30話 上の存在
警戒しているのか?オレの何に警戒している・・まあいい、試すか【サーチ】ふふん、反応したな。こいつは【探索】の派生になる。あれは広範囲だからな、単体に絞る事によって、より詳細な情報を得る魔法になったんだが、なんでレベルがあるのかな。しかも89とか、やけに高いんだけどよ。これはちょっと尋問だな・・
(お前、ちょっと来い・・何だ、小さな声で・・そこの人間に聞かせても良いのか、いいから来い・・意味が分からんがまあいい、付いて行ってやろう・・しかし、見事な物だな・・何がだ・・人間にしか見えん。見事な芝居だ・・オレは人間だぞ・・あのな、人間はそういう反応はしない。この場合は何をバカな事を言っている、と言うのだ。人間じゃない奴が人間のフリをしているからこそ、オレは人間だと言って墓穴を掘るのだよ)
「ならば聞こうか、お前のほうこそ何者だ。人間ではあるまい」
「ほお、それをどうやって調べたのだ。そのような事、人間にはやれぬ事。やはりそなた、人間ではないな」
「ちっ、はぁぁぁ、これはいかんな。ああそうだよ、それで?お前は?お前も同じだろ。とっとと白状しろ」
「やれやれ、ハイクラスがロークラスに追い詰められてどうするのだ。そのような醜態、上の存在としての矜持すら無くしたか。どのような罪を犯したかは知らぬが、許されても修練のやり直しをせねば使い物になるまいな」
「んな、何で、そんな、どうして、そんな、それは知らされぬ、嘘だろ」
「その狼狽も衰えた証。図星程度、とぼけられなくてどうするのだ。その分ではまだまだ許されそうに無いであろうの」
「アンタ、その波で、上の存在、だと、言うのか」
《これなら良いか、くっくっくっ・・うっ、波までこなすのか、なら、やっぱり・・くすくす、遊びが過ぎませんか?・・推測が合ってた・・え、どう言う事ですか・・君はオレにカマをかれられて、漏らしてはならない禁止事項をペラペラと、クククッ・・嘘だろぉぉぉ・・くすくす、大したものですね・・さあ、追加千年だ・・それも推測ですか、本当に見事なものですよ・・オレへの警戒はマナの多さだろ・・そうだ、あり得ない程のマナだからな・・レベル158だしな・・んなっ、たけぇ、オレより上かよ・・しかも何故か老いないんだ、この身体。だもんで7年前からマナが増えっ放しなのさ。で、クロウさんは死んだのか?・・それを何処から・・クロウさんの馴染みの商人がな、オレの事をクロウと思い込んでいて、何かの理由で他人に成り済ましていると思い込んでいる・・まさか馴染みの存在が居たとは、これは手抜かりですね・・良いさ、フリしてるから・・ごめんなさいね・・ちょっと変な推測もあるが、こいつは明言しないほうが良さそうだ。口に出すと拙いって予感をひしひしと感じるんでな・・触りだけでも良いですか・・キーワードだ・・それは・・口に出せば解ける。何が解けるか分からんが、とにかく漏らすとオレの存在に関わるって予感だ・・なら、漏らさないようにしてください・・やはり何かあるんだな・・参りましたね、そういうところも、いえ・・あるじにそっくりだと・・それは・・なんてな、本気にすんなよ、クククッ・・何処まで本気か判らなくなりましたよ・・どうやら下からの通信は除外のようだな。上からの通信が禁止事項で、下から上はそこまでの事も無いと。それでも長時間は拙いだろうから、そろそろ切るよ・・やれやれ、はい》
(予感と言うのはまさか、表層と気付いた訳では・・そんな事は普通・・となると奥底からの影響が・・まさか起きて)
「お前、とんでもねぇな」
「見た目で測るからそうなるのさ、これでも人生経験は36年分あるんでな」
「詐欺だろ・・」
「クククッ・・でまぁ、彼の下働きと言うか、あちらへの誘致を承っています。これでもかつて628人誘致した実績もあるんだぜ」
「お前、相良圭介か」
「ブログ更新しといたから見ておいてくれ」
「見ても仕方が無いだろ。どうせオレはあっちには行けんのだから」
「禁止なのか?」
「手段の話だ」
「なら、ますます見ろ、ブログを」
