4話 紅なのだ
前話で『偽関西弁』と思った方、正解です。大阪には半年しか住んでいませんので、言葉など判るはずが無いのです。
はぁぁ、何とかなったのか。ふうっ、参ったな。どうにもパニくると生まれが分かる言葉使いになっちまうな。幼い頃だけしか住んでなかったのに、あの言葉は根強いと言うか何と言うか。それにしても、何かがかすったんだけど、あれ、撃たれたのか?本当にギリギリだったみたいだな。しかし、オレを殺してどうするつもりだったのか。殺したら行方は永久に判らないだろうに。ああ、初物食ったせいか。あれで殺せ、とかになったか。期間限定同棲が仇になったな。穴の近くで野宿のほうが良かったか。冬じゃなかったらそのほうが絶対・・ふう、後悔はしないはずなのに疲れたな。
《なかなか優秀だったんだけど、もう終わりかい、残念だねぇ・・誰だ、神様か?・・そんな大層な者じゃないよ・・ここは何処だ?もしかして本当に異世界とやらに行けるのか?・・異世界ってのは本当だよ・・もしかしてこの穴、あんたの差し金か・・君も商売とやらで稼いで楽しかったんだろ?・・まあ、バツイチ男の人生再出発としては、裕福な暮らしをざせて貰ったな。女もかなり抱けたし・・そんな君に僕からのお礼と言うか、少しだけ恩恵をあげるよ・・恩恵?どうしてだ・・たくさん送ってくれたからね・・そうか、それで何をくれる・・魔法とスキル、後は身体能力の向上かな・・色々くれるのは良いが、現地の言葉を覚えるのは難しいのか・・ああそうそう、異世界言語理解も付けておくよ・・なんか悪いな、催促したみたいで・・構わないよ。僕の協力者にそんな厳しい現実は与えないよ・・協力者ねぇ、そんな事になってたとはな。けど、そんなに送ったかな。覚えてないが・・君は今までに628の命を運んだのだよ・・うえっ、そんなに送ってたのか。まあ、5年は最低だし、年間100人は超えてたような気もするが・・ステータス魔法ぐらいは知ってるかな?まあ、知らなければ後から色々説明するけど。とにかく君にはいくつかのスキルと魔法を渡そうと思う・・ステータスオープンとか言う、テンプレ魔法の事か・・くすくす。どうやらあの世界の住人にとって、それは常識なんだね・・空想上の話だけどな・・後はその大荷物を入れるためのスキルの説明とかをやっていこう・・何かあるのか・・色々とあるよ。まずは、それから話そうか・・頼むな・・くすくす》
とりあえず、聞いた話をまとめてみようか。オレは今、ステータスという、人間の能力を記し【ステータスオープン】という掛け声?で半透明の表が出る状態になっている。てか、ステータス自体は向こうの世界にもあったが、そのオープンさせる為のマナっていう代物が無いからやれなかったと。んで、そのマナってのは魔法を使うために必要な物質らしく、大気中に含まれているらしいと。だけどあの世界には含まれていない、だから使えないと。んで、体内のマナは触媒に相当して、大気のマナを魔法に発展させる為の道具のような扱いになるとか。んで、あっちの世界で魔法を使うなら、体内だけのマナを使ってやれば可能ではあると。ただ、その分余計に使うとは言っていたな。でももう戻れない世界の事とか知っても仕方が無いが。
それにしても、色々な魔法の事とかスキルの事とか大量に聞いたってのに、それを全て覚えているんだよな。記憶力の悪いオレにはあり得ない。これも何かのスキルじゃないかと思っている。ああ、後は、向こうで落ち着いたら鏡を見るといいって聞いたけど、何か意味があるんだろうか?
まあいい、とにかく穴から出た時の事を話してみようか。まず、荷物はスキルを使って収納したと。んで、穴からスルリと下に降りたら森の中だったと。んで、茂みの向こうに人工の建造物が見えたと。だからそこに行けば良いと思ったんだけど、何かが吼えた気がして横を向いたら、ブタの化け物・・あれはオークとか言う化け物・・魔物って言うのか・・それだった。今から思えばチュートリアルっぽい流れのままに、下に落ちている石を拾い、頭の中に浮かんだスキル・・照準スキルの掛け声?・・詠唱か・・【ロックオン】・・これを使って投擲スキルの効果のままに全力で投げたと。そうしたらノーコンなオレにあるまじきコントロールと、とんでもないスピードで石はオークにぶつかり、その時の鳴き声・・まあ、それはどうでも良いか。まあ、『プギャー』だったかな。とにかく即死みたいだったと。それで身体に力が沸いて、この状態の事を【レベルアップ】と言うらしい。
希望ならファンファーレにしても良いよって言ったけど、それは止めてもらった。タララタンタンターンとか毎回聞かされたら、手にコントローラーがあるような気がするからだ。あんまりゲームっぽい仕様は現実感が無くなるからな。
ああそうそう、鏡を見ろと言っていたな。ええと・・【マジックボックス・オープン】おお、頭の中に何があるかが浮かんでくるぞ。ううむ、しっかしまた大量に持って来たな。あん時はパニックになってて、持てるだけ持って必死で穴に飛び込んだからな。
おっと、そんな事を言ってる場合では・・鏡は何処だ・・これは、姿見?なんでこんなでかい鏡が・・まあ良いか。姿見と言う事は姿を見ろって事だよな・・うえっ、何だこれ・・どうなってんの・・冗談でしょ・・あり得ねぇ・・こんな格好で人前に出るとか止めてくれ。ええと、魔法魔法・・お、これがいけるか・・【変装魔法】よーし、頭の中にイメージで・・元の姿で良いか・・【チェンジ】・・姿見で・・うん、元通り。これで良いな。あの姿は封印で・・
しかし、これが身体能力強化の意味だったのかな。元の身体がしょぼいから、身体ごと交換にしたとか・・ありそうな話だ。だけどな、銀髪、これはまだ良いよ。銀髪ぐらいならまだ許容範囲だ、と言うか格好良いぐらいか。それと見た目も若い・・15才ぐらいかな。これもありがたいぐらいだ。しかし、瞳がダメだ。そのうち慣れたら瞳だけ別の色にする魔法の開発も考えてみたいな。
つまり赤なのだ。紅なのだ。
彼が嫌うのは、サイトで見たからですね。中学2年頃に罹る特殊な病だと。