表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘員A  作者: 甲斐祐樹
戦いの後
42/73

第41話

「どう? 何か変化ある?」

 斜め向かいに建つビルで、その男は監視を続けていた。携帯で相手に状況を伝える。

「いえ、入っていった後は特に」

 時計を確認する。

 最初にやつらが入ってから20分ほど経過した。長くてもあと10分以内には今回の作戦の結果が出る事になる。

 こんな所で見ているだけの自分には、同僚の無事と作戦の成功を祈る事ぐらいしかできない。

 少し歯がゆい気持ちを感じるが、今与えられている自分の仕事をこなすため視線をその建物へ戻した。


 ちょうどその時、建物から光が洩れる。昼間の時間に光が分かるほどの強い光が建物から洩れている。

 それに気付き、何だと思ったのも束の間。


 ドッカーーン!!

 バリバリバリバリ!!


 物凄い爆発音と目の前のガラスが砕けそうなほど震えるのに驚いて、後ろにひっくり返る。

「た、大変です!!」

「どうしたの!?」

 急いで立ち上がって窓に張り付き様子を確認する。建物の窓は全て割れ、中から煙がモクモクと湧き出ている。周りに待機していた警官達は倒れている者・尻餅をついている者と、皆地面に倒れたまま突然の事に動けずにいる。

「建物から煙が! 爆発があった模様です!」




 何も見えない、聞こえない。何も分からない。

 手足が痺れる……。


「ゴホッゴホッ!!」

 

 咳をした事で自分が呼吸をしていなかった事に気付く。全く体に足りていない酸素を貪る。そこでようやく思考が回復してきた。

 思考は回復はしてきたが現在の状況が全く把握できない。見えない・聞こえないのは変わりなく、それを理解した事で逆にパニックになる。

 背中の壁の感触を頼りに自分の位置を確認しようと横に動こうとするが、全然移動できない。

 必死に移動しようと手足をジタバタさせる。


 あれっ? 足が空を切っている?

 これ壁じゃなくて地面か!

 

 重力の向きを確認しガバッと体を起こす。過去に気を失った経験があったのが良かったのか、自分の状況を把握できた事で少し落ち着きを取り戻してきた。

 何も見えない白色だと思っていたが、目を凝らすと空気の動きを確認できる。


 徐々に思い出してきた。

 隊長が叫んだ後、発光しだす体。何も見えないくらい光が強まった後、急に後ろに吹き飛ばされて体を強打し呼吸が止まって失神しかけていたんだ。


 目の前のこれは煙か!

 隊長は爆発したのか……


 聴力も回復してきた。まだキーンとしていてあまり聞こえないが外が騒がしい。

 左右を見回すと、何も見えないながらも煙った視界の中に明暗を確認できる。四つんばいで地面の感触を確認しながら、僕は夜中の虫のように明るい方へ進んでいく。

 近づいていくと、そこから外へ空気が流れていくのが見える。窓が割れている。


 ガッ!


 外を確認しようと窓枠に手をかけた時にナイフが窓枠にぶつかり、自分がそれをずっと握り締めていた事にようやく気付いた。少し苦笑いを浮かべナイフを納める。ついでに自分の体を確認するとまだ黒いスーツを纏っている。

 

 窓から慎重に顔を出し外を覗くと正面に塀があり、左手に表の通り、右手が建物の裏になるようだ。ここからは表の通りの様子は詳しく確認できない。


 どうするか? 四肢に軽く力を入れ不具合が無いかを確かめる。


 よし、行くか!


 もう一度顔を出して人の目が無いのを確認した後、僕は窓から身を躍らせた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