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改訂版 異世界ツアー  作者: 黒田明人
4章 元世界・観光編
32/45

31 初生って何だ

 

「やあ、いらっしゃい」

「よくその姿で泊めてくれたな」

「世の中金だよ」

「ああそれでな、ひとつ聞きたい事があったんだが」

「まだ何かあるのか・・まあ、入れよ」

「おう、悪いな」

「で、名前は?」

「ああ、言ってなかったか。山岸大地だ」

「上の名前は?」

「それも言うのかよ」

「通信は上の名前でやらんとな」

「お前には無いだろ」

「あるぞ」

「何でだよ、違うんだろ」

「上での名前はクロウと呼んでくれ」

「形式に合ってるな」

「成程、上は3文字が主流か。彼も3文字だったし」

「ハモンだ」

「貴様などハモンだっ」

「はぁぁ、言われると思ったぜ」

「初生は刀鍛冶か」

「あれだけで分かるのかよ」

「レベルの高さ、名前、とくれば簡単だろ」

「レベルと名前で初生見抜かれたの初めてだぞ」

「初生って何だ」

「今、お前が言っただろ、初めての人生の事だ」


つまりこいつは何度か人生をやったって事か。ハモンってな刃紋の事かよ。けど、何でするりと、当たり前みたいにあんな知らない言葉が出たんだ。妙に使い慣れている言葉みたいに。おっかしいな・・今まで初の生なんて言葉、使った事もなければ意味も知らなかった言葉だ。なのにそれを普通に使っているみたいに・・まさかオレ、忘れているだけで本当は何度も・・いかんいかん、そいつは禁句だ。その先に進むと戻ってこれなくなるようなこの予感、もし万が一当たるとオレが消えちまう・・ような、これも予感か。くそっ、今まで簡単に抑えられていたってのに、あんな言葉で揺れるとは。参ったな、何とか忘れるようにしないと・・自己が揺らいだら終わりだぞ・・え、何故終わりになる、まさか、本当に・・いかん、考えるな・・


(これはいけませんね・・少し抑えてみますか・・なんとか・・)


「おい、どうした」

「済まん、ちょっと昼間、人の群れに揉まれて、その疲れが出ちまったみたいでよ、うとうとしていた」

「悪かったな、急に来ちまって」

「お前、ここで寝ても良いぞ。1ヶ月借りてんだ。シングル空いてなくてツインになったから、そのベッド空いたままなんだ」

「お、そうか、なら向こう引き払ってくるか。あんまし余裕が無いんでな」

「金が欲しいならやるぞ」

「そんなに余裕があるのかよ、いいな」

「今日はもう良いだろ・・眠くてよ」

「お、悪い、寝てくれ」

「フロントに言って人増えた事を言ってカギ貰ってくれ。ふぁぁぁ、じゃあな」

「おうっ」


特に眠い訳じゃないが、このまま話していると、何かポロリとやっちまいそうで・・今日は何かおかしい。こんな時は寝ちまうに限る。明日もあの催し物はあるらしいが、ミカ達まだ見たいかな。オレは疲れたよ・・あいつらと違ってオレは染まっただけだし・・別に好きが高じた訳でも何でもないから、ああいうのは疲れるんだな。確かにノリノリで演ってたが、そうやって自分を騙さないと、とてもじゃないがあの会場のノリには付いていけなくて・・まあ何だ。今日は色々と新しい未知の情報を得たから頭が混乱しただけだろう。明日にはそんな変な事は忘れて・・


(結局、ここに来た目的の話、やれなかったな。あの妙に力の篭った水晶。あんなのがあれば、この世界でもマナの補填がやれる。それにしても、殆どと言うか全くマナが回復しないのには参ったぜ。お陰で混合が解けちまって、まともにスキルも使えねぇ状態になっちまってよ。まさか混ぜた3つのエネルギーのうちの1つが枯渇するとかよぅ、あり得ねぇ世界だぜ。あれは3つだから安定するんであって、2つだと反発しちまって・・やれやれ、明日には聞けると良いが・・触媒の無い世界とか反則だぜ)


翌日、何か忘れているような感覚で目が覚める。何だったんだろう?まあ良いか。それより、妙な体勢で寝るのが趣味なんだな。足は確かにベッドに寝ているが、頭は床に寝ている。しかもその状態でタオルケットを抱きしめているんだが、こいつどんな夢を見ているのか、物凄く興味があるぞ。まあいいや、朝シャンといきますか。【クリーン】でも良いが、やはりシャワーのある場所では、実際に浴びたほうが気持ちが良い。早速、服を脱いで着替えをゴソゴソしていると目が覚めるあいつ・・


