一話
2014/3/18修正
俺は今、すごく興奮している。それはとあるVRMMOが発売されたからだ。
そのVRMMOの名前は【SURVIVAL WORLD~力が全ての世界で君は生き残れるか!?~】という物だ。
力が全て、とは書いてあるが、なにも殺す力だけじゃない。
別に殺しをしろという訳ではなく、名前だけが少し物騒なだけだ。
農業をやってもいいし、騎士団に入ってもいい。冒険者になったって構わない。
上手くいけば宮廷に仕える事が出来る。拒否権も勿論ある。…もし現実だったら無理矢理でも使えさせられるだろうが、まあそこは気にしない方向で。
それは置いといて、ようやくプレイできると意気揚揚に準備をして開始する。
まず、全体が白い部屋にいた。そこには俺と無表情な美女…NPCがいた。青い髪と青い瞳。正しくファンタジーだ。
「初めまして。まずは貴方様のお名前を教えていただけますか?」
でももう少し声に抑揚をつけてもらいたかった気がするが…わざとこうしたんだろうと納得する。需要ありそうだしな。
とりあえず俺は少し名前を考えることにした。
俺の名前は御剣 恭弥。仰々しい名前だが俺は一般庶民だと自負している。
何故か唯一の友人からは「きょーやっておかしいよねー」とよく言われるが失礼だよな。
たとえトラックに当たりトラックが宙を舞い、その吹き飛んだトラックに走り寄り片手で受け止め、周りからは化け物を見るような目で見られたとしても一般人だ。
たとえ三十階ビルの屋上から人が飛び降りようとしたのを庇って代わりに俺が落ちて無傷(コンクリートに埋まった)で周りから化け物を見るような目で見られたとしても一般人だ。
たとえこの凶悪な眼つきで目があった不良に失神される、もしくは急にラリられたとしても、8で9で3の人ですら少し目を細めるだけで逃げられる、失神される、もしくは急にラリられるとしても一般人だ。
……話がずれた。俺の名前を文字ってキョウにでもするか。
「キョウ様でよろしいですか?」
俺はそれに頷く。すると今度は目の前にメニュー欄にあるステータスのようなものが現れた。
NPCは「ステータスを振り分けしてください」と言った言葉に俺はどうするか決める。
ポイントは100ptで、その中から好きなように振り分けできるようだった。
しばらく考えてもいい案が思い浮かばなかったため、適当に振り分ける。
キョウ
レベル 1
種族 人間
HP 10
MP 5
STR 100
DEF 0
VIT 0
DEX 0
AGI 0
INT 0
CRI 0
LUK 0
こうなったが、別に後悔はしていない。防御力が紙だが当たらなければ意味がないだろう。
それに別に0でも本当に一撃当たるだけで死ぬという訳ではないし。
このVRMMORPGは、少し特殊で、現実世界でのステータスが反映される。
何が言いたいかと言うと、現実世界での自分の体力魔力攻撃力防御力etc.は数値化されないだけという事だ。
数値化されないだけで0という訳ではない。俺の場合、防御力は大体5くらいか?数値化されて無い為よくわからないが、初期のモンスターでは一撃では倒されないだろう。
「これでよろしいですか?」と言う声に俺はまた頷く。
「次に属性の適性を見ます。」
その言葉が開始の合図のように俺の足元から光の輪がゆっくりと上へ上ってくる。
数分掛けてようやく終わった。そしてまたもメニューのようなものが現れ、そこには【適正された属性】と書いてあった。
属性
無・火・炎・水・氷・土・大地・風・雷・光・闇・龍・治癒・神属性・創生・古代・空間
うん、普通だ。誰が何を言おうとも普通だ。決してバグっているわけでもないだろう。
NPCは相変わらず平坦な声で「では以上をもちまして設定は終わりになります。」と言う。
「それでは【SURVIVAL WORLD~力が全ての世界で君は生き残れるか!?~】をお楽しみください。」
光に包まれて目を閉じる。光が収まって目を開けるとそこは中央に噴水があるかなり広い広場のような所だった。
そこには既に何百人とPCであろう人たちがいた。
体を動かそうとすると鉛のように重たい。が、動かせないほどではないらしい。
周りは何故か動ける俺を見て驚いていたが、何故だ。そして目があった瞬間目をそらされた。解せぬ。
「お、お前、何で動けるんだ?つーかどうやって動いてるんだ?」
「いや、確かに体は鉛みたいに重たいが、動けないほどじゃない。」
するとやはり化け物を見るような目で見られる。が慣れたためにスルーする。
その間にもぞくぞくとPCの数は増えていき、突然≪ジリリリリリリリリッ!≫と音がした。
≪やあやあ!始めまして!突然だけどみんな大好きデスゲームはっじまっるよー!!≫
デスゲームと言う単語に周りはざわめき、声の主に困惑した声、怒りの声を浴びせる。
しかし声の主は気にした風もなく収まるまで下手糞な鼻歌を歌っていたがそれが余計に怒りを煽るのだろうと予想する。
≪ようやく収まってきたねー。…あ!そうだそうだそうだった。すっかり君たちに言うの忘れてた。
よくある小説みたいに元の世界に戻れるわけじゃないから。だって君たちもう死んでるし?あはは!
でもさ、この世界の死は本当の死っていう所は同じだけどね。
んー、もうそろそろこの世界に干渉できなくなっちゃうなぁ…どうせだったらボクもプレイすればよかったかも
それとお金あげるからそれで何か買えば?と言ってもたったの100Gだけだけどねー!あはははは!!≫
なるほど、俺も死んだのか。別に悲しくはないが。
声の主は「そろそろこの世界に干渉できなくなる」と言っていた。
俺は少し体を動かして首を動かして周りを見ると時間が止まっているかのようにPC以外の人型――多分この世界の住人――たちは止まっていた。
≪!?うっそ!?なんで君動けるの?!凄いよ!本来であれば一歩どころが視線以外動かせないのに!≫
俺が動いたことを目ざとく見つけたらしい声の主は喜色の色を乗せた声でそう言った。
そして周り…俺の横と俺よりも後ろにいた奴らが俺を凝視している。
とりあえず無視しておくか、と素知らぬ顔をする。すると声の主のため息が聞こえた。
≪もう、つれないなぁ…。ま、いいや。ボクが言いたいのはこれだけだよ。
ああ、今は時間を止めてるけど、そろそろ時間が動き出すから。
動き出しても騒いでたら騎士団とかに捕まっちゃうから。
それと、掲示板とかフレンド登録とかメールとかは使えるから安心しなよ。じゃあね~。≫
その声が終わった瞬間、周りが騒がしくなる。どうやら時間が動き出したようだった。
周りは別の意味でざわざわしだしたが俺は気にせず早速魔物狩りに出かけることにした。