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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤い瞳の記憶

作者: すら犬

残酷描写となってますがそこまで酷いつもりはありません。ただシリアス気味なのでその辺は要注意。

そこでは私は異物だった。

最初からそうだったわけではない。物心がついた時くらいだ。突然頭に元々あった鬼の証である角とは別に、異形 ( いぎょう)の羽がはえてきたのだ。

それから私の扱いは変わった。

同族から忌み子だと蔑まれ、実の母親には心から憎まれた。

ーお前など生まれこなければ...!ー

ある日、母親は大木を一撃ですり潰したことのある拳を私に向かって振り上げた。

幼子ながらもその行為の意味するものを私は分かっていた。

だから( われ)は...ー


親殺しの私は里から追い出された。

本当はそんなものは口実に過ぎない。頭に異形の羽を生やした私を里に置いておきたくなかっただけ。

分かっていたいたことだ。間違いなく、私は存在してはいけない者なのだろう。だが、それでも私は生にしがみついた。ただ死にたくなかった。どうして我が死ななければいけないのだ。ただ皆と少し見た目が違うだけだ。それだけなのにどうして。


それからしばらく私はあてもなく彷徨った。空腹だ。もう何日も何も食べていない。何かないものかとあたりを見渡すと一軒、食事処らしきものを見つけた。助かった。これで何かにありつける。


すぐさまその建物に駆け込み、店主に食事を頼んだ。

「なんでもいい、なにか食べ物をだしてくれ」

あいよ、と店主は返事をし、すぐ食べ物をもってきてくれた。

私はそれらをすぐに平らげた。そしてそのまま店を出て行こうとしたのだが。

「ちょいっと待ちな嬢ちゃん。お勘定がまだだぜ?」

「...?」

おかんじょう?なんだそれは。

私はぽかんとしていると店主は顔を真っ赤にして、

「まさか食い逃げかぁ〜〜!!?」

カンカンになってこっちに近づいてきた。


うむ。なんだか分からんがここは逃げた方が良さそうだ。

そうして私は全速力で逃げた。しばらく走っていると店主の姿は見えなくなった。どうやら私は普通より逃げ足が速いらしい。この異形の羽ゆえかどうかは分からんが。


とにかく私はそんなことを繰り返した。店を見かけるとそこに入って食事をし、お勘定とやらを出来ない私は食事を終えるとすぐさまその場から全速力で逃げ去った。

後から知ったのだが、どうやら人間社会ではお金というものと引き換えに食事をするらしい。お金がどういうものなのかは未だよく分かってないのだが、とにかくそれを持たない私は食事をする度に逃げ続けるしかなかった。


そうやって私は生きてきた。

一つの場所にとどまらず、食い逃げした店から逃げながら放浪した。目的もなく、ただ生きるためにそんなことをやり続けた。


そんなことを繰り返してたある日のことだ。いつものようにふらふらとしていたときのことだ。目の前に多数の武装をした男たちが現れた。

「おいお前だな!?この辺を荒らしてる奴ってのは!!」

「変な羽なんぞ生やしよって、鬼にしたって気味が悪い。始末してくれる!」

男たちが口々に何か言ってくる。おそらく食い逃げをしたことの報復に来たのだろう。当然だ。それはいい。だが、あの男はなんて言った?鬼にしても気味が悪いだと?

同族に気味悪がられるは理解出来た。だがあの男は人間だ。何故人間そんなことを言われなければならないのだ。そもそも君たちとは違う生き物だろう?