「お、起きたか」

「お前、なんちゅう格好してんだよ」

「これからシャワーなんでな、ちょっと着替えを・・」

「部屋の中、裸でうろうろするタイプかよ」

「いや、つい、癖がな」

「露出狂の気でもあんのかよ」

「あっちでスッパで1年、ハントしてたもんでな、ついな」

「マジで露出狂かよ」

「家族全員スッパでハント」

「どんな家族だよ」

「返り血とか体液とかで服が汚れて、下着も汚れてその洗濯とか面倒だろ。だから【マジックシールド】でガードして、それだけでハントしてたのさ」

「よく奥さんが承知したな」

「別に強制してないぞ。オレがそれで狩りしてたら子供達が真似してな、自分だけ洗濯するのが嫌だっただけだろ。どうせ他人は誰も来ないような森の奥だし、魔物に見られても恥ずかしくないだろうし」

「子供も居るのか」

「抱いて寝ると気持ち良くてな、翌朝の目覚めが違うんだよ」

「変態かよ」

「そんな邪な気持ちになれるかよ。純真無垢で慕ってくれる、そんなふわふわした環境でよ、オレは身も心も癒されてな、すっかり過去の傷も癒えちまったのさ」

「なんだ、奥さんじゃなかったのか」

「そりゃあいつもあるけど、一番は子供だな。良いもんだぜ、あのふわふわとした毛皮に包まれてよ」

「ぐわぁぁぁ、ケモミミかよ、子供ってのは」

「ホワイトフォックス系の獣人さ。純白のあのふわふわ毛皮に包まれてみろよ、あれを極楽と言うんだろうな」

「くそぅ、ツアコンでも何でもやるから、オレも欲しいぞ」

「お前もケモナーかよ」


こいつまだ本題言えないんでやんの。恐らくあの水晶の事を聞きたいんだろうけど、そらしてやったぜ、クククッ。容量はあっても残弾0状態なお前の事だから、補填の為に欲しがってんだろ。ああそうか、あの寄こせと言った奴も同じか。マナ無し世界だから枯渇して、そんな時に目の前にご馳走が見えたら止まらんよな。けどあいつ、7800万もの容量があったんだろうか?抱きしめそうなぐらいの勢いで来たんだが、軽く触れないと限界を超えて流入しちまうぞ。伊達に限界まで注入してないんだ、器が壊れても責任持てんぞ。ふうっ、やっぱりサッパリするな・・さてと、そろそろ御褒美の時間かねぇ・・


「気持ち良かったぜ」

「濡れたまま出て来るのかよ」

「良いだろ、それぐらい・・【ドライ】・・ほら、乾いた」

「これ見よがしに目の前で魔法を使いやがって」

「ちょっと握手しようぜ」

「その前に服を着ろ」

「握手が先だ」

「やれやれ・・ほらよ」

「よーし・・【シェイクハンドサプライ】そーれ、食らいやがれぇ」

「おいおい・・マジ・・かよ・・この、圧力、てめ、どんだけの・・」

「はぁぁ、シャワー入って来る、汗だくだ」

「相当無理しやがったな、あの圧力は」

「技能と言うものは、無理をしないと手に入らないものなのだよ」

「とにかく、ありがとうよ」

「あーあ、28万も減ってるよ、この大食いが」

「お前、どんだけの容量持ってんだよ。オレに供給して余るとか、人間超えてんぞ」

「最近、また増えてな、ほんの168万チョイだ」

「とんでもねぇな」

「いやぁ、新型錬金術がまた食うんだよな、やけに」

「新型だと?どんなのだ」

「こいつはちょっと難易度が高いんだけどよ、胸の奥にあるもやもやした力と、身体とは違う身体ってなんか曖昧だけど、そんな力と後は精神力と言う名の魔力をな、それぞれ糸のイメージでより合わせてな、その力でもって物質を再構成するんだよ」

