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改訂版 異世界ツアー  作者: 黒田明人
3章 異世界・王都編
18/45

17話 錬金術の腕磨き

 

ミカ達は既に宿舎に移動しており、中々リッチな暮らしをしているらしい。たまの【思考通信】でも機嫌が良く、フェンリル達も調子良く学べているようだ。講師連中にも鼻薬は効いたようで、余計な事は言って来ないとか。そして最近【空間魔法】の開発に成功し、【短距離転移】をモノにした。元々【マジックボックス】が使えているんだから、やれるとは思っていた。だけどイメージの問題から【長距離転移】はどうにもやれず、仕方が無く目視での【転移】に切り替えたのだ。そうしたらえらく簡単にやれるようになり、そのうち場所記憶での【中距離転移】に発展させたいと思っている。【短距離転移】が慣れた頃、【中距離転移】への足掛かりを得る。強く記憶に焼き付ければ、何とか跳ぶ事が出来たのだ。まだスイスイとはいかないが、この成功は更なる行動力の強化に繋がると思わせた。国内の工房巡りも順調で、白金貨5枚で買うと言えば、何処の工房でも歓迎された。本当に需要が無いらしく、あるだけ売るって人ばかりだった。まあ、中途半端なんだよな。


確かにボーリングの玉の大きさで15000は多いと思うけど、同じ大きさで天然物は5万って話だし。そりゃかなり高いけど、そう何個も扱う訳じゃない。それに、魔術師御用達は紫水晶らしく、リンゴぐらいの大きさで、人工水晶(ボーリング大)と変わらないってんだから売れるはずが無いな。確かに紫水晶も白金貨80枚ぐらいするらしいけど、魔術師にとっては1生物らしいし、それがステータスにまでなっているなら、安いからと言ってでかい玉を持つはずが無いか。性能が高いが需要が無いと言うのも哀れだな。てな訳で全てを買い取るぞ・・馴染みになった商会にも手を回し、可能な限りの人工水晶の入手に努める。国内を巡って集めては壊し、壊しては作り、量が減ったらまた別の玉でそれを行い、ある程度の純度(推定)の材料にしていく。そうこうしているうちに熟練する事になり、更なる純度の追求(推定)をやっていく事になる。


中程度の純度(推定)の粉が大量になった頃、それを使って人工水晶を作れるだけ造る。見た目の透明度も多少高いようで、そろそろ推定の文字を取っても構わないと思わせる。1万個分の粉から1万造り、壊して作れば9千個に減る。そして作って壊せば8500個ぐらいに減り、少しずつ減る量が減少していく。5000個に成った頃に微々たる量の減少となり、そろそろ限界が来た事を知る。その粉を仮に純度【高】と命名し、また新たに1万個分の粉を扱っていく。この頃、工房が真っ先に出来上がり、早速移動して作成となる。彼は残念がったが、隣と知って機嫌が治った。ドラゴン肉が無くなれば、工房を覗いて少し持って行くって感じになり、金とか面倒なのでツケにしておいた。貯まってからのまとめ払いで良いからと。


オレはこの半年ぐらいずっと水晶と戯れていて、純度【高】も2万個分ぐらい溜まっている。それでもまだまだ足しておこうと、国内巡りと隣からの購入をやっていた。さすがにそこまでにすると資金がヤバくなり、魔物素材を売る事になる。途中で資金が尽きていくらか売って補填したが、それからも何度か尽きては補填していた。なんせ1個が白金貨5枚なので、10万個で白金貨50万枚も必要になるからだ。ワイバーンも1万は売り捌き、岩竜素材も500匹分ぐらいは売った。オーガやリザードマンは言うに及ばず、サイクロプスやナーガと言ったレア素材まで売り捌いた。だけど、後の事を考えてナーガの皮だけは売らなかった。水晶三昧の中で、それを使ったアイテムの構想を練っていたからだ。元々、ナーガは牙がレア物で、皮はそこまでの値打ちじゃないらしく、売らないからと言って特に問題にもならなかった。そして純度【高】が5万個分に成った頃、遂にその先に進む事にした。昨日、隣からの要請で、岩竜以外の牙は無理かと聞かれ、火竜の牙を納品しておいた。幻と呼ばれる火竜の牙は、さすがに莫大な価格になったそうで、白金貨8万枚で売れたそうだ。彼との取引は手数料をドラゴン肉で支払うという方式になっている。なので貯めておいたツケの分から差し引いて、足りなければ金を出すって事になっているが、今回もツケで足りたらしい。


