七話
「ええ!?だ、駄目だよ!!」
白兎の叫び声になんだなんだと周りは注目する。その鬱陶しい視線に眉を寄せる。
すると白兎は何を勘違いしたのが涙目になった。女共の視線が痛い。
「…何を勘違いしてるのかわからないが、周りの視線が鬱陶しいからだ。白兎の所為じゃない。
それと俺を思ってくれてるなら、いつも世話になってる俺いくらいさせてくれ。」
「でも…。うー。」
悩み始めた白兎。仕方なく俺は頼み込むことにした。
俺は白兎のローブを軽く引っ張り、それに気が付いた白兎と目を合わせる。
そして「白兎、頼む…。」と話している途中に鼻血を垂らし始めた白兎。…え?どうしたんだ?
勿論その原因が幼い行動と身長差の為にうまれた上目使いなどとキョウは知る事はないだろう。
何故か鼻を片手で押さえながらサムズアップをした白兎に首を傾げる。
すると「ぐはっ!」と鼻血を更に撒き散らした白兎。いや本当にどうした?
しばらくしてようやく落ち着いた白兎は何故か凄く爽やかな笑みを浮かべていた。
「じゃあ宿を探そうか。お言葉に甘えてきょーやが宿代払ってね。」
「ん。えっと、どこにするか?宿か…初めて泊まるな。」
「…もしかして、また寝てなかったの?」
白兎は悲しそうな顔をした。俺は勿論「きちんと二時間寝たぞ。」と否定した。
「それは寝たとは言わないよ!もう!きょーやはぼくがいないと駄目なんだから!!」
怒ってるような顔をしているが雰囲気が何処となく嬉しそうな感じがするのは気のせいか?
まあ、どうでもいいか。それが嘘であれ、白兎との関係は壊れることはないと確信してるからな。
「…っと、何処がいいって、一番おすすめなのはやっぱり真心亭が良いと思うよ。お金がかかるけど…。」
「よし、そこにしようか。道が分からないから案内してくれないか?」
それに白兎は嬉しそうに道案内をし出した。
そして約数分談笑をしていたら着いたらしい。白兎と何故か手を繋いで入る事になった。
ちりりんちりんっと音がして開く扉と「いらっしゃいませー。」と声が聞こえてきた。
「ご利用人数はお二人でよろしいでしょうか?」
「はーい。」
白兎がまるで幼い子供のような返事をした。それに店員は微笑ましそうに見つめていた。
そして俺に目を向けた途端に目をそむけ、わざとらしい咳を一つついた。
「お泊りする期間は何日でしょうか?」
「一日だ。」
「そ、そうですか。では2000Gです。…確かに頂きました。部屋番号は102です。」
そう言って白兎には頬を染めて鍵を握り込ませるように渡した店員。
白兎は笑ったままだが若干頬が引き攣ったのが分かった。何故だ?
しかし考えようとした俺を引っ張って部屋に連れ込んだ白兎。
「まったく…。あーあ、ほんっとうにありえない!あんなに媚売った目して気持ち悪い!
…ねえ、きょーやもそう思ったでしょ?ね?ね?」
嫌そうな顔をしてから少し心配そうに俺を見つめる白兎。
…白兎は名前の通りに寂しくて死んでしまう兎のような気がする。もしくは子犬。
「…まあ、媚を売ってる奴はあまり気に食わないしな。」
そう言うと安心したような顔で笑った白兎。
しかしふと白兎は笑みを消して「そういえば…。」と喋り出した。
「きょーや。さっき言ってたよね?『後で教える』って。ねぇ教えて欲しいな。」
「?…ああ、それか。その前に、白兎の属性は何種類ある?」
それに若干困惑した様子を見せる白兎だったがすぐに宙に目を走らせ出した。
多分確認してくれているんだろう。白兎は本当に優しいよな。
「んっとね…。無・火・炎・水・氷・土・大地・風・雷・光・闇・治癒だよ。
でもなんでいきなりそんなこと言いだしたの?」
「俺の属性は無・火・炎・水・氷・土・大地・風・雷・光・闇・龍・治癒・神属性・創生・古代・空間なんだ。」
すると固まった白兎。やはり少し多かったか、と思っていたら肩を勢い良く掴まれた。
白兎の顔を見上げたら何処か興奮している様子だった。
「凄い凄い!!きょーやってば全属性持ってたんだね!流石きょーや!!」
そのまま抱き着かれるが抵抗はしない。慣れだ、慣れ。
しばらく女のようにはしゃいでいたが徐々に落ち着きを取り戻しだしたのを見計らって離れるように言う。
すると渋々ながら――何故渋々なのかわからないが――離れた白兎。
「…で、先ほど言った属性の中に創生があるだろ?それで服を造り出す事が出来るんじゃないのかと思ったんだ。」
「なるほど。」
白兎は納得した様子を見せた。その後に造ってる姿が見たい!と駄々を捏ねられた。
失敗しても構わないのかと聞くと大きく頷かれたために白兎には一緒にいてもらう事にした。
俺のが成功したら、白兎の服でも造ってやろうかな?