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戦闘員A  作者: 甲斐祐樹
正義の仕事
26/73

第25話

「どうだった?」

「ええ、大体の感触は。避けられる事を想定していれば、二撃以内には仕留めていけるでしょうね」

「そっか、十分だね。ご苦労様」

「いえ、失礼します」


 青野は村井と少し話した後、体育館を後にする。

 僕はボーっとその様子を見ていたので、出口に向かうときにチラリとこちらを見た青野と目が合った。




 煙に包まれる。


「前田君、今日は調子良さそうだったね」

 姿が戻っている間に近くまで来ていた村井に声を掛けられる。

「いやぁ、怪我したくないんで頑張りました」

 少し照れて頭を掻きながら応える。

「その調子で次も頑張ってね!」




 5日後。

「今日も怪我したくないんで頑張りますよ!」

「おっ! やる気十分だね!」

 やる気を出している僕を見て、村井は少し嬉しそうな表情をする。

 僕もニコニコする。

 というのも僕はこの時、今日は安全なんじゃないかと思い始めていたのである。




 朝、目が覚める。時計を確認する。

 一つため息……

 僕が大怪我するかもしれない時間まで、あと10時間を切っている。

 突然右腕に走る痛み。その20時間後にある大怪我の可能性。最近ものすごく恐怖を感じる。実験と言っているからには危険な事をやらせるつもりなのだろう。

 前回は何とか無事に乗り切ったが、一歩間違えば怪我をしていた。木刀で全力で殴られれば無事ではなかっただろう。


 30分ほどで2万円貰えるというのは、おいしいとは思うのだが。

 風俗嬢も同じような気持ちを味わっているのだろうか……


 朝の仕事をこなし昼食。昼食後少し時間があるが働く気にならず、自室に戻る。

 体育館に行く時間の30分前、自室でストレッチを始める。

 ストレッチをする事によって、もしかしたら怪我が軽減するかもしれないからだ。

 しないかもしれないが……


 とぼとぼと歩き体育館へ向かう。

 体育館を訪れた僕は中に入り様子を窺った。

 今日も前回と同じくリングは無し。恒例となったメンバー達がいる。

 そして今回も道着を着た人物が体育館の奥で正座している。

 僕が体育館に訪れた事に気が付いたその人物と目が合い、お互いに会釈する。


 なんとなくそんな事もあるかなとは思っていた。

 毎回トレーニングルームに行くとマシンを使ってトレーニングをしていたし、赤井と同じチームとも言っていた。

 前回、前々回と赤井、青野ときていたので、もしかしたらと思っていたのである。

 だが実際に道着を着た桃子が座っているのを見ると少し驚いた。


 様子を窺うと脇には長めの棒が見える。

 この時点で、大体今日のやる事と自分の無事を理解出来たのである。

 心の中でガッツポーズをして、喜びを顔に出さないようにしながら僕は村井に近づいた。




「今日も怪我したくないんで頑張りますよ!」

 嬉しさのあまり感情を込めて話してしまった……

「おっ! やる気十分だね!」

「今日は桃子ちゃんとですか?」

 後ろに近づいてきていた桃子の方を見て、再び会釈をする。

「こんにちは。前田さん、今日はお願いしますね!」

 先程見た棒はどうやら薙刀のようだ。背の低い桃子が持つと余計に長く見える。

「今日は室谷さんとやってもらうからね。前回と同じような感じで頼むね」

 研究員が前回僕が使った緩衝材付きの棒を持ってくる。

「分かりました」

 二人に背を向け、受け取った棒をブンブンと素振りをしながら体育館の隅のほうへ歩いていく。


 軽く体をほぐすフリをしながら、体育館の隅で桃子の様子を横目で窺う。

 桃子は再び体育館の奥の方へ歩いていき、先程居た場所で正座をした。

 こちらを見ていない事を確認してから、コソコソと服を脱ぎパンツ一丁になる。


 すこし恥ずかしい……


 その姿のまま胡坐をかき、時間が来るのを待ち続けた。




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