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ルーカス先生たちに会わせるのがシホちゃんのおばあちゃんじゃなくていいの? って話になったけど、シホちゃんのおばあちゃんは「もうアタシは先も長くないし、あんまり活動的じゃないから良いさ」とのことです。でもシホちゃんのおばあちゃんは活動的だと思うな、お家で仕事してるしドライブ好きだしお友達と遊びに行きまくってるみたいですし。
シホちゃんは否定しませんでした、もう諦めたのか、それとも巫になるのが嫌じゃなくなったのでしょうか?
“幻想”的に良い変化ですけど、“現実”的にはこの変化はどうなんだろうね……。彩萌は幻想寄りの人間なので、良い変化だなって思います。
まあどちらにせよ不思議な力とは向き合わなければならないので、現実寄りでも魔法との“縁”は切れませんけども……。
まあそんな感じの事を考えながらね、ルーカス先生の家に行くために彩萌はディーテさんと手をつなぎながら歩いていたわけですよ。ちなみにグラーノさんは駄々っ子になってたので、ゴマフアザラシの赤ちゃん状態になってもらって抱っこすることでこの問題をクリアーしたわけです。ディーテさんと手をつないだら、ちょっぴり不満そうでしたけどね。
ミギー君は彩萌と一緒に帰るので、もちろん一緒に居ますよ! アムリールさんはお家に帰っちゃったけどね!
というか、ルーカス先生はまだ仕事中じゃないの? 家に居なくない? 虫の報せ的な感じで家に帰ってたりするの?
「――懐かしい光景ですね、まるで“魔法が使えない彩萌”が戻ったかのようです」
夕闇の巫さんがボソッと呟いたのです、彩萌がちょっぴり透き通ってる姿を見上げれば彼女は寂しそうに笑うのです。
きっと……本人は意識してないんだろうなーって思います、その顔はとっても寂しそうでした。たぶんだけど……夜の精霊のりっちゃんが言うムカつく顔とはこの表情だと思います。
「“魔法が使えない彩萌”は最初から居なかったんですよ、彩萌は“アヤメ”だけだったんです」
だって彩萌は“あやめ”だったけど、“アヤメ”ではなかったのです。
少しの間だけ代わりをしていたけど、やっぱり別物だったのです。だって、彩萌は夕闇の巫さんみたいに巫の仕事できませんしー。
「大丈夫ですよ、シホちゃんとか白雪さんとか上悪土さんが友達になってくれますよ! だからもう“無意味なこと”って言わないでくださいね」
「別に、友達がいないからそういう事を言ってたわけじゃないけど……」
彩萌が「でも夕闇の巫さん友達いないですよね?」って言っちゃったら、夕闇の巫さんは何も言えない感じになっちゃってました。
一人ぼっちは寂しいです、ネガティブになっちゃうし良いことないですよ。人には愛情とか友情とか、必要ですよ。
「彩萌は……私は、ずーっと“アヤメ”の友達ですよ、死んでも生まれ変わっても友達です、忘れてもまた友達になれば良いんです」
彩萌がそう言えば、夕闇の巫さんは少しだけ悲しそうな感じの顔になっていました。なんで悲しそうなのさー、友達だよ? 彩萌と友達になるの嫌ですか?
そんな夕闇の巫さんを見て、ディーテさんは彩萌と繋いでいた手を放して夕闇の巫さんの肩をポンって叩いたのです。
「お兄さんも仲間に入れてくれると嬉しいなぁー、ほら……お兄さんには巫がいないから、寂しい思いをしているんですよ?」
「ディーテさんは新入りだからしょうがない、それに夕闇の巫さんは彩萌の巫さんなんですよ! 正確に言うとウェルサーだけど、彩萌がウェルサーですからね!」
「じゃあお前には私の巫をやるから……だから、彩萌ちゃん……私を仲間に入れてほしいな」ってグラーノさんが照れながら言ったけど、駄目です。夕闇の巫さんは彩萌の巫さんです、前世からそう決まってるのです! たぶんだけど、仲間に入れるのは山吹君とりっちゃんだけです。黒色同盟です、なんか……ちょっとだけカッコいい気がする。
彩萌は夕闇の巫さんの手に触ってみたのです、そうしたら透き通ってたけど触れたので……手を繋いだのです。振りほどかれたり嫌がられたりしなくて彩萌はちょっと安心しました。
夕闇の巫さんは見上げればちょっぴり泣きそうになっていたので、彩萌はにっこり笑って見せたのです。
「彩萌はなーんにも気にしてませんよ、死んでもいいって言われたこととか前世とか何回もリセットして……その間に何があったかなんて、彩萌は夕闇の巫さんが何度も謝ってくれたから……だから――ぜーんぶ忘れちゃったの!」