「スマホでいいか・・ええと、あれ、案内人止めた・・の・・何だとっ」
「最短3日で最長1ヶ月、もしくは永住の案内でな、一応は観光旅行なんだ。お前、オレんとこで仕事やらんか?」
「どんな仕事だよ」
「ツアコン」
「おいおい」
「オレさ、7年行方不明でな、実家の奴ら、嬉々として死亡届出しやがったみたいでな、口座抹消、家売却、土地没収、分譲住宅権利横取りと色々やられちまってんだよ」
「普通は届けとか出さねぇぞ。役所から言われて渋々ってなもんだろ」
「預金その他は贔屓の探偵が取り返してくれたらしくてな、預かってもらってんだけど、これが15億あるんだよ」
「それの横取り企み死亡届か、とんでもねぇな」
「なになに、何なら全員送ってやろうかと思ってんだ」
「お前が送った奴ら、どうなってんだ」
「知らんよ。元々、オレ自身が異世界とか信じてなくてな、あれは詐欺のつもりだったんだ」
「酷ぇ話もあったもんだぜ」
「最初にチンピラを投棄したんだが、そいつは行方不明になってな、こりゃいけると思ったのさ」
「なんでまたそんな事を始めたんだ。普通、そういうのって良心とか働くだろ」
「見合い結婚3年目、種ナシと言われて離婚、それを理由に解雇、実家からは風聞が悪いからと絶縁。これだけ揃えば他人とかどうでも良くなるぞ」
「そん中にお前のせいな事、ひとつもねぇじゃねぇか」
「ああそうだよ。種ナシに産んどいて、親の勧めで見合いさせられた挙句、親のコネで就職して、そこの所長と妻が不倫、オレが種ナシなのをいい事に離婚に持ち込んで、退職金と慰謝料同額の脱税共同正犯ときたもんだ」
「そりゃ人間不信にもなるか」
「あん時、オレは誓ったんだ。他人は利用するもの、騙すものってな」
「今はどうなんだ」
「それを笑って話せるぐらいには幸せだぞ」
「良かったな」
「オレには過ぎた女さ」
「そうなのか?」
「ああ、あいつのお陰でオレは暗闇から抜け出せたんだ。感謝してるさ、なぁ、ミカ」
「知っててわざとだったのね」
「何を真っ赤な顔してんだ」
「アンタのせいよっ」
「それはいかんな。よし、ホテルに行くぞ」
「その格好で行ったら大騒ぎになるぞ」
「いや、どんな格好で行っても騒ぎになるぞ。オレ達、戸籍無いんだから」
「そうか、7年で」
「だから身元のしっかりしているツアコンが欲しいんだよ」
「そう言う事か」
「転移の権利預かってるからよ、往復いけるぞ」
「さすがにこっちは退屈でな、あんな趣味の世界に没頭するぐらいしかやる事が無くてな」
「レベリングして欲しい奴らが居るんだが、まずはそれで雇われないか?」
「どれぐらいだ」
「お前も100を目指すとして、ミカ、お前も目指すか」
「そうね、来年以降ならいけるかな」
「よし、1年でそいつら、レベル50以上にしてくれ」
「今はいくつだよ」
「共に1だ」
「1からかよ」
「ちょっとした恩恵は付けてやる」
「うぷぷっ・・」
人員確保になり、展示会が終わったら合流する事になった。今はフリーターって名前の無職をやっているらしく、年に2回はこうして後輩に付き合って遊んでいるらしい。なので、就職が決まったからと言えば抜けられるらしく、抜けてツアコンになるそうだ。なのでエビスの事務所を教え、ひとまずそこで合流のつもりだったが、オレの現在地を知って来るとか言い出した。何かまだ話があるのかも知れない。どのみち、ホテルは1ヶ月借りているし、ツインだから問題は無い。何故かシングルが満杯でツインしか空いておらず、仕方なく借りたんだが・・展示会に来る奴って独り身が多いのか?まあ良いけどな。
さてと、おおお、中々の反応。仮契約の申し込みとか、色々な質問メールが来てんな。なになに、契約に対しての質問か・・誓約の内容が知りたいってか、まあそうだよな。契約で500万、なのに誓約になったら50万に減るんだ。何かあると思わないほうがおかしいわな。まあいいや、答えを書いとこう。
契約よりは少し強制力の強い条件になっていますが、約束を破らなければ問題の無いものです、と。後は・・これは当方に対する保険のようなものなので、口外禁止に違反して取り返しの付かない事になった場合の対処の為の方法です、と。こちらでは犯罪でもあちらでは許されている刑罰のひとつでもありまして、法的強制力の無い私共の、ある種の防衛措置とお考えください、と。
まあ、これで察する奴は奴隷と思うだろう。ところが契約で既に奴隷な訳で、誓約だと下僕になっちまうんだよな、クククッ。まあそんな事は相手の想像力に期待するだけだし、そもそも染まった奴らはそんな事は関係ない。来るんだよ、恋焦がれてな、クククッ・・
おっと、後は自動通訳に付いての質問か。自動翻訳とは違うのか?ってか。ええと・・日本語で喋っているのに現地語で相手に聞こえ、現地語で話しているのに日本語として聞こえるシステムです、と。なので自動翻訳と言っても過言ではありませんが、その性能は従来のものを遥かに凌駕するものです、と。このシステムは、人間語、獣人語、エルフ語、ドワーフ語、など全ての言語に対して有効でありまして、世界の何処に行っても言葉で苦労する事はなくなります、と。その分、お高くなっている旨をご了承ください、と。
後は、このサービスは本来、短期の旅行客に対してのものであり、永住の方は習得をしたほうがお得になります。この場合、語学教室の開催を予定しておりまして、講師も既に準備中となっております。もちろん、人間語以外を使う機会が多い方は仕方がありませんが、それでもその地に向かう時だけの短期契約にしたほうが宜しいかと存じます、と。次は・・ああ、就職に関してか。
中々に現実的じゃねぇか。頭がファンタジーに染まってると、そういうのを一切考えず、例え考えても冒険者になれば良いと、その程度の認識でホイホイやって来るんだよな。あたかも夢の世界へ行くようなつもりでさ。
ところが何処で暮らしても生活する以上はそこが現実な訳で、そうなって初めて生活の手段を探さなくてはならなくなる。そこで気付くんだよ、ここも現実なのだとな。んで、慌てて冒険者になって、いきなり町から出て魔物に相対して、こんなはずじゃないと思いつつ、魔物に殺されて人生終了ってなもんだ。
命の重い世界から軽い世界へ行くという認識を持った奴がどれだけ居るんだろう。そもそも、そんな事を考えられる奴は来ないか。自分は違う、自分だけは違うと、そして殺されそうになって気付くんだ。自分も他と同じなのだとな。
まあいい、就職先だったな。当方関連への就職斡旋は優遇出来ます、と。例えば現地語をいち早く覚えて他の習得希望者への講師としての仕事とか、将来的に建設予定の孤児院への就職とか、当方の事務方への就職とか、警備関連への就職とか、家政婦としての雇用とかがあります、と。
後は外部への就職斡旋も可能な限り承りますが、まずは言葉の壁を何とかしましょう、と。最長1年は支援致しますし、それを過ぎても多少のサポートは継続します、と。後は・・終わり?・・あれ、これもか。ああ、借金の話か。10億を本当に貸してくれるのか、てか。10億円分って話だからな、日本円じゃないのがミソだ。黒金貨1枚の話だから、最悪あの死蔵品が、げふんげふん・・
もう無いか?・・チェック・・あら、最新が来た。やれやれ・・ええと、分譲の部屋の質問か。どんな部屋なのですか、と来たか。こちらの水準では最低限の部屋ですが、異世界ではかなり高い水準です、と。なにせ王都でも風呂のある宿屋となれば、1泊が日本円で数万から数十万するのがザラであり、小さくても浴槽のある部屋など、自作しないと恐らく得られません。しかも、普通では王都の土地は買えない為、社会的地位を上げてからの、土地購入の後の建築依頼となりますが、当方は設計を自前で賄った為に、かなり最低限のワンルームマンションに近い環境を実現出来たと自負しています、と。確かにこちらでは誰も買わないような物件ですが、異世界の実情をまずは知ってから、部屋の見学を経て決めてください、と。これで終わりだな。まあ、暖かい便座に座って尻を水で洗えば、迷いなどはすぐに晴れるさ、クククッ・・(コンコン)来たか。
ものぐさのようで、意外とまめなのです。




