掴んで体を持ち上げ、母親の方へ投げ飛ばしてやる。
「うわーーん!」
泣き叫ぶ娘を抱きしめながら、母親は体を引きずりながら自動ドアの方へ向かっていった。
一方仲間たちは、窓口へ向かう者・ATMへ向かう者・そして左側には階段があり、半数は2階へ向かって駆け上がっていく。
「イーッ!」
「イイーッ!」
そこらじゅうで叫び声を上げながら局内に散っていった。
僕はとりあえずATMへ向かう。
ATMは10台ほど並んでおりそれぞれの前で仲間たちが暴れている。
僕も空いてる1台に向かい、なんとか破壊できないかとパンチ・キックをお見舞いする。
「かってー!! さすがに無理か」
苦笑いをしながらホールの方へ引き返す。
「なんだよこいつ」
「でかい……」
ホールの真ん中、隊長の前には駆けつけた警備員4人が向かい合っている。
皆、腰にある警棒を引き抜き握り締めているが、殴りかかる勇気はないらしい。
隊長も僕らと同じく色は黒だが全身を黒い毛で覆われていて、肩パットの付いた鎧を着ている。
見た目はほぼゴリラだが、筋骨隆々の3mほどもある隊長を前に警備員たちは立ち竦んでしまっている。
「ドウシター? ソノ棒デ殴ルノカー?」
隊長が一歩踏み出すと警備員たちが僅かに後ずさる。
ブンッ!
振り出した右拳が一人の警備員の腹に突き刺さる。振り抜いた右腕の、その見た目通りの腕力で殴り飛ばされた警備員は左の壁に激突し失神してしまった。
「ヒッ!」
あまりの衝撃に目を剥く警備員達へさらに襲い掛かる。
ブンッ! ブンッ!
右へ左へ一発ずつで吹き飛ばしていき、最後の一人の方へ足を踏み出す。
「あ……あ……」
最後に立っていた警備員がこちらに吹き飛んでくるのを軽いステップでかわし、隊長の側に駆け寄る。
「ゴリさん、あっちのATMお願いします!」
「ナンダァ? ナニカアッタカァ?」
ATMの方を指差すと隊長は笑いながら、のっしのっしと歩いていく。
「ガハハハ。コンナノモ開ケレンノカー?」
仲間を後ろに下がらせ、ATMの下部をまるで冷蔵庫を開けるみたいに簡単にパカパカと開けていく。
「すげーな……」
あっちは大丈夫そうだ。
僕は次に、正面にある窓口を飛び越え郵便局の奥へ向かった。