番外編 叫び声の正体
まさかの経理部長さん再登板。でも相変わらず名前はありません。
『ぐああああああ・・』
どうしても癒着の実態が掴めなかった経理部長は、それでも何とかあの領地のアラを見つけようと、密かに潜入を試みようとしていた。
別に彼に特別な何かがある訳ではなく、ただ黒金貨5000枚という莫大な額を、一括で出せる新興貴族の財力の一端を掴もうとした、ただの興味に端を発していただけの思いであったが、さっき聞こえてきた叫び声によって、やはり何かあるのでは無いかと思い始めていた。
『もう・・許してくれぇぇぇ』
またである。人里離れたこんな森の奥で、一体どんな惨い事が行われているのか、彼はそれを掴もうと森に侵入を試みる。
だが、そこには妙に触れると痛い金属のラインが施されていて、トゲトゲのそれには何かの肉片がこびり付いていた。
それを被害者の物だと思った経理部長は、これこそがこの領地の恥部であると確信し、何とか潜り込もうと躍起になる。
『勘弁してくれぇぇぇ』
早く助けてやろうと、少し無理した経理部長は、背中にギザギザが触れて痛みを覚えていた。
じくじくとした痛みの中、叫び声が聞こえた辺りに向けてじりじりと進んでいく。
どんなひどい現場でも耐えてみせると覚悟しながら・・
『うわぁぁぁ、死ぬ、死ぬ、死んでしまうぅぅ』
今行くぞ、待ってろよ・・えっ・・なに・・これは・・なに・・それの・・どこが・・悲鳴を・・上げる・・必要が?・・えええっ?
「まさかケモナーって、魔物すら愛する存在とは知らなかったよ」
「まあそうなんだけど、こればっかりは乗り越えないといけないのよね」
「まあ、洗礼だな。殺さないとレベルは上がらないんだし、上げないと善良なあいつらは守れない」
「ジレンマね」
「まあな・・」
ケモナー達は今日も耐えてます。
普通は何でもない事でも、人によっては苦行だったりするようです。