彩萌は誰かが泣く瞬間を何度も見ているけど、ゆっくりじっくり見るのは初めてでした。
じわーってゆっくり涙が滲み出てきて、でも夕闇の巫さんはそれを見せたくなかったのかすぐに消えちゃったんです。
彩萌は笑ってほしかったんですよ、泣かせようとは思ってませんからね……。でも、嬉し泣きなら嬉しいです。
「私は、きっと――永遠に忘れられないです」
「うん……関係ないことなんですけど、姿を消してもお喋りできるんですね!」
「……本物の神様には、敵わないですね」
泣きそうな声で夕闇の巫さんが言うのです、でも彩萌はもう神様じゃないですけどね。
夕闇の巫さんはすぐに姿を現したのです、ちょっと目元を拭っていました。少しスッキリした表情をしているような気がします。
夕闇の巫さんの手を繋ぎなおして前を向いたらね、シホちゃんとライちゃんがガッツリこっち見てました。ライちゃんがすっごい良い笑顔してました。
そしてレジーナさんは苦笑いをしていました、まるで保護者のような立場ですね。
「ウェルに名前上げてもらえなかったけど、俺も友達になりたいな」
「今日会ったばっかりだけど、私も仲間に入れてほしいわ……ダメかしら?」
「あっライちゃんレジーナさんごめん、年が離れてたから……つい」
彩萌が謝れば「分かってるよ」ってライちゃんは笑ってくれました。ありがとうライちゃん。レジーナさんもね、笑って許してくれたのです。
シホちゃんは少し恥ずかしそうに視線をそらしてね、そっぽを向いたんですよ。
「まあ、何があったか知らんけど……お前と組んだら関西人にも負けへんような気がすんねん」
「関西の人と張り合いたいんだったらまずその似非関西弁を止めるとこから始めようか、目指すなら天辺だけだから」
「おぉ……ボケを選ぶと言うんなら容赦なくツッコんで行くからな、時には頭もぶっ叩くからな!」
「望むところだヤンキー被れめ」って言って夕闇の巫さんは笑ったのです、元気になったみたいで良かったです。
歩き出せばね、ミギー君が近付いてきたのでニコって笑っておきました。ミギー君も笑ってくれたのです。だから彩萌はグラーノさんに歩いてもらうことにしてミギー君と手を繋ぐことにしました、彩萌とミギー君も友達なんだぞ。二人で友達っていいねって話しながら、みんなでルーカス先生の家に向かうのです。
白雪さんとか上悪土さんとも仲良くなれれば良いね。
「ミギー君、彩萌がウェルサーだったのは絶対秘密ですからね」
「分かってるよ、だって友達なんだろー? 親友の秘密は簡単に言っちゃいけないんだぜ」
「親友! 彩萌とミギー君はもう親友ですか、嬉しいです!」
「理の世界に行くなんてすっげー体験できたのもアヤメのおかげだしな!」ってミギー君は言うのです。彩萌はとっても嬉しいです。
「僕は将来イクシィール先生みたいな……理世界科学とか魔法工学とか勉強して、冷蔵庫とかゲームとか電話とか作りたい、作る!」
「ふわっとしていた将来の夢がはっきりしましたね! 彩萌は山吹君のお嫁さん……じゃなくて魔法薬学とか勉強したい」
なんだか……ミギー君は少し大人になったようです。体とかじゃなく、雰囲気とかの話です。
ミギー君はふーんって言ったけど、そのあとに「ねぇ山吹君ってもしかしてリディー先生のこと?」って聞いてきたのです。ミギー君……するどい。
もしかしたらミギー君が嫌な気分になるかもしれないと思い、彩萌がワタワタしてたらミギー君は笑ったのです。
「彩萌の言う好きはなんか……生物的? っぽくないから別にへーき!」
「えっそうですか? というか生物的な好きってどういうの……?」
彩萌の質問にミギー君は「よく分からん」と返してました、よく分からんのか……そうなのかー、でもよく分からんから好きじゃないらしいです。
彩萌の好きは生物的っぽくないのか、じゃあ彩萌の好きはなんだろう。子供っぽいってことなのかな。
そんなことを話していたらルーカス先生の家に着いたのです、ピンポーンってチャイムを押して出てきたのは白雪さんでした。白雪さんはライちゃんを見て、少し驚いたような表情をしたのです。そしてライちゃんは目を細めて静かに笑ったのです。その笑顔を見て、白雪さんも少しだけ嬉しそうに笑ったのです。
……もしかして、知り合いなの? やっぱり知ってたの? 白雪さん知らない演技をしてたの?
