第3話
市内C地区最寄り駅。地下鉄を降り、郵便局を目指す。
10分程歩くとその建物は見えてきた。比較的大き目の郵便局だ。前の通りを歩きながら様子を伺う。
両開きの自動ドアが正面入り口、そこからホールがあり奥に窓口が並んでいる。
正面入り口から右側、そちらにはATMが並び奥からも入れるように自動ドアが設置されている。
怪しまれるのが嫌だったので歩きながらそれだけ確認し、中には入らず通り過ぎる。
時刻午後2時。あと1時間。
僕は時間を潰す為、本屋へ向かった。
「結構集まったな」
再び郵便局前に戻って来たときには、多くの人がその時が来るのを待っていた。
左手が疼く。
僕もその中の一人となり、時が来るのを待つことにする。
局内では、外の異変に気付きだしていた。
「高橋さん。前、人集まってきてない?」
「今日何かやってたっけ?」
「やってないと思う……。局長に言ったほうが良くない?」
「うん。ちょっと行ってくる」
「お願い」
「そろそろか……」
ブシュー!!
突如、一団の足元から白い煙が吹き出した。煙は瞬く間に人々を飲み込み、郵便局の前の通りは煙に包まれる。
「なんだこれ! どうした!」
「キャー!」
異変に気付き遠巻きに様子を眺める人が数を増やしていく中、煙の中からは一人、二人とパニックになりながら逃げ出してくる人がいる。
一方、中心にいる一団には動揺もなく、その場に止まり続けていた。
いや、正確にはさらにその中心、1人の男を囲むような立ち位置に変わっている。
「ははは……」
中心の男は笑っていた。笑いながら、男は影を大きくしていく。
2m……2m50cm……。
3m程に達した時、男の笑い声は低く響く獣の声となっていた。
「ガハハハハ! サア、ソロソロ行コウカ!」
「イーッ!」
「イイーッ!」