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改訂版 異世界ツアー  作者: 黒田明人
4章 元世界・観光編
26/45

25話 浮いてるからよ

「こんなんじゃ新婚旅行の代わりにはならんか」

「あら、そのつもりだったのね」

「のんびり旅とかさ、なかなか贅沢だろ」

「そうよね、こっちじゃ時間が、向こうじゃ安全が」

「やっぱり家族で編隊旅行が一番か」

「うん、あれに勝る物は無いわ」

「それで、これからどうする」

「うーん、佐代子の実家しか知らないのよね」

「ケータイは?」

「それがね、公衆電話で掛けてみたんだけど、通じないのよ」

「実家で聞いてみるか」

「そう思ってさっきから地図で探してるんだけど」

「実家も変わっているか」

「おっかしいな、旧家のはずだから変わるとか無いはずなのに」

「近所で聞いてみるか」

「それしか無さそうね」


駅からタクシーで住所を告げてみたが、そこは公園になっていると言われる。それでも良いからと行ってもらい、金を払ってタクシーを降りる。見れば広い公園があるが、これ全部が敷地なら確かにでかい家だったろう。広さで言えばうちの買った土地と同じぐらいか。まあ、オレの場合は1割は道になっているけどな。そういやあの道の件で宰相さんと少し話して、その有効性に納得したようで、廃屋になっている土地を接収して道になっている。なので今では外壁の内側は通路になっていて、うちの道は代替の土地と引き換えに公共の道になったんだ。なので1割分、隣の土地がオレの物になり、そこは今は車庫と離れになっている。一応、フェンリルにはその離れを使うように言っておいたが、仲良く3人で暮らしてくれると良いが。それはそうと、公園の周囲で色々聞いてみたところ、当主以下親戚全てが亡くなって、佐代子だけが残されて、全ての財産を処分して引っ越したらしい。噂では海外に行ったらしいが、詳しい事は不明らしい。


「どうなってんだろうな」

「けど、全員が亡くなるって、何があったんだろう」

「調べてみるか」

「伝はあるの?」

「7年前にあいつの口座に5億振り込んだんだが、お釣りでやってくれると良いが」

「え、5億も振り込んだの?」

「さすがに不安でな、けど、意味は無かったが」

「ホントにごめんね、あん時はもうなりふり構わずだったから」

「いいさ、今はこうなんだから」

「あはっ」


「通報があったのだが、少し良いかな」

「うん?通報とは何だ」

「君、学校は?」

「は?何の事だ」

「アンタ、見た目見た目」

「ああ、しまったな。心配するな、オレは36才だ」

「何を言うちょるか、本官を馬鹿にしくさって」

「何を怒っている。本当の事を言って何が悪い」

「そないに言うなら身分証明書を出してみぃ」

「無い」

「生徒手帳は?」

「無い」

「なら仕方なか、来てもらうばい」

「どうする、ミカ」

「逃げちゃおうか」

「そうだな」

「目の前でいい度胸たい」

「それっ」

「待てぃ・・」


こっちの人間は殺しでもしてない限り、レベル1なのだ。確かに大量殺戮をすればレベルは上がるが、それでもマナの無い世界での効率は相当に悪いらしい。オレも直接聞いた訳じゃないので詳しくは知らないが、挿入されたと思しき知識の中には、レベルとマナの関係について少しだけあった。レベルアップと言うのは、体内のマナを用いての一種の肉体改造をするようなシステムになっているらしい。なので肝心のマナが無いとその改造が巧く働かず、気休めぐらいの成長しかしないとか。と言うか、この世界で大量殺戮をやると、レベルと引き換えに寿命が減るっぽい。恐らく魂の力を代わりに使っているんじゃないかと推察される。まあ、オレは体内にマナがあるから、殺せばレベルは上がるがな。そういう訳で今、警官を簡単に振り切って路地裏で【変装】完了ご苦労様な状態になっている訳だ。


「うっかりしてたな」

「アタシも変えちゃった」

「ホテル行くか」

「あははっ」


見た目を20代前半ぐらいに変え、顔も全然違うものにしてあるので、緊急配備されても問題無い。ミカも顔を少し変えた姿になっている。《顔を変えてもマナの波動は変わらんから問題無いか・・そうね、アンタのは分かり易いし・・うえっ・・あはっ、なんかね、ふわふわしてるのよ・・ううむ、自分じゃ気付かんが・・アタシはどうなのかしら・・もやもやしている・・えー、何それ・・近付くとなんかこう、心が休まると言うかこんな事をしたくなると言うか・・昼間っから大胆ね・・うん、昼間からミカを抱いたんだ・・オヤジギャグキター・・親父だし・・まあそうよね・・さて、佐代子を探さないとな・・でも、どこにいるのか分からないのよ・・電話してみるよ、探偵に・・うん》


