3話 異変
短めです。
数年前から使っている探偵がいる。そいつは無名だが有能な奴だ。以前の保険金詐欺事件の裏を洗ってもらった時以来の馴染みになっていて、何かの時には利用している。そいつに言わせると、オレは金払いが良い得意客だそうだ。そして有名になるよりこうやって、得意客を何人か持って地味にやるのが性に合っていると言っていた。その彼に今回の妙な周囲の気配について探ってもらう事になったのだ。まずは先日送った彼女だ。色々と考えてみるに、それしか思い付かない。幹部の彼かと思ったが、それなら直接来るはず。調査をしてからとかそんな回りくどい事はやらない。とりあえず攻撃してみて違ってたら「おう、済まんかったな」で終わらせる奴らだからだ。それで文句を言ったら「なんやて?」になっちまう。
まあそういう訳で特急料金と特別手当付きで緊急調査を依頼した。前金で1千万振り込んでの依頼で、詳細に頼むとメールしておいた。1報の後に追加料金と書いておいたので、詳しく調べてくれるに違いない。それでも胸騒ぎがしたので、例の保険の拡充に努めておいた。実家も使わずセーフハウスに篭り、メシもカップ麺オンリーで外出なし。これでどれぐらいいけるか分からんが、とにかく状況を掴まないと。
そしてその翌日の朝、第1報が来た。見て驚いた。あいつ、何も言わずに・・冗談じゃねぇぞ。テーブルの上に置いていたコップの水を飲む。いくら飲んでも喉が渇く。くそっ、あんな有名な代議士の一人娘ってなんだよっ・・こうなったら対策を完璧にやらないと下手したら、いや絶対死ぬ。殺される・・探偵に追加料金5億を振り込み、時間が掛かっても良いから詳細な報告を頼むと送る。どうせ間に合わないと思うが、何かしないと不安で仕方が無い。このワンルームの名義は別れた妻の旧姓になっている。だからすぐには見つからないはずなんだが、どうなるか分からん。相手が大物過ぎるからだ。どんだけの人員がこの件で動いているか、それすらも不明なのだから。
おっと第2報か・・うっ・・マジ、かよ、くそっ・・あいつ、政略結婚逃れで異世界か。しかも、冬休み明け、つまり5日前に見合いの予定になっていたと。行方不明ですっぽかした事になってんのか。寄宿舎から忽然と消えた女生徒・・年明けに駅近辺での目撃情報・・青年と喫茶店で密会・・オレかよ。特定されてるじゃねぇか。あのサテンのマスター、密告しやがったな。あそこは不倫とかその手のワケアリが集う場所になってて黙認だとばかり・・くそっ、やってくれたな、マスター・・こりゃ裏切りだろ。裏の人間裏切って生きていられると思うな。オレも伊達に5年も裏でのたくってた訳じゃねぇ。チャカだってちゃんと持ってんだからよ。この件が収まったらぜってぇ殺ってやるからな、覚悟しやがれ。
【ピンポーン】なんだ?・・ここに客?・・ここはセーフハウスだぞ。確かに呼び鈴は洒落で付けたが、客とか来るはずもねぇ。じゃあ何だ、隣と間違えたのか。【ピンポーン・・ピンポーン・・ピンポーン】くそ、こうなったら、イチカバチカ「じゃかましい、ワレ、何べん鳴らしとんじゃい」はぁはぁはぁ・・ごれで誤魔化せないか・・頼む、何とか、あれで・・くそっ・・【ドンドンドン・・ガンガンガン】あかん、しまいや・・はよ逃げんとあかん。しゃあないな、この際、保険使わんとあかん・・【ギギギギ】・・なにバール使てんねん、ドアが痛むやろ。て、そんな事言うとる場合やあらへん。荷物はこれやな・・なんや重いけど、この際、穴のあるマンション、買ぅといて良かったで、ホンマに・・頼むで、せめて生きれる場所に送ってんか【ガコン、バタン、ドカドカ】ええい、いったれぇぇ・・
裏設定では京都生まれの大阪育ち。後に関東に転居、21才で見合い結婚です。そしてその3年後に・・