表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘員A  作者: 甲斐祐樹
正義と悪の戦い
29/73

第28話

 目を覚ます。

 よく寝た。

 頭がおかしくなるくらいに……


 いつもより遥かに遅く覚醒していく。

 目を開いてからしばらくして、ようやく動けるくらいに意識が回復してきた。


「あれ?」

 最初に気付いた違和感がそれだった。

 しばらく見つめていた天井。よく見慣れたおなじみの天井だ。


 辺りを見回そうとするが首が動かしにくい。

 仕方なく起き上がる。

「んっ?」

 腕にチューブが。その先に点滴が繋がる。

 

 動かしにくく、少し違和感がある首に手を持っていく。

 硬い……

 何か硬い物が巻かれている。


 改めて辺りを見回す。

 やはりそうだ。

 おかしな目覚め方をしたときは、いつもここに居る気がする。

 部屋には誰も居ない。とりあえずテレビでも見て、誰かが来るのを待つ事にしよう。

 部屋には時計が無かったが、テレビの番組によって大体の時間が分かった。今は昼12時台のようだ。

 昨日ご飯を食べて20時には部屋で眠ったはずなので、16時間も眠っていた事になる。


 明らかに普通ではない……


 首に巻かれたものを触る。先程から首の後ろに痛みがある。

 気になってテレビの内容もほとんど理解できないまま、ぼんやりと見続けた。


 カチャ!


 ドアノブが回され扉が開く。

「あっ、前田さん起きてたんですか」

「うん、村井さん呼んで来てもらっていい?」

 扉を開け入ってきた桃子と余計な会話はせずに、それだけお願いする。

「はい。ちょっと待っていてください」

 桃子はドアノブを一度も離すことなく、再び扉を閉め出て行った。


 何の説明もせずに、このような状態になっている事に僕は怒っていた。

 そもそもこんな所に来たのだって自分の意思じゃなかった……


 カチャ!


「おはよう。体調はどうだい?」

 軽い感じに話しかけてくる村井に怒りが込み上げる。

「何をしたのか説明してください!」

 荒げた声によって村井は真面目な顔になり、言葉を選ぶように話し始める。

「キミの首の後ろにあるマイクロチップが故障しているかもっていうのは言った事あったよね? 昨日はどうしてもそれを確認しておきたかったんだ」

「それなら勝手にせずに言ってくれてもいいじゃないですか」

「その首に埋め込まれているマイクロチップの位置っていうのは、神経が通っている繊細な位置にあって絶対安全とは言い切れない場所にあるんだよ。もちろん万全の準備をして検査はするけど、事前に説明して前田君の返事を待っている時間が無かったんだ」

 チラリとテレビの方を見る。

「ちょっとこのテレビ見てみて」


 付けっぱなしにしていたテレビでは、例の集団の事件について取り上げた番組がやっている。

 最近では一日に何回かは、この手の番組がやっている。

 それはそうだろう。4ヶ月程前から起き始めた事件が解決されないまま、今でも何日かに一回起き続けているのだ。

 大阪だけで起きている事件なので、全国的にはどこか他人事のような報道のされ方だが、関西ではものすごい事になっている。

 大阪府警へのバッシングも抑えきれなくなっており、府警前ではデモなども起きている。


「府警ではこの一週間以内に対策を講じようという事になってる。だからどうしても前田君の検査を早めに済ませておきたかったんだ。説明しなかったのは申し訳なく思ってる」

「そうなんですか」

 村井は真摯な態度で謝ってくれている。

「それと出来れば前田君にも、その対策というのに参加してもらいたいと思ってる。キミなら相手側に混じっても気付かれないし、相手側からこちらのフォローをしてもらえれば、こちらの怪我人とかも減らせると思うんだ」


 正直危ない事は勘弁してほしい。

 でも自分の安全の為に、何もしないというのは違うんじゃないだろうか。

 せっかく人の為に、何か出来る力があるのに……

 村井に対して怒りはあるが、今は我慢しよう。


「わかりました。協力させてください」

「ありがとう」

 村井は嬉しそうな顔をする。

 村井と一緒に来ていた桃子も、後ろで嬉しそうな顔をしている。

「じゃあ詳細が決まったら、もう一度説明に来るから。首の後ろに少し傷があるから、それまで安静にしておいてね。室谷さん、前田君の事頼むね」

「はい! 分かりました!」

 村井は機嫌良さそうに出て行った。


「前田さん、ありがとうございます!」

 桃子はそう言って頭を下げる。

「いやいや、協力できる事があるのに断るのもね。それにこんな体にされた恨みもあるし」

 僕はハハハッと笑って照れを誤魔化した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