第46話
夜中、突然部屋のドアが開け放たれる。
ビックリして飛び起きようと力を入れるが体に激痛が走る。その痛みにさらにビックリする。
「いてー……」
何とか起き上がって見てみると白衣を着た男性が扉が閉じないように押さえていた。
遠くからガラガラという音がこちらに近づいてくる。ボーっとする頭で考えるが何も分からないのでとりあえず様子を見る。
ガラガラが部屋の前まで近づき、部屋の中に何かが運び込まれた。
目を凝らして確認しようとするが、丁度そのタイミングで部屋の電気が付けられた。
「まぶしっ!」
ここに来てから少し疑心暗鬼になっている僕は少し慌てる。
「ちょっと! 何なんですか!?」
「前田君うるさいよ! 夜なんだから静かに!」
怒られてしまった……
目が少しずつ慣れてきたので運び込まれた物を確認する。なにやら色々運び込まれている。一番大きいものはベッドだろうか。人が寝かされたベッドが運び込まれている。人工呼吸器を付けているので顔が見えないが、それに付随する機器や点滴などを次々と部屋に設置していく。白衣を着た研究員が5人程で作業し、それを見守るように村井が僕のベッドの隣に立っていた。突然の事なので村井に尋ねる。
「こんな時間にどうしたんですか?」
「赤井さん達が病院から帰って来たからね」
よく見ると確かに寝てる人は体が大きい。このサイズは赤井さんだろう。
外からまたガラガラという音が近づいてくる。
「入って大丈夫ですか?」
新たに研究員が部屋の中を覗く。
「ちょっと待って……はい、入れてください」
さらにゾロゾロと研究員達が入ってくる。それぞれに機器を持ち込み、さっきまでスカスカだった部屋の中が賑わいを見せてくる。
新たにベッドが入ってくる。それにも同じように人工呼吸器を付けた男性が寝かされていた。
赤井は僕の斜め前、今来た男性は僕の隣にベッドが配置されたので、この人の顔はよく見える。
青野さんだ。目は開いているので起きているのだろうが、少し苦しそうに顔を歪め呼吸も少し荒い。
こんな状態になっているなんて思っていなかった。やはり爆発した時に近くに居たのが不味かったのだろうか。
「青野君の方がちょっと酷くてね。肋骨にヒビが入ってるんだ」
どうリアクションしたらいいのか分からない。骨折なので良いとは言えないが、自分は5本だから酷いのかよく分からない。
「あと二人とも極度の栄養失調になっててね。体力が回復するまで点滴を続けないとダメだろうね」
「栄養失調ですか?」
「うん。あの状態になる為に体の組織を一回作り直さないといけないから、相当体力使うんだよ。姿が戻った後はこんな感じになっちゃうから、二人ともかなり辛いとは思うんだけど」
「そうなんですか」
今の二人の姿を見ると、確かに相当辛そうだ。
研究員達が機器の設置を終え、最終チェックも終わらせる。
「じゃあそろそろ行こうか」
「はい」
返事をした研究員達は部屋をゾロゾロと出て行く。
「じゃあ前田君、ボクも行くから。後は頼んだよ」
「えっ!? 頼んだよって何ですか!?」
「前田君、安静にしておかないとダメだけど体は動くでしょ。だから赤井さん達の世話をお願いしようと思って。ここの建物には人が少ないのは言った事あるよね?」
「いや、そうですけど僕肋骨が5本も折れてるんですよ!」
「でもさっき、その程度で済んで良かったって言ってたじゃない? それにちゃんと給料も払うし」
村井がニヤニヤしている。
「いやいや、言いましたけど……」
二人は人工呼吸器まで付けて、相当体を張っているのが分かる。青野の方を見ると、青野もこちらを見ていた。これはさすがに断りづらい……
「……はい。分かりました」
「ありがとう。じゃあボクは行くからね。点滴無くなったら医務室に知らせに行ってね」
村井は欠伸をしながら出て行ってしまう。
青野の方を見るとまだこちらを見ていた。
僕は介護とかやった事無いが大丈夫なのだろうか……