幽閉魔王の①日 ―― この天使危険につき疎かにするべからず! ――
その昔、大陸全土を恐怖に至らしめた者がいた。
其の者、強大な魔法で村や街を次々と氷塊に閉じ込め、刃向う者在れば紅蓮の炎で焼き尽くす。
侵略するわけでもなく、征服することもない。
只、破壊を繰り返す其の者は何時しか魔王と呼ばれるようになった。
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「ガラン先輩交代の時間です」
「ふぁー、おう新入り」
天高く聳え立つ窓など一切見当たらない円柱状の塔、その前にいる先輩騎士の前に立つとその手から朝日を浴びてキラリと輝く穂先の付いた槍と年季の入った土色のカギを受け取る。
「任務交代っと、んじゃ おやすみー」
「はい、お疲れさまでした」
眠たそうに歩いていく先輩騎士の背中を見送りながら、塔に唯一1つしかない鉄の扉の横で槍を左手に背筋を伸ばした。
俺の名前はゼイン・アル・フォリネ。高貴なる貴族に連なるフォリネ家の18歳になる嫡男だ。・・とは言っても、その他大勢の下級貴族。
剣の腕を見込まれ何とか騎士団には入れたものの、任される仕事は雑用ばかり。やれ、盾を磨いておけだの、馬にブラッシングしろだの、騎士とは名ばかりの仕事ばかりしてきた。
そんな俺に転機が訪れたのは一月前の事。
「ゼイン・アル・フォリネ、貴公に魔王塔の守衛任務を命ずる!」
突然呼び出された先での騎士団長からの命令に俺は震えた。
・・・これはリストラだ!!
騎士団に在籍する者であれば誰もが知っていること。
我が国の東の外れ辺境の地にある魔王塔には、300年前勇者によって倒された魔王が封印幽閉されている。
だがしかし忘れるな。
魔王塔は王都から最も遠く、送られれば出世の道はない。それどころか、何もない辺境の地に送られた事で不満でも言おうものなら即クビになる。無駄に増えた騎士を減らすための、口減らしのような仕事だ、と。
だから俺は口をつぐみこの地へやってきた。騎士団に残るために・・父さん、俺頑張るよ!
ガチャ、、
「う~ん、今日もいい天気ですねぇ~」
不意に鉄の扉が開かれ10歳くらいの女の子が鼻歌を歌いながらトコトコと・・・って?!
「ちょ、ちょっとまったー」
「むむ、何ですか~」
慌てて後を追いかけてくる俺に、振り返った少女がその小さな首を傾げて見せる。
・・・うっ、可愛い。はっ、いかんいかん。俺はお姉さま系の巨乳派だ!。
この見た目天使のようなおっとりとした金髪の少女こそ、300年前勇者によって塔に封印された魔王なのだ。
「何処に行くつもりだ魔王!」
「いえ、ちょっとお花を摘みに」
・・・お花だと? 俺は騙されんぞ。
「ふっ、甘く見られたものだ。俺は知っているぞ、塔にトイレがあることをな」
「私しか使っていないトイレに興味があるのですか? 変態さんですね」
「なっ、なにを言って…」
「う~ん、私はトイレを覗かれるのちょっと、くんかくんかされると泣いちゃいます」
「ふっ、ふざけるな。俺は騎士だ、そんなことはしない!。とにかく塔に戻るんだ」
・・・くっ、これが勇者をも怯ませたと聞く精神攻撃か、魔法を封じられているのに何て恐ろしい奴なんだ。
小さな背中を押すようにして塔に押し込むと、32もの封印魔法が施されたカギをカチャリと掛ける。
・・・あれ、俺いつカギ開けたっけ?
ガチャ、、
「トイレはいりますか?」
「おぃぃぃぃぃぃぃ」
父さん、俺負けないよ!