私が惚けている間に男達は私に襲いかかってきた。この人数では逃げきれない。


ここで死ぬと思った。何故こんなところで?我はただ生きたかっただけなのに。...生きたい。死にたくない。

ならばここで彼らをー

「な、なんだこいつ、急に目が赤く...うわあああああ!!」

「ひぃ!!助け」





彼らは死んだ。一人残らず、我の手で。

「我が殺したのか...」

自分の手が赤く染まる。あの時と同じだ。母親を殺したあの時と...。

あの時はただ生きたかった。それしか考えていなかった。

だが今はどうだ。男たちは叫び、命乞いをしていた。それを聞く気にもなれず殺した。ある男は逃げようとした。見ていてわかった。この男はもう二度と襲ってこない。でも殺した。殺す必要はなかった。ただ殺したいから殺した。


それで自覚した。我は化け物だ。あやかしから見ても本物の化け物だ。

我の内にあるものは人もあやかしも関係ない。我以外の生物を全て消そうとする。


もう生きているべきじゃない。もういっそこのままー




それから数日が過ぎた。身体に力が入らない。飢えがピークに達しているのだ。このまま食事を摂らなければ餓え死ぬだろう。

だがこれでいい。このままこの化け物が消えるなら...。


「食べなさい。」


意識が消えかける中、声がした。閉じかけた瞼を辛うじて開けると黒髪に赤い瞳の男が、私に食べ物を差し出していた。私はそれを頭を振って拒絶した。それでもその男は、

「食べなさい。このままでは餓え死んでしまうよ。」

諦めず、食べ物を差し出し続けた。

「いらない。我はこのまま死んだ方がいいのだ。」

それを再び断った。すると男は首を傾げて、

「何故?」

と問うた。その赤い瞳は全てを見透かしているようだったのにその男はあえて問うてきた。

「我は...化け物だ。あやかしだからではない。人を、生き物を殺したいという理由で殺してしまう。こんなものは...生きているべきじゃない。」

そう生きているべきじゃない。だというのに、

「殺したいから殺すのは当然のことだろう?何故それを悲観する?」

と、その男は冷たく言い放った。

「面倒な争いは避けるべきだが、邪魔者はいないに限る。ならば殺すのが道理だろう?」

ましてや人間なんて数が多いだけの無能な生き物はねー、とやれやれと言った様子でぼやく。

「で、でも我は!」

「じゃあ聞くけど、」

男は顔を覗き込む。あまりにも近いからか、今にもその赤い瞳に吸い込まれそうになる。

「君は今すぐ私を殺したいと思うかい?」


一瞬、思考が止まった。

殺したいと....思わない。全く思わない。今だけでなく、基本的にいつも誰も殺したいと思っていない。殺したいと思う時は...

「我に殺気が向けられる時だけ...。」

「なら大丈夫。君は普通だよ。」

そう言って男は優しく微笑んだ。


普通。

初めて言われた。この羽のせいでいつだって異形の目で見られていた。それをこの男は普通と言ったのだ。

「あなたは我をその、気味悪いとは思わないのか...?」

そう言うと男は笑って、

「何故?君は至って普通だよ」

と、我の頭にぽんっと手を置いて撫でた。男はニコニコとしている。私はというと思考がうまく回らず、ぽかんとしていた。

「さあ、もう納得しただろう?これを食べなさい。」

そう言って再び私に食べ物を差し出す。今度はそれを受け取った。


『君は至って普通だよ』

その言葉がたまらなく嬉しかった。




「私は咲夜( さくや)。君は?」

「我は夢瑠( むる)。」

貰った食べ物を頬張りながら答える。胃袋っていうのは欲張りで、少し胃に食べ物を入れたらもっと欲しいといわんばかりに腹が鳴り出す。

そのためか、私が食べ終わるとすぐに咲夜さんは新しい食べ物を差し出してくれる。

「あの...ありがとう。とても美味しかった」

「どういたしまして。それだけ食べれたならもう大丈夫だろう。」

咲夜さんはさっきからずっと私の隣に座ってニコニコとしている。何がそんなに嬉しいのだろうか。いやそもそも...