えー、マジかよー白雪さん演技してたのかー……騙されたよー。
「レジーナさん、紫帆さん、こんにちは、初めまして……そしてお久しぶりです夕闇の巫の叶山さん。無事に帰ってこられたようで……少し残念です」
「あーごめんなさいねー、無事に帰ってきてしまいまして!」
夕闇の巫さんは白雪さんの発言にイラッとしたのか、珍しく声を荒げていました。そんな夕闇の巫さんを治めながら、レジーナさんとシホちゃんが白雪さんに挨拶していました。
ルーカス先生はやっぱり帰ってきていないようです。
白雪さんは人数分のスリッパを出してくれたのです、あとディーテさんとグラーノさんに挨拶していました。
そして、みんなを中に案内してくれたのです。テレビの前では上悪土さんが居て、ゲームしていました。
お茶を淹れますって言ってキッチンに行った白雪さんに彩萌はついて行ったのです。
「白雪さんはライちゃんと知り合いだったの?」
「もうすでに彼の事はご存知ですよね? 実は先代の雪の巫に出会う前……僕は寝の国に居たのです」
「神子の体とウェルサーの魂が崩壊しないように守っていたのです」って白雪さんは言ったのです、彩萌はびっくりしすぎて何も言えませんでした。
白雪さんって、すごい魔物だったんだ……。というか彩萌とかを守っていてくれてたんだ……ありがとうございます。
「僕は前世でも雪の巫でした」
「えっ、じゃあ雪の巫さんになるのは二回目なの?」
「そうなりますね、僕が一番最初の雪の巫でした。前世での僕は世界が崩壊してしまうと知って、ウェルサーを生き返らせなければならないと思ったのです」
「ですが……僕では生き返らせることが出来なかったのです。だから僕は消滅しないように魂を守ろうと思い寝の国に留まったのです」と、白雪さんは呟くように言いました。
白雪さんはその時に魔力を全てをウェルサーに捧げたらしい、その所為で命を落としているらしいです。だから巫の力を他の人に継承することが出来たらしいです。
そうだったんだ……ごめん、彩萌の所為で肉体無くしちゃったんだね……。
「僕がこちらの世界に来られるようになったのは、フェーニシア様の魂を守る必要がなくなったからなのです。この世界で貴女は予言通り消滅し、そして復活をなされた」
「えっ、彩萌ってずっと白雪さんに魂守ってもらってたの?」
「魂が歪んでしまったら、それはもう女神ウェルサーではないですからね」
「世界にはウェルサーが必要だったんです」って白雪さんは笑ったのです。
白雪さん……ありがとうございます、彩萌なんかよりも白雪さんの方が女神様だよ。すごいよ。
でもそれって割と最近の話じゃないの? いつ先代の雪の巫さんに会ったの? って聞けば、白雪さんは彩萌が生まれるちょっと前に神様にお守り役をしなくて良いよって言われてこっちの世界に来たらしいです。
……えっ、それって神様は今回で世界の歪みが全て戻されるって知ってたの? えっ、神様ってやっぱりすごいな……神だね。
そんなことを考えていると、白雪さんは真剣な表情になったのです。
「貴女はこれから寝の国に行かれるのですよね、寝の国にはウェルサーが暮らした家が残っているはずです」
「ちゃんとウェルサーの家があるんですね、人らしい暮らしをしてたんですね……」
「そこには“親愛なるフルールフェニアに”と書かれた手紙があるはずです、貴女はそれを読まなければいけません」
フルールフェニア……? フルールは最後とか最期って意味だから、最後のお友達って意味ですよね? えっ、フルールフェニアって誰なの? ディーテさんはリィドフェニアだし……山吹君は憐れな片方って言われてるし、ライちゃんのことでもなさそうだし……誰のことなんだろう?
「ウェルサーが寿命のある生き物になり、精霊と別れて一人で暮らしていた時の貴女を守ろうとしてくれた人の事ですよ」
「そんな人がいたんですか……!? うわーそんなことも忘れてたなんて、彩萌は地味にショックです……」
「忘れてしまうことをフェーニシア様は分かっていましたから……だから、手紙を残したんですよ」
でも……どうしてそんな人のことが聖書には書かれていないんだろう?
そういえば……ウェルサーが寿命のある生き物になった後の話って死ぬちょっと前しか書かれてなかったです。国の近くに住んでたウェルサーにユーヴェリウスが「Deirûagârua sînonanan, eniôru a dein'a, kure a garêsyuno kure a garêsyuno fuanitefurêsyuto」って言うんですよね。
あ……でも、おかしいです。エニオールァディンアって味方が亡くなったって意味なんですよね。もうすでにディーテさんが亡くなった後だし、ユース君のセリフって、味方が亡くなっちゃったから早く逃げて! って意味だからこの言葉はディーテさんを指していると考えるとなんか変です……。読んでるときは気が付かなかったけど。
でも……これがディーテさん以外の人を指していたとしたら、納得できます。ユース君はフルールフェニアのこと……知ってるのかな。
それによく考えたらウェルサーってディーテさんと同じ墓に入るって言ったけど、別にすぐ死ぬつもりじゃなかったんだよね……。彩萌と違ってウェルサーは魔法が使えてたっぽいのに、どうして兵隊さんに捕まっちゃったんだろう。だって聖書では一旦森に逃げ込んでて、馬の姿のふぇっくんに会ってるんだよね。
馬の姿のふぇっくんに会った後のことって全然書かれてなくて、すぐにウェルサーが死んで悲しむ精霊さんたちのことが書いてあるんだよね……。
「フルールフェニアのことは、精霊様には……特にムールレーニャ様とフレアマリー様とグラーノ様には言わないでください」
「えっ、なんでですか?」
「フルールフェニアは……ウェルサーを殺めた罪人たちと血の繋がりが濃い人物だからです」
あー……なるほど、ご先祖様の罪なのに無関係な夕闇の巫さんを呪っちゃうくらