十三話
※今回はお話の一部に大量の効果音があります。ご注意ください
しばらく喚いていた老人は徐々に落ち着きを取り戻したのか喚かなくなった。もう少し喚いていたら喉を潰す所だった。
え?それじゃあ最悪死ぬって?知るか。うるさい方が悪い。
「…ゴホン。すまぬ、取り乱してもうた。」
「大丈夫だよー。」
俺が『全くだ』と言おうとしたら白兎がそう笑いながら言った。
多分俺が言おうとした事を遮ったんだろう。伊達に仲良くないって事だな。
しかし、白兎の言葉にホッとした様子の老人は馬鹿だと思う。
何故そう簡単に信じられるのかが理解できない。
「で?いきなり攻撃したのが洗礼なんだろ?だったら俺たちは合格なのか?
……それとも、不合格か?」
手をポキポキ鳴らしながら威圧してみたら真っ青にして震えだした老人。
そしたら白兎が俺を宥めてきたために威圧するのをやめる。
「ご、ごご合格でございます!どうぞお好きな商品をお取りくださいぃ!」
その言葉に俺はさっさと踵を返して劇薬の入っている瓶を手に取る。
そして劇薬の入った瓶を持ったまま様々な商品を鑑定し始める。
色彩鳥のマント レベル7
目に痛いド派手なマント。貴族の中で流通している。
「……確かに、目に痛いな。」
そのマントは色彩鳥の腹の部分の羽毛を使っているのかピンク、赤、青、紫、黄色、金、銀…と言った感じだ。地味な色をくれ。
それならまだ良い。…良くはないか。まあ、それは置いておく。
この様々な色は全て、ヴィヴィッド色なんだ。ふざけんな。
何の為に色彩鳥は見るたびに瞬殺してすぐさまアイテムボックスに入れてると思ってるんだ。
俺はすぐに目を逸らした。そして目に映ったものに違和感を感じた。
そこには何もない…。いや、何かある。
俺はそっちに向かって歩きはじめる。そしてそれに老人は顔色を変えた。
「ま、待つのじゃ!!」
俺はその言葉を無視してそこに辿り着く。そして手を掛けようとした。
しかし、その瞬間嫌な予感がして瞬時に手を引く。
俺はアイテムボックスから石ころを取り出す。何故持ってるか?それはあれだ。武器になるからだ。
俺は良く前の世界でも熊狩りをしていた時に使用していたからな。
…楽しくて毎回蜂の巣にしてしまうが。まあ、それはどうでもいい。
つまり、石も武器になりえるからアイテムボックスに入れている。ついでに俺特製だ。
何故かオリハルコンが毎回できるがオリハルコンって石ころみたいな価値だったんだな。異世界に来て初めて知ったぞ。
ともかく、俺は石ころを撃ってみた。
バギュッガガガガガガッ
例えるならばそんな音が聞こえた。どうやら強力な結界が張っているらしい。
そしてこの結界は触れた物を消滅させる力があるらしい。恐ろしい物だな。
ついでに結界に守られているのは扉らしい。興味があるから俺は続けることにする
バキュンッガガガガガッバキュンッガガガッバキュンッガガガガガガガッバキュンッガガガガガッ
先程と合わせて五回も撃ったのにまだ結界は破れない。凄いな、と血が騒ぎ出す。
生きているわけでもないのに。…もしこれが生き物だったら面白かったのにな。
俺は少し準備運動をする事にした。そして俺は構えを取る。
そう、ただ殴ってみようと思ったんだ。だが触れた物を消滅させてしまう。
「……だったら、消滅させられる前に…効果が発揮される前に手を放せばいいだけだ。」
俺は試しにコンマ一秒に満たない速さ程度に抑えて殴りつけてみる。
何かに触れた感触はしたがそれだけだった。どうやら大丈夫らしい。
俺はにやりと笑った。突破口を見つけたからだ。
「つまり、これはヌルゲーってことか。」
俺はただただ殴り続けた。勿論認知される前に手を離しているために一回も結界の効果は発動されていない。
だが、やはり破れる事はなかった。どうやら自動修復も備わっていると思われる。
だったらと試しにコンマ一秒で三十六回殴ってみた。少し罅が入ったがまだまだらしい。
次は少し遊んでみようと思い、九十八回殴った。すると大部分に罅が入り、消えたり現れたりするようになった。
しかし、徐々に罅が直っていくのと同時に消える間隔が長くなっていった。
今度は少し本気で遊んでみる事にした。百八十六回殴ってみた。
すると甲高い音がして結界が壊れたのが分かった。
「な…なんじゃと!?」
俺はそういえば白兎と老人がいた事を忘れていた。
まあ、何をするわけでもなさそうだったから忘れるのも仕方ないと思う。
白兎は寄ってきたと思ったら両手を確認された。傷一つないのを確認されると白兎は眉を吊り上げた。
「大丈夫!?いや大丈夫なんだろうけど!!けど危ないでしょ!メッ!」
「……俺は聞き分けのない幼児か?」
それに対して白兎は聞いていないのか「まったくもー!」と怒っている。
俺はなんとなく老人を見てみたら、老人は真っ青な顔をして震えていた。
そして俺が見つめているのに気が付いたのか肩を跳ねさせ更に震えはじめた。
「お、お主に中にある物を譲ろう!!じゃから命だけは…!!」
何だこの老人。まるで俺が盗賊みたいな言い方じゃねぇか。
まあ、中にあるものを貰えるなら今の言葉は聞かなかった事にするか。
その異常な強さに怯えていたことなど知る由もない主人公であった。あな恐ろしや。
それはともかく、中には何があるんだと思い、俺と白兎は中に入ってみる事にした。