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魔王塔には近くの村から毎日1回村人がやってくる。魔王と離れることができない俺に昼食を持ってきてくれるのだ。
空を見上げればお日様が真上に差し掛かり、お腹も程よく減ってきた。そろそろ時間だろうか。
視線を戻せば50代半ばのオバサンが籠を手にやってくるのが見えた。
・・・って言うか村近いよね。目の前村の裏門の生垣だし、オバサンも歩いてこられる距離だよ。どうなのこれ
初めて魔王塔を見た時は正直驚いた。この手の塔って、てっきり奥深い森の中に隠されてある物だと思っていたからだ。
「お待たせ-」
「いつもありがとうございます」
騎士らしく右の手のひらをピンと伸ばして左の胸に言葉を添える。この騎士団独特の敬礼を俺はいたく気に入っている。入団当初は手あたり次第に先輩に敬礼していたっけ。
「ほれ、今日は黒パンとジャガイモのスープ、それに干し肉だよ」
ありがたくいただくことに、左手に持つ守衛の証である槍を地面に突き立て立ったまま食する。騎士たる者いかな状況でも万全の態勢でいなくてはならないのだ。
そんな俺を目尻にしわを寄せ「ゆっくり食べな」と笑顔を見せると、今度は魔王の分を用意し始めた。
「はいよー、魔王ちゃーん 食事だよー」
「はぁーい」
ガチャ、、
「ぷふぁぁぁぁ」
俺の口から咀嚼されたイモとスープが飛び出す。それはもう滝のようだ。・・いやいやそんなに吐いてないぞ。
オバサンは「あら嫌だね」とか、魔王は「ばっちいですね」と言っているが、そんなことはどうでもいい。それよりも
「ちょっと、困りますよ。魔王への食事は‥ほらこうして扉の下の方にある小さな隙間らかですね」
開け放たれたドッシリトした鉄の扉を引き戻しながら、俺は懇切丁寧に説明する。
「それじゃもう一度いいですかー」
扉の前で首をコテリと傾げる魔王を無視して扉を閉め、かつて勇者が作り出したと言われる32の封印魔法が施されたカギをしっかりと掛ける。
「はい、どーぞー」
「はいはい、魔王ちゃーんお昼ですよー」
ガチャ、、
「はぁーい」
「おぃぃぃぃぃ お前なんで開けるかなー」
今一度扉を戻そうと手を伸ばした先に天使が‥いや、もとい魔王がプクッと頬を膨らませ立ちはだかる。
「騎士様は間違っていると思います」
「???」
一瞬何を言われたの判らず今度は俺が首を傾げると、魔王が腰に手を当てて先を続けた。
「大陸の東の隅にあるここ”ヤバインジャネ村”は、これと言って特色もなく産業もない、それはそれは貧しい村なのです。それなのに国王からの命令だからと、自らの食費を削ってまで私たちの食事を用意してくれいるのです。それなのに、それなのに騎士様は顔を合わせることもなく只食べろと?。私は食事を作ってくれたオバサンに向かい合い感謝しながら頂きたいのです。それはいけないことですか?」
俺は何も言えなかった。
食事を終え魔王が「ご馳走様でした」と笑顔で手を振るのを確認すると扉を閉める。
・・・これが本当にありとあらゆる破壊を繰り返していた、あの魔王なのか?。本当は物語と違っていい奴で、何かの謀略でここに閉じ込められた翼をもがれた天使なんじゃ
呆然と扉を見ていた俺の腕にオバサンの手が触れた。
「食費は国から支給されていますよ。うふふ、ちゃーんと3人分ね。それにここは”マカラン村”ですよ」
「…え?」
にこやかに去っていくオバサンの肩が震えているのが遠目でも解る。
・・・ダッ、だっ、だまされたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
父さん、魔王はやっぱり悪い奴です!