「咲夜さんはどうして我を助けてくれたのだ?我を助けてもあなたに何も得なんてないのに...」

得どころか損なのではないだろうか。我は咲夜さんに何もしてあげれない。足を引っ張るだけだというのに。

んー、と咲夜さんはしばらく考えたあと、

「別に、ただ気が向いただけだよ。深い意味なんてないさ。」

と、苦笑した。

何か触れられたくない理由でもあるのだろうか。私はそれ以上何も聞けなかった。


「さて、それではそろそろ行こうか。」

咲夜さんは急に立ち上がりそんなことを言い出す。

「行くって...どこに?」

「ここじゃない所だよ。そうだなぁ...流石に里には連れて行けないから彼処辺りがちょうどいいかな。」

咲夜さんはぶつぶつと何か言っているがそれより、

「どうして...」

「分かるだろう?君はここでは生きていけない。なら生きて行ける場所に移るしかない。」

生きて行ける場所。

そんなところが本当にあるというのだろうか。この我が。

咲夜さんのように我を受け入れてくれる者が他にいるのだろうか。実の母親にすら受け入れられなかったこの我が...。

困惑している私の頭を咲夜さんがそっと撫でる。

「大丈夫。君の居場所は必ず私が見つけてあげるよ。だから君は何も心配しなくてもいい。」

そういって微笑んだ咲夜さんの声に、その赤い瞳に嘘偽りはなかった。


本当にこの人なら我の居場所を見つけくれると確信を持って言い切れる。でもその場所にあなたは....

私の言おうとしていることが分かったのか、咲夜さんは申し訳そうに笑う。

「ごめんね。でも時々は様子を見にいくから。」

そんな顔をされたら何も言えない。いや、そもそも言うことなんて何もなかった。もう十分すぎるほど良くしてもらった。何も言えるわけない。

でもひとつだけ。

「ひとつだけ、本当にひとつだけお願いが...。」

「なんだい?」

言うか迷った。厚かましい。こんなこと頼むべきじゃない。

でもこれだけは言いたかった。

「あの....兄者と、呼んで...いい?」

咲夜さんは驚いた顔をしている。ああ、やっぱり言うべきじゃなかった。

でもー

「うん、構わないよ。私も君を、夢瑠を妹と思うことにしよう。」

そういって咲夜さんは、兄者は私に微笑んでくれた。

途端( とたん)、溢れ出る涙が止まらくなった...。




それからというものの、兄者に連れられてやって来た此処、賽ノ地( さいのち)でずっと暮らしている。

此処での暮らしは以前の食い逃げ生活とさして変わらない。

ただ以前のように目的もなくふらふらすることはなくなった。気の合う悪友のようなものもできた。以前のように忌み嫌われるようなことはなくなった気がする...。

本当に兄者は我の居場所を見つけてくれたんだな...。

その兄者はいない。でも寂しくはない。何故ならまた必ず会いに来てくれると確信を持って言えるから。

「でも早く会いたいな」

そう呟いた時だった。

声がした。

忘れられない、あの声が。

「夢瑠」

私は涙を浮かべながらその声の元、兄者の元に駆け出した。

緋花李さんのところの咲夜さんをお借りしました。咲夜さん、キャラこんなんでよかったのか心配ですが;;


ここから思いついただけ書き込んだ設定っぽいの。


夢瑠の瞳の色は普段天色あまいろだけど何かの命を故意に奪う時、夜叉のような赤い瞳になる。でも本人は自覚していないらしい。

母親は生粋の鬼。夢瑠を気味悪がって殺そうとしたが逆に殺される。

父親は不明。夜叉ではないようなそうでもないような。曖昧。

夢瑠が生まれた直後ぐらいから行方不明らしい。


咲夜に出会った時から咲夜の事を兄者と呼び慕っている。咲夜の赤い夜叉の瞳を見ると心が落ち着くらしい。それは単に助けられた事を思い出してなのか、己が隠し持つ赤い瞳が関係しているのかは不明。


基本的には賽ノ地で食い逃げを生業?として生きている。たまに咲夜が賽ノ地を訪れるとそっちにべったり。


赤い瞳になる時、理性は飛んではない。むしろいつも以上に冷静に物事を判断している。


基本戦わず逃げ専門だがいざ本気出すとかなり強い。一応鬼だし。

本気を出すタイミングは今までは自身の身の危険が迫ったときだったがこれからは大事な人のも含まれるかもしれない。





ここまで読んでくださりありがとうございました!!




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