「お前・・それ・・自分で・・考えた・・のか」

「いやぁ、従来の錬金術の限界を感じてな、色々に試行錯誤した結果なのさ。とにかく不思議な感覚だけどよ、魔力が無いと反発すんのな、あの力」

「あ、ああ、そう、だな」


(こいつ、知らず上の力使ってんのかよ。とんでもねぇセンスと言えば良いか・・普通、そんな発想とかやれねぇぞ・・そりゃ一番最初の奴の発想が今の知識の元になってるから、あり得ないとは言えんが・・そんな過去の偉人クラスの才能かよ・・道理で手玉に取られるはずだぜ。こりゃ参ったな・・しかしその方法は実に斬新だぜ。普通は3つの力の量を揃えて融合させるが、使う分だけの融合とはな。確かに量が少ないほうが熟成もかなりやり易いが、滑らかにしないと使い物にならないからと皆混ぜてるが、少量ずつなら熟成も短期間、いや、瞬間でも可能な数だ。まるでそれはストロボの如く、瞬間で熟成させて行使する・・てか。これは面白そうだぜ。オレもそいつに切り替えるか・・そうすりゃもっと熟練しそうだしな)


再度のシャワーが終わり、さらりと乾かして出る。あいつは何か考え込んでいるようなので、さっさと服を着てサイト確認。どうやら昨日のは数日分だったようで、特に目新しい質問はきてない。ただ、警告が1件来ているな。メールで警告?どんな成り済ましだよ。そんなの内容証明で送らないと、やれ送った来てないって水掛け論になるだけだろ。そんなあやふやな証拠が公判で役に立つはずもなし。だから督促状にしろ何にしろ、メールのは全て詐欺だな。現役詐欺師舐めんなってか。さて、消去・・と。しかし今日も行くらしいな。さっき【思考通信】で聞いたらやけに乗り気になっていたが。今日は一転して若向けの服を着て若作りをするらしい。佐代子と共に女学院時代を思わせる格好で乗り込むらしいが、今日は不純異性交遊でやるのかねぇ。けど何が不純なんだろうな。子供を作る行為が不純って・・世の夫婦はみんな不純だな。


しっかし連日、凄い熱気と言うか何と言うか。皆さん元気だね。今日のオレのスタイルはちょっと貴族風に決めてみました。異世界の服屋で仕立ててもらった一品で、これで王宮に出入りするんだから問題あるまい。まあ、革靴と靴下はこっちで買ったんだけど。上着着なくて正解か。こりゃ今日も蒸し暑いぞ。背が低いからよく見えないが、遥か彼方まで人人人だ。手に紙袋を提げた奴とか、カバンを背負った奴、ハンドカバンを小脇に抱えた奴とか、本当に色々な人が行き来している。うん、緑目にしといて良かったな。銀髪赤眼とか、この集まりの中じゃ目立って・・あれ、何で注目浴びている。珍しいのか、貴族服が。悪かったな、無いんだよ、このサイズの普段着が。魔術師のローブを着る訳にもいかんし、かと言ってあっちでの普段着は目立つんだよ。どうにも狩衣に近い簡素な服着て工房でのたくってるから、あんなので来たらそれこそ目立って仕方がないと思ったからこれ着てるのに。まあいい、待ち合わせ場所に急ぐしかあるまい・・お、発見、もう来てたのか。あれ、誰それ・・


「おう、待たせたな」

「おそーい、遅いから変なのが出たでしょ」

「おたくどちらさん?うちの女房に何か用?」

「ショタかよ」

「ああもう何でもいいわ。相手来たから行くわね」

「まあ、待てよ、こんなガキより楽しませてやっからよ」

「お、楽しませてくれるらしいぞ。皆で楽しもうぜ」

「何処で?」

「久しぶりに野営陣地で遊ばないか」

「成程ね、あそこなら誰も来ないし、良いかも」

「どうする、佐代子、慣れるなら今がチャンスだぞ」

「いつかは、越えないと、いけないのね」

「そりゃ町の中でのみ過ごすなら不要だけどな」

「乗り越えるわ」

「よし、決まりだ。こっちは3人、そっちは何人だ」

「お前なんか来るな、オレ達だけで良いんだからよ」

「まあそう言うなよ、楽しみは多いほど良いもんだぜ」

「いーじゃねぇか、本人が構わんって言うんだ、散々遊んでやろうぜ」

「オレにはそんな趣味はねぇぞ」

「なら独占だな、ヒャッヒャッヒャッ」


久しぶりの彼はとても凄惨で・・後はとても言葉に出来ません。

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