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幾度となく繰り出される悪辣な魔王の精神攻撃を耐え抜いた俺は、定位置である厳重に閉ざされた扉の横ではなく前で左手に持つ槍を垂直に立て不動の姿勢を保つ。
守衛騎士の規律はとても厳しく仕事も多彩に渡り過酷を極める。その中の一つに”魔王の懺悔”なるものがある。
魔王の懺悔とは、ここマカラン村から7日程掛かる最も近い街にある教会から、月に一度神父が聖騎士を伴って魔王塔に訪れるというものだ。
先輩の話によると塔の成り立ちから300年間続けられていることで、教会による監査ではないかと言っていた。
・・・なんて恐ろしい。リストラの対象として僻地に飛ばされたうえ、国王に次ぐ権力を持つと言われる教会の監視付きだとは。だが負けん、完璧な礼を尽くし騎士団に居残って見せる!
「お待ちしておりました」
まだかまだかと緊張しながら待ち続け、お日様がだいぶ傾いたころに待ち人たちは塔に現れた。正直な所もう少し早くやって来てくれると嬉しいのだが、立場上俺の方が格下なので何も言えない。
どのくらい格下かと言うと答えるのも嫌なのだが・・教会の上位神父の殆どが上級貴族で、その教会を守護する聖騎士は中級貴族以上が多いし、俺の知る騎士団長よりも偉く、強い。
この俺も幼い頃には勇者ゴッコより聖騎士ゴッコをやっていたことが多いほど、聖騎士は子供たちの憧れの存在だ。
草垣から現れ塔の前にやってきたのは、白に金の刺繍が施された豪華な法衣を着こんだ初老の男性に、後ろに控える真っ白なフルプレーを装備し大きなタワーシールドを持つ聖騎士二人の姿を見るや、素早く騎士団の敬礼で敬意を示す。
・・・よし!
「私はこのたび魔王塔守衛騎士の命を受けて着任いたしました ゼイン・アル・フォリネと申します」
騎士団の入団試験以来の緊張の中、噛まずに言えたことを自分自身に褒めてやりたくなった。
そんな俺の緊張を知ってか知らずか、俺よりも僅かに背の高い初老の神父さまは優しそうな面持ちで口元に笑みを浮かべ「まぁまぁ、気楽に」と場を和ませてくれた。
「私はライデルの街から来ましたアヴェル神父と申します。自分で神父と名乗るのは恥ずかしいですね。ゼイン殿と同じく私もつい最近魔王の懺悔の任を承りましてね…」
アヴェル神父様の話によると”魔王の懺悔”とは、幽閉されている魔王を改心させるべく神の名のもとに話を聞きながら説教をする事らしい。
・・・なんだ、監査ではないのか。いやいや、あの魔王に説教?!
強張らせていた肩がグッと下がると共に「神父様も大変ですね」と思わず同情してしまった。
「それではこちらに」
アヴェル神父様と聖騎士様を扉の前に導くと、強固に閉じられた扉に向かってドンドンと拳をぶつける。
「魔王 懺悔の時間だ」
声を掛けながら32の封印魔法が施されたカギをカギ穴に差し込む。
・・・あれ?
一度引き抜いてもう一度差し込む。
・・・うぉ、回らない?!
「どうした、早くしろ!」
後ろから投げかけられる聖騎士様の声が険しい。非常にマズイ
「くっ、ふぬぅぅぅぅぅぅ」
両手で掴んで渾身の力を掛けるもピクリとも回らない。・・何だ、何が起きてる。
次第に鋭さの増す殺意にも似た視線が背中に突き刺さる。鼓動が早まり頬を汗が滴る。頭の中が真っ白になりかけた時、 ふとあることが頭をよぎった。
「おい、魔王そこにいるんだろ!」
「いないですよ~」
「・・・」
「・・・」
「てっめ、ふざけんな。ここを開けろ 魔王!」
「いやです~ 教会はきらいなのです。あいつ等は事あるごとに、反省しろ、反省しろ、反省しろ‥私はお猿さんではないのです」
「何いってんだ魔王」
「も~なんでまた来たですか。前に来た奴らを「そんなにお猿さんが好きならお猿さんにしてあげます」って、お猿さんに人体改造したのに~」
今俺はこれまでにない壮絶な戦いの中にいた。
眼前では何だか判らないがとんでもないことを口走りながら頑なに扉を死守している最悪の破壊者魔王。そして後ろには、騎士団のクビどころか貴族としての称号すらゴミ屑のように扱える権力を持つ教会の使者。もはや恥も外聞もない負けられない戦いがそこにあった。
「魔王、いや魔王さん。お願いします、ここを開けてくださらないと私は騎士団をクビになってしまいます」
「…騎士様 いなくなっちゃうですか?」
・・・よぉぉぉし、食いついたぞ!