「8万枚か、助かるよ」

「あれ程の人工水晶を一体何に使ったんですか」

「錬金術の腕磨き」

「それなら相当熟練したでしょうね」

「うん、かなりだね」

「それでですね、先日の牙の買い手が、追加は無理かと聞かれましてね」

「火竜の牙は4本でセット。後3本あるぞ」

「全部もらっても?」

「構わんよ。使い道など無いのだから」

「それはありがたいですね」

「魔石は良いのか」

「それはさすがに国王が買い取る話になるはずです」

「なら、パスだな。目立つのはお断りだ」

「それなら今回は牙3本で」

「24万枚か」

「黒金貨はどうですか。量も多くなりましたし」

「別に構わんよ」

「なら、2400枚持って来ますね」

「ああ、よろしく頼む」


牙とか何に使うのかねぇ。しかも4本も・・でも、これからも火竜素材を流していけば、その次の黒竜素材にも辿り着けるかも知れない。そうして最後の古代竜にまで行き着けば、古代竜4匹分の素材も捌けるというものだ。黒竜も28匹分あるし・・まあ、火竜の57匹には負けるけど。それにしても、マスクデータ化した称号の中に、ドラゴンスレイヤーだの、竜の天敵だの、竜族を滅ぼす者だのと、色々物騒なのが増えていた。何かのご利益はあるんだろうけど、隠しておくのが一番だ。でも、選定者って何だろう。説明が無いから、もしかしたらシステム外の・・まあいいや。そんな事より熟練した錬金の技能でやれば、更なる純度になる事が分かったのだ。5万個分の粉から4万8872個の水晶になった。それをまた砕いて作り直せば4万6241個になり、数個の減少になるまで日々練成していけば、遂に38500個ぐらいから減らなくなる。いよいよ純度が更なる限界に来たようだ。なので純度【究極】と記して収納しておく。もう腕は上がらないかも知れない。錬金【99】になっちまったし。それにしてもミカはどうなってんのか、全然連絡して来ないな。もう2年目になると言うのに。あいつも来年で20才になる事だし、何かお祝いでもしてやらんとな。こっちは相変わらず15才にか見えないが。


錬金ランクを確認したので、とりあえず全部を水晶化させる。でもこれ、かなりマナ食うんだよな。日々のマナ使いで30万を越えてなければ、到底全部造るなんて事はやれない。ここまで純度が上がった事で試しにと充填してみたが、なんと380万も入った。何日掛かったろう・・入れても入れても満杯にならず、使い尽くしては寝る日々。2週間目か、入らなくなったのは。14日目に10万で満杯になったから、ステータスでの数値を見て、380万と分かったのだ。もう無理なのかとも思うが、もっと上がる方法の追求もしてみたい。なので他の作成をしながら、充填を平行してやる事にした。1年間の新構想と充填で、28個の充填が終わった。その頃には32万ぐらいに増えていたが、焼け石に水なのは変わらない。そして新構想のほうは順調に構築が成されており、骨組みと制御部分が終わり、今はエンジンの開発に向かっている。火魔法を使った魔導エンジンの開発である。超容量水晶を燃料とし、火魔法でピストンを動かし、回転の動力を得る。そう、新構想とは魔導馬車だ。軸受けと前軸、そして後軸はミスリルで作り、車輪もミスリルでタイヤはナーガの皮。チューブレスの代わりに中には竜の鱗を砕いて粉末にした物を入れる。竜の鱗は魔力が強いので、ナーガの皮の損傷軽減になると言った研究結果を得ての採用となる。


ミスリルがまた高いので、黒金貨も500枚ぐらい消えた。馬車の骨組みは鍛冶屋に依頼し、箱物は大工ギルドに依頼した。設計図も150枚ぐらいは描いたので、嫌とは言わなかった。3年目に突入し、ミカに連絡を取ると、そういや今年だったねぇと、研究に夢中になっていた事を知る。似た者夫婦だと言うと、そっちもそうだったんだって大笑いしていた。久しぶりに彼女達の宿舎にお邪魔してみると、姉妹の背丈が少し伸び、何よりフェンリルの背丈がかなり伸びて逞しくなっていた。やれやれ、抜かれたねぇ・・


彼の身体はどうにも成長しないようです。

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