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戦闘員A  作者: 甲斐祐樹
戦いの後
46/73

第45話

 車が緩やかに停車する気配がする。

 運転席から人が降り、外から後部座席の扉が開かれる。

「主任、第二会議室に集まってます」

「分かった。すぐ行く」

 外の男に返事をし、こちらに振り向く。

「ちょっとそこで待っててね。車椅子持ってくるように言っておくから」

「ありがとうございます」

 村井は車から降り小走りで建物の中に入っていった。


 動く元気がなかったので車椅子は正直助かる。

 少し優しくされただけで村井の事を良い人のように思ってしまう自分が居る。体が弱っているからだろうか?


 しばらく待っていると研究員の一人が車椅子を持ってやってくる。

 僕はそれに座り、医務室まで押していってもらった。


「今日は何処?」

 何度も来ているので小林先生とは顔馴染みになってしまった……

「呼吸するたびに背中とお腹が痛いです」

「そう。今日はどんな風に怪我したの?」

「殴られて壁に激突したのと、爆発に巻き込まれました」

「……前田君、頑張ってるね」

 小林先生は引いている。

「じゃあ上脱いで」

 服を脱いだ僕を小林先生は触診していく。

「ここは?」

「痛いです」

 小林先生は頷く。

「後ろ向いて」

 背中を見せた僕を触診する

「そこ痛いです!」

「こっちは?」

「そこも痛いです!」

 触るところがほとんど痛い……

「あんまり良くはないかなぁ。とりあえずレントゲン撮りに行こうか」


 胴回りを中心に、念のためと全身を撮る。


 撮り終わった後、暫く部屋で待っていると二枚のレントゲン写真を持って小林先生が帰ってくる。

「お待たせ」

 レントゲンを台にザクッ、ザクッと差し込み後ろから光を当てる。顔を近づけじっくり眺め、うーんと言いながら時々頷いている。

「どうでしょうか?」

 机の上にあった指し棒をシャッと伸ばしレントゲンを指す。

「こことここなんだけど、ヒビが入ってるね」

「ヒビですか……」

 差された所をよく見ると、確かに骨に線が入っている。道理で痛いはずだ。


「あと、こことこことここが完全に折れてるね」

「えっ!? 折れてるですか!?」

 差し棒が色々な所を差していくので、何処が折れているのか見逃してしまう。

「何処ですか?」

 見ても仕方がないが、気になるので確認する。

「ここと、ここと、ここだね」

 差された所を見ると綺麗に折れていた。背中側の肋骨が2ヶ所骨折・1ヶ所ヒビ、右のわき腹が1ヶ所骨折・1ヶ所ヒビと合計5ヶ所も骨折していた。道理で痛いはずだ。


「じゃあ両手上げて」

 小林先生に言われた通りにバンザイする。横に置いてあったバストバンドを巻いて胸部を固定する。

 巻き終わると棚から鎮痛剤を取り出し渡してくれる。

「これは食後に飲んでね。痛みが我慢できそうなら飲まなくても大丈夫だから」

「はい、分かりました」

 

 僕と小林先生は数秒見詰め合う。


「えっ? これで終わりですか?」

「そうだよ。できるだけ安静にしとくようにね」

「手術とかは?」

「内臓に傷はついてなさそうだから手術は必要ないよ。肋骨は固定できないからそれを巻いて様子を見て、もし痛みが酷くなるようならまた検査するから」

「そうですか。ありがとうございました」

 お礼を言って医務室を後にする。胸に巻いたバストバンドの効果か少しだけ痛みがマシになった気がする。


 鎮痛剤を飲む為に何か口に入れよう。そう思い食堂に向かった。

 晩御飯には少し早いので食堂には人が居ない。キッチンを覗き込む。

「こんばんはー」

 仕込みをしていた長沢が振り返る。

「あっ、お帰り。大丈夫だった?」

「大丈夫ではなかったんですけど、なんとか命は無事でした」

 えへへと笑顔を見せ無事をアピールするが、わき腹が痛い。

「骨折しちゃって食べるのしんどいんで、またジュース作ってもらっていいですか?」

「そうなんだ。すぐ作るから待ってなさい」

 出来上がったジュースで鎮痛剤も一緒に飲んでしまい、簡素な食事を終え部屋に戻る。

 部屋といっても、結構な怪我をしているので割り当てられた自室ではなく病室の方へ戻った。


 テレビを見て暫く過ごす。

 赤井さんは大丈夫だったのだろうか? 誰も部屋を訪ねてこないので、どのような状況になっているのか分からない。


 9時を回りそろそろ寝ようかと思い始めた頃、村井が部屋を訪ねてきた。

「検査の結果はどうだった?」

「肋骨の骨折でした」

「その程度で済んだんだ。良かったね!」

「まぁ折れてた本数は5本ですけどね。その程度で済んで良かったですよ」

「……そうなんだ」

 嫌味を言ってやった。少しスッキリする。

「それで、赤井さん達はどうなってるんですか?」

「大丈夫みたい。命に関わるような事はなくて、もうすぐ帰ってくるって。それでこの建物って病室が少ないから前田君には部屋を移動してもらおうと思って今来たんだ」

「そうなんですか。分かりました」

 ベッドから降り少しの私物を持つ。

「いける? じゃあ付いて来て」

 先を行く村井の後を付いて行くと3つ隣の部屋に入っていった。続いて入ると部屋は先程よりも二回り程も大きく、その部屋の中にベッドが一つだけポツンと置いてあった。

「ここですか?」

「うん。じゃあ前田君、今日からはここでお願いね」

 それだけ言うと村井は部屋を出て行った。


 無駄に広い部屋に落ち着かないが、僕はとりあえずベッドに潜り込んだ。




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