「そうなのです、私はしがない下級貴族。教会の方々のお手を煩わせたと知られれば‥私はもっと魔王さんと共にいたいのに」
感情たっぷりに尻つぼみで話す俺は今、王都で最も人気のある吟遊詩人を超えた。・・・くっくっく、絶対だ。
ガチャ、、
「それは嫌なのです、私は今の騎士様を気に入っているのです」
開かれた扉の向こうには、金色に輝く瞳を上目づかいにして恥ずかしそうに身をよじる小さな女の子がいた。
・・・なんだこの気持ちは
うまく言葉にできない気持ちを代弁するかのように自然と手が少女の頭に‥そこに至って我に返り、開かれた掌をギュッと握りこんだ。
「お待たせいたしました」
-----------------------------(ノ)゜Д゜(ヽ)-----------------------------------
教会の使者である3人が扉の向こう側に消えてから大分時間が過ぎていた。
空を見上げれば青から赤へと徐々に色を変え、まもなく闇色に覆われる。
そして俺は今日一日の締めくくりの仕事に精を出す。
魔王塔の周りには8つの篝籠が設置されている。篝籠とは、鉄で出来た三本の棒を組み合わせその上に鉄を編み込んだ籠を乗せた物だ。
日が暮れた後の魔王塔は魔王の好む闇に覆われるため、夜の守衛騎士である先輩が塔を守りやすいように篝籠に割木をくべ火をつけるのだ。その効果は一つ一つでは頼りない明かりも塔を囲むように照らされる8つの光によって闇を遠ざける。
「よし」
今最後の篝籠を設置し終えると俺は呼吸を整えた。
貴族と平民には越えられない壁がある。持てる知識や財産もそうだが、最もな違いは魔力の有無だ。
魔力とは自然界にただようマナと呼ばれる力の元を体内に取り入れ、自らが力として行使できるように変化させたもの。貴族はその魔力を糧として奇跡の力と呼ばれる魔法を具現化させる。
『ファイヤー』
力強く放った呪文に応えるよに、俺の前にある篝籠に炎が灯る。
幼い頃は下級貴族という魔力の少ない出自の為、なかなか上手く魔力が引き出せなくて中級貴族の子供らに馬鹿にされよく枕を濡らせたものだ。・・今も馬鹿にされてるが。あれ、可笑しいな目にゴミが‥
全ての篝火を確認すると未だ閉ざされている扉に自然と目が向かい、そして流れるように掌へ。
・・・なぜ俺はあんなことを あいつは魔王なのに
いくら考えても答えが出ない。そもそも俺は考えるのが苦手だ。「こういう時は酒だな」とごちりながら星が見え始めた夜空を見上げた時、ガチャリ、、と扉が開いた。
俺がまだ王都の騎士団に入団したての頃、同期の奴から騎士団長の浮気現場を目撃したと小声で聞かされた。しかも相手は10歳くらいの少年で、小さな手を騎士団長の口髭に添えて濃厚なキスをしていたらしい。
ガッチリとした体格の厳つい顔した騎士団長と少年の情事など想像するのも嫌なのだが、俺がその話を聞いた2日後そいつの姿が消え、5日後には騎士団長の屋敷がある場所の近くで物言わぬ骸となって発見された。遺体は壮絶な拷問の跡があったものの、騎士団長の「物とりだ」の一言で捜査が打ち切られてしまった。
俺はその時一つ学んだ。この世には見てはいけない事、言ってはいけない事がある。と
なぜ俺が今この話をしたのか、それは…
「おい、おい 新入り」
「?!」
「おい、どうした」
「ガラン先輩」
「どうした、ぼーとして」
いつの間に来ていたのか、夜間の守衛騎士である先輩が目の前に来ていて俺の顔をのぞき込んでいた。
「あ、あの先輩、神父様は‥」
「あぁ、俺とはすれ違いで帰られたようだ。村で宿の用意をしていたのにと村長がぼやいていたよ」
「・・・」
「新入り 疲れてるんじゃないか? 今日は酒でも飲んで早めに寝ちまうんだな。ほれ交代だ」
ガラン先輩へ引継ぎを完了させると魔王塔から逃げるように俺は駆け出していた。
「プファー」
今日一日の仕事ぶりを労うかのように喉を通る酒が俺の心に沁みわたる。そして一口、もう一口と飲むほどに「忘れちまえよ」と誰かが囁いてるように聞こえた。
・・・俺は忘れられるだろうか
「はい おいっち にい おいっち にい」
ウィーン、、ウィーン、、ウィーン、、
塔の入り口で指揮する魔王の声に従い足踏みする塔から現れた3つの人影。彼らはまるで操り人形かのごとく不気味な音を立てながら一糸乱れぬ動きで地を踏み鳴らす。
・・・いったい何が起きてるんだ?!。それにあれは神父様なのか?