7年振りでも番号は変わらず、あいつに繋がるといきなり文句を言われた。調査で5億は多過ぎて、相当に余ってるから取りに来いって言われてもな。そればかりではない。オレの口座抹消の件にも関わって、独自の調査でその結果もあるとか。とにかく、オレが行方不明になったのと、ミカの関連が絡んでいると思ったらしく、多過ぎる報酬を消費して、あらゆる関連の情報を集めた結果、それが代議士の差し金と分かり、全ての関連に内容証明を送り付け、弁護士にも依頼して全てを預かっているそうだ。なので預金の13億8244万余りの金と、残金2億1472万余りの金を早急に取りに来いと言われてしまった。最後に、ミカの友人を匿っていると言われ、佐代子かと聞いたらそうだって、やれやれ。そして実家消滅にも代議士が関わっていて、もうじき初公判ってとんでもない事になってんな。佐代子の代理人ってか、あいつ、地味が好きとか言ってた割りに、中々にアツイじゃないかよ。んで現住所が東京?やれやれ、九州くんだりまで来たと言うのに、またとんぼ返りかよ・・と、普通の奴は言うんだろうな。


「さあ、とんぼ返りだ」

「え、何処なの?」

「とっきょ」

「あらら」

「そこはピョンですよ」

「あは、便利ねぇ」

「待ち合わせ場所も聞いたし、すぐ行くぞ」

「あいよ」


揃ってピョンと元の場所。落ちながら目標を設定し、そこに跳ぶ・・


《また変な事をやったわね・・いやな、こういうのも練習しとかないとな・・物理法則無視だわね・・これも彼らの世界では説明が付くんだそうだ・・ははぁ、やっぱり窺い知れないのね・・そうらしい。さて、動き難いから解くぞ・・あいよ》


身長が違い過ぎたら動くのも神経を使うからな。幻影が軒を通過したら化け物扱いだろうし。なのであっちじゃ20代の【変装】は【浮遊】を併用している。すなわち上が幻影じゃなく、下が幻影なのだ。気分は幽霊だけどな、クククッ。何故その必要があるかってのは、ミカが関係している。胸にキスしていると思われる事になるからな、オレは良いけど。


「かなり慣れたろ」

「そうね、浮いていたとは思えないぐらいだったわ」

「あの微妙に身体の動く感じの調整には苦労したぜ」

「くれぐれも夜中の道で解かないでね」

「白い顔だからな」

「浮いてるからよ」

「クククッ」


「わお、マジで生きてた」

「久しぶり、佐代子」

「あんた、何してたのよ、7年も」

「ちょっとね、結婚してたの」

「離婚したみたいに言うな」

「あはははっ、ごめんごめん」

「で、その子は?」

「初めまして、ミカの旦那です」

「うぇぇぇ、ミカってショタだったのね」

「ちょ、何を言うのよ」

「おう、エビス、久しいな」

「おいおい、やけに縮んだな、相良」

「青山だろ」

「ちっ、マジで本人かよ」

「関係は?」

「ああ、従兄妹だよ。泣きつかれてよ、今じゃ同棲か」

「まだ身体は許してないでしょ」

「なんだ、嫌なのか?オレが」

「そーじゃないけどさ」

「あー、分かった、まだケモナーやってんのね」

「どこかに居ないかなぁ、頭に耳のある男の子」

「いい加減その妄想止めろ」


「あははっ、うちの子、3人とも獣人よ」

「うわーん、ミカだけよ、話合わせてくれるのは」

「嘘じゃないぞ。フェンリルとミクリアとクラリエはうちの子だ。養子女にしたんだよ。奴隷やっててさぁ、今じゃ解放して。フェンリルの奴、あいつらをちゃんと可愛がってるかなぁ」

「大丈夫よ、あの子面倒見良いもん」

「仲良くなってたら届けを出さんとな」

「そうね」

「何の話をしている」

「家族の話だが」

「お前までそんな事を言うのかよ」

「今じゃオレも男爵だしな、フェンリルには結婚式でもしてやるか」

「良いわね、パーティとかしたりして」

「おうよ、ダンパやろうぜ、ダンパ」

「うんうん」

「おい、青山、分かるように説明してくれるな」

「分かったからその手を離せ」

「今の話はどこまで本当だ」

「全て本当だ」

「7年間の行き先は?」

「異世界だ」

「証明出来る物はあるか」

「見た目はミカン、味はスイカ」

「あはは、マイタンを出すのね」

「ほれ、食ってみな」

「ミカンがどうした」

「それはスイカだ」

「嘘言え、こんな・・んなっ、なんだこの、マジ・・かよ」


観光旅行になるか、移住になるか、果たしてどちらでしょう。

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