22話 化けてます
あの変な研究で充填済みを20個失ったがまたマナ量が増えており、作業をしながら4日で充填出来るようになる。遂に3桁になったマナ量だが、留まるところはあるのか無いのか・・ちょっと嫌な事を思い出した。確かに使えば使うほどに増えるマナだが、20才を超えると伸び率が減り、40代までには止まってしまうとか。つまりこの見た目15才の身体の場合、ひたすら増えていくんじゃないかって・・けど、外ではちゃんと20才に見える変装を使っている。さすがに変わらないとか、ますます魔王扱いされそうで。そのうち耳を細長く偽装する必要が出そうな予感だ。高純度の未充填の数がかなり減り、充填済みの在庫が228個になった頃、ミカから連絡が入る。卒業したと・・ミカ23才、フェンリル21才、ミクリア15才、クラリエ15才になったんだな。街乗り用の魔導馬車で迎えに行くと、派手に注目を浴びた。これは魔導エンジンは使わないものの、水圧式を採用していてとても静かなのだ。街乗り用にと開発した静穏型の魔導馬車になる。なのでその分、警笛は強力になっており、さっきも派手に鳴らして通行人を驚かせてしまった。さてと、全員乗れるはずなので、横のドアを上に押し上げる・・
「卒業おめでとう」
「ガルウイングかよ」
「何その反応」
「あ、ごめんごめん、つい突っ込んじゃった」
「いや、これだと雨の時に屋根になるからと思ってね」
「でも静かですね、兄さん」
「うん、これはちょっと変わった動力を使っていてね」
「ちなみに?」
「水圧駆動式だ」
「うえっ、何それ」
「水に圧力を掛ける魔法なんだけどさ、そいつで駆動軸の水車を回すんだ。トルクがメチャ高いから、水車も小さく出来たしね。まあ、分かり易く言うなら油圧式の水版だ」
「ああ、成程、そう言う事なのね」
「水を発生させて圧力を掛けて、水車を回したら貯水槽に溜まっていく。それを使って車内の冷房を」
「この5年で凄く進化したんだね」
「そうかもね・・おっと、邪魔だな」
『チャララーララ』
「チャルメラかよ」
「よし、避けた」
「何か変な方向に進化してない?」
「この音を出すのにかなり苦労したんだよ。だけど懐かしいだろ」
「そりゃ懐かしいけどさ、食べたくなるじゃない」
『チャララーララ』
「本当によく避けますね」
「「おもしろーい」」
「街乗り用静穏魔導馬車だ。これが最新だぞ」
「王宮でも最近、研究してるって聞くけど」
「劣化版を献上した」
「ああ、それでなのね」
「宰相さんを乗せて走ったんだよ」
「そうなんだ」
「なんか子供みたいに面白がっていたけどね」
「意外と無邪気なのかしら」
「まだ若いんだ。おもに精神が」
「そういや、20才ぐらいになってるけど」
「はい、化けてます」
「やっぱり変わらない?」
「困った事に」
屋敷まで走り、水管反転レバーを回して、後進に切り替えてバックで車庫に入れる。この反転にも苦労したけど、何とかなって良かった。洒落でバックブザーとバックライトも付けたので、いかにも自動車のような気分になる。多少流線型を意識したこの街乗り用は、廉価版としてそのうち売りに出そうかと思っている。水圧用の魔法ぐらいなら表に出しても良いと思うからだ。車庫の中で排水口に、貯水槽の水を捨てる。郊外を走るなら垂れ流しでも構わないが、町中を水浸しにする訳にはいかない。もっとも、雨の日は楽だけど。さて、標準小売価格をいくらにするべきか、それが問題だ。
「「お帰りなさいませ」」
「やあ、久しぶりだね」
「あれ、家に帰ってなかったの?」
「工房で寝泊りしてた」
「あはは、すっかり物作りに嵌まっちゃってるのね」
「ああ、やればやる程だよ。さて、メシの支度、良いかな。あと風呂も」
「はい、ただいま」
「兄さん、お風呂一緒に良いかな」
「ああ、どれだけ逞しくなったか見てやろう」
「あは、楽しみです」
「「わたしたちもー」」
「よし、どんなに色っぼくなったか見てやろう」
「「わーい」」
「アタシも」
「よし、風呂の中でやろうか」
「あははっ」
「今更の話だが、フェンリル」
「何ですか、兄さん」
「お前の故郷ってどの辺りだ」
「それは・・隣の国です」
「そうか・・いやな、お前も年頃だ。里に連れてって伴侶でもと思ったが」
「ボクはこのままが良いです」
「相手は要らないのか?」
「はい」
「そうか、ならずっと一緒で良いさ」
「はいっ」
「次の奥さん」
「ミカ、どうなっている」
「いやそれがね、クラスでコイバナとかやっててさ、アタシはもう相手が居ると言ったら2人も居るって言ってさ」
「養女だしな」
「でも見た目は似たようなものだし、別に良いんじゃい?」
「そうは言うがな」
「卒業したらパパから旦那になるの」
「うーん、そうだなぁ」
「あたしはパパのままで良いよ」
「お、そうなのか」
「フェン兄とかタイプだし」
「どうだ、フェンリル」
「うっ・・」
「もしかして・・」
「フェン兄、あたし嫌い?」
「い、いや、その、つまり・・」
「顔が赤いぞ、フェンリル」
「はぁぁぁ、参ったなぁ・・ミクちゃん、ボクで良いの?」
「やったね」
「妹のほうのミクリアはフェンリルの嫁さんになるとして、クラリエはオレの奥さんか」
「ダメかな・・」
「よし、風呂で見てからだ。ちゃんと女っぼくないとダメだ」
「ええええー」
「おやぁ、自信が無いのかな」
「ううう・・」
これ、冗談じゃ無いよな、本気だよな。どうすっかな・・フェンリルとの話は賛成だが、さすがになぁ・・マジどうすっかな。風呂云々で誤魔化したが、ミカも賛成となりゃ断る理由も無い訳で。けど、肉体年齢はまだしも、精神年齢は36だしな。そんなこんなでメシを食い、皆で風呂に入る事になる。うちの風呂は大浴場並に広くしてあり、例の魔導水道を設置してある。火魔法も組み込んだ温水も可能な屋敷用なのだが、使う前にこうして・・
「よし、充填完了」
「やっぱり早いわね」
「よし、こっちも終わりだ。お湯を入れるぞ」
「はーい」
「大きくならないよ」
「そんなに欲しいのか」
「うん、早く欲しい」
「ミカが先だ」
「うん、我慢する」
おっかしいな、双子の姉妹なのにどうしてこうなっちまった。妹のほうはフェンリルが好きになり、姉のほうはオレかよ。確かに見た目は同い年だけどよ。精神の年齢がなぁ・・弱ったな。ミカをだしにして時間稼ぎをしたけど、もう限界だぞ。何とかならないものかな。誰か相手が居れば良いんだけどな。まあ、とりあえずミカと・・
「こういうのも新鮮だわね」
「ミカに抱かれて抱くのも新鮮だ」
「あはは、確かにそうなっちゃったわね」
「知らない奴が見たらこう言うんだろうな。ショタだと」
「あわわ、冗談じゃないわ」
「ねぇ、まだぁ?」
「もうちょっと待て」
「もう我慢出来なーい」
「どうしよう、ミカ」
「良いじゃない、抱いてあげれば」
「もう時間切れか」
「はいはい、そろそろ交代ね」
「ミカお前まだイッてないだろ」
「良いのよ、後で」
「ならな、ちゃんとベッドでだ」
「はーい」
《往生際が悪いわよ・・心の中では既にオレの子だ・・まあその気持ちは分からなくもないけどさ・・ミカももう23か・・何よ、年増と言いたいの?・・そうじゃないさ、もうじき母体としてはヤバくなるだろ・・けど、無理なんでょ・・そうなんだよなぁ・・アタシはこのままで良いわよ・・科学なら何とかなると思うんだが、魔法じゃどうにもならん・・えっ、科学って?・・ほら、体外受精さ・・ああ、そういうのがあったわね・・あれならもしかして、だがな・・もう戻れないしね・・ああ、せめて行き来出来ればとも思うが、こればっかりはな・・勇者召喚で320万でしょ、たから戻るほうも同じでいけると思うのよね・・確かに充填済みはかなりあるが、目隠しして行くようなものだからな、何処に到着するか見当も付かん。北極海のど真ん中とかに落ちたら終わりだぞ・・あれ、でも魔法は?・・確かにそうだが、近くに船でもいたらエイリアンだぞ・・確かにそうだわね・・まあ、殺せば良いだけなんだが、重要人物に見られて殺したら戦争になるかもだしな・・町中とか議事堂の中とかだと洒落にならないわね・・最悪、変装しての移動ならギリキリだけどよ、お前も行くんだぞ・・あ、そうだったわ・・家族全員でいくならどんだけ使う・・うわ、とんでもない量だわ・・まあそれでも手が無い事もないが・・あれが1つで1人だったら人数分あればいけそうね・・いや、倉庫に入れればさ・・ああ、それで良いじゃない・・着いた先が地球じゃ無かったどうすんだ・・あうっ、その可能性もあるわね・・あくまでも世界だからな、月の世界とか、木星の世界なら終わりだぞ・・そうなると大変ね・・もし本当に行くなら、勇者召喚をして、帰りに同行ぐらいじゃないと道標が無いしな。かと言って他人を巻き込むのもなんだし・・良いわよ、アタシはこのままでさ・・ふうっ、弱ったなぁ》よし、ここはひとつ、湯当たり作戦だ。ぐだぁとしてれば、1日ぐらい・・
娘と認識したので、とことん往生際が悪い彼でした。