俺がそう思ってしまうほど数時間前にあった彼等とは別人のようで・・って言うか、神父様顔色が悪いを通り越して鉄色なんですけど!
「教会に帰ったら何と言うのですか~。はい」
「マ オ ウ ワ ワ ル ク ナ イ」
「ザ ン ゲ ワ モ ウ イ ラ ナ イ」
「マ オ ○ Θ ス ÷ ☆ シ イ」
「あぅ、最後のオジチャンは改造の失敗なのです。まぁ、いいのですよ」
「・・・」
俺は今目の前で起こっていることが理解できなかった。教会の使者たちは何だかおかしな声色で揃って魔王を擁護している。魔王の存在自体忌み嫌っている教会の使徒たちがだ。
・・・何だ、何かが危険だと俺の心に囁きかける。見るな、聞くな、関わるなと‥
つい先ほどの出来事が思い起こされ途端に酔いがさめてくる。赴任祝いだとガラン先輩に貰った酒だ。
「くそ、勿体ない」
誰もいない部屋で誰に聞かせるでもなく呟くとベットへ向かった。
守衛騎士の宿舎は村の中にある一軒家だ。かつて魔王塔を建造する際に勇者も泊まったという逸話は、マカラン村に初めて足を踏み入れた時に村長から自慢げに聞かされた。最もそれから300年、何度となく建て替えはしたものの、寝室の扉だけは同じものが使われているらしい。
「これはないよなー」
ゼインがベットに横になり視線を扉に向ける。そこには見覚えのある鉄の扉があった。
村長曰く、魔王塔建造の際に勇者が間違って2つ…ではなく、守衛騎士が宿舎にいる時でも気を抜かない様にとの事らしい。「どっちなんだよ」思わず毒づきながら体の向きを変えた時だった。
ドンドン、、
扉を力強く叩く音に慌てて飛び起きる。鼓動が早まり魂が抜き出るほどの驚きと共に考えを巡らせる。
宿舎の間取りは外へとつながる扉の先に居間がありその奥に寝室がある。そして、俺は外への扉をしっかり閉めた。それなのに今寝室の扉が叩かれたのはどういう訳だ。
・・・強盗か? いやいや、強盗が扉を叩いて中の奴に挨拶するものか。いったい誰だ!
ごくりと唾を飲み込む音が寝室に木霊する。
ガチャ、、
「騎士様~ 懺悔の時間なのですよ~」
俺は我が耳を疑い無意識に体が震えた。その声は今日一日嫌と言うほど聞かされてきたもので‥
「まだ眠くないのです~、遊んで欲しいのですよ~」
悪びれもなく満面の笑みで姿を現す魔王と言う名の天使が俺の安眠の前に立ちはだかった!
ト、と、父さん 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございます。
♪感謝☆(人゜∀゜*)☆感謝♪