第14話
今思えば確かに違和感はあった気がする。
会話も通じてなかった気がするし、周りはしゃべれてないのに自分だけ話せているのもおかしかった。
なぜ気付かなかったんだろう。
さっきまであんなに楽しかったのに……。
サラサラッ。
『何言ってたか分からなかったですか?』
「うん。ずっとイーイー言ってるからね」
「そうですか(イー)」
『何でこんなことになってるんでしょう?』
「うーん……たぶん話す内容を聞かれないようにするためだと思うけど。余計な事話すなって事じゃない?」
「そうですか(イー)」
なんか落ち込んできた……
「時間ないし早く続きやろうか。その状態、30分くらいしかなっていられないだろうから」
「イーッ」
再びマシンに座りウエイトを持ち上げる。
ガシャン、ガシャン。
「まだいける?」
サラサラッ。
『まだいけます』
ガシャン、ガシャン。
「どう?」
先ほど見せた紙を見せる。
『まだいけます』
「イイーッ!!」
ガシャン! ガシャン!
サラサラッ。
『限界です』
これ以降の検査を先ほどの2枚の紙『まだいけます』・『限界です』を使って次々とこなしていき、最後の検査も終了する。
「すごいねっ! 成人男性の平均値より3~5倍の数値になってるよ!」
『そうなんですか。すごいですね』
「これで集団で強盗に入られたら、逮捕するのは苦労するなー」
村井は計測したデータを見ながらうんうんと頷いている。
「じゃあ最後にあっち向きで、ここに立って」
言われた通りに立つ。後ろで村井が近づいてくる気配がする。
背中に何かが触れる……
バチバチッ!!
音に驚き振り返る。
離れていく村井の手に握られている機械からは青いスパークが走っている。
「平気?」
『平気ですけど今何したんですか?』
「電気通さないって聞いてたからスタンガンで確認してみたんだけど、何も感じなかった?」
『はい』
「すごいねぇ! フルパワーでやったんだけどね。ハハハッ」
『無茶しないで!!』
「それにしても優秀なスーツだねぇ。針が刺されば中に直接電気流せるだろうけど、刺さらないからテーザー銃も効かないって言ってたし……」
村井は少し考え込み、腕時計を確認する。
「そろそろ時間だね」
僕の足元から煙が噴出す。
溶ける。溶けて再び元の形を取り戻す。
「ぐわあああああ!!」
「どうしたの! 大丈夫!?」
僕は立っていられなくなり、その場に崩れ落ちた。
「か、体が……」
「大丈夫!? 急いで担架持ってきて!」
「はい!」
助手の阿部は駈けて部屋を出て行く。
僕はあまりの痛みに呼吸もままならず、体も動かす事ができない。
「何でこんな事に」
村井が腕に触れる。触られた場所に電流が流されるように激痛が僕を襲う。
「うう……」
すぐに到着した担架に僕は乗せられた。
「があ……ああ……」
「かなり痛みが強そうだから鎮痛剤打って、すぐに検査に入ろう!」
そのまま僕はどこかに運ばれていく。
その後、発熱と鎮痛剤が僕の意識を混濁させたまま数日が過ぎた。