第30話
『ザザザ……、指令、指令……』
「あれ?」
僕が疑問の声を上げると、桃子がそれに反応する。
「始まりましたか!?」
「えっ? うん」
『レベル2・スケールA・市内D……』
「教えてください!!」
桃子が声を張り上げる!
「なんで聞こえる事を――」
『11、住之江信用金庫』
疑問に思ったが通信が続いていたので、そちらに集中する。
「11の住之江信用金庫」
「はい!」
桃子は返事をしてメモを取る。
『…………』
「…………」
終わってしまった。
「あとは?」
「それで終わりみたい」
「えっ? これだけですか?」
「場所はそこの一箇所だけみたいなんだけど……」
何て言ってたかな?
「2のAだったかな……」
「2のAですか。他には?」
メモを取りながらまた尋ねてくる。
ずいぶん急かしてくるな……
カチャ!
ドアノブが回り、村井が入ってくる。
「来たって?」
「はい! 今、前田さんに来た情報を教えてもらっています!」
桃子の書いたメモを村井は覗き込む。
「11の住之江信用金庫、2のA。これで分かるの?」
「えっ? まぁ、大体は……」
ダメだ……
市内の何て言っていたか忘れてしまった。でも住之江って言っていたから場所を特定する事は出来るだろう。
そんな事より何で声が聞こえるようになっているのだろうか。
首の後ろが疼く……
「ところで、何で声が聞こえるようになってるんですか?」
桃子も聞こえるようになっている事を知っているようだった。
だから僕の事を見張って、場所を聞き出そうとしていたのだろう。
昨日は検査とか言っていたが、おそらく首の後ろのマイクロチップを修理して聞こえるようにしたんじゃないだろうか。
「ゴメンね。昨日、前田君が怒ってたから言いそびれちゃったんだけど」
やっぱりだ……
「マイクロチップは弄ったら爆発するって言ってたじゃないですか! 何やってるんですか!」
「ちょっと待って! 違う違う、マイクロチップは弄ってないよ!」
んっ? じゃあ何で聞こえるようになったんだろう?
「レシーバーの機能が壊れてるみたいだったからね」
「前に言ってましたね」
「うん。だからね、新しくレシーバーを作ってみたんだ。無事に聞こえるようになってて良かった!」
「新しく?」
「うん。首の後ろに追加した」
「追加……そうですか……」
また勝手に埋め込まれてしまった。
悲しくなってきた……
「わざわざ僕に埋め込まなくても、傍受とか出来なかったんですか?」
「何回か試したんだけど、毎回周波数変えてるし通信の時間が一瞬だからね。不定期に来る通信を待ち続けるのも難しいから、それなら前田君にお願いするのが手っ取り早いかなって」
村井は成功して良かったと満足気だ。
「もう勝手にしないでください。次やったら絶対に協力しませんから」
「ゴメンね」
こいつの事は信用できない。
ヘラヘラしやがって……
「あの、前田さん。さっき来た通信なんですけど、この地図を使って見るんですか?」
話しかけるタイミングを計っていた桃子が、地図を広げながら聞いてくる。
それは僕がアパートの自室で使っていた地図だった。
通信が始まる直前に帰ってきた時、持っていたのはこの地図だったようだ。
「そうだけど、何でその事知ってるの?」
桃子は村井の方を向く。
「前にキミの部屋へ荷物を纏めに行った時に、メモと一緒に置いてあったからね。犯行現場とメモの内容が重なってたから、そうなんだろうなって」
「そうですか」
ああ、あのアパートが懐かしい……
「それで、今回の場所なんですけど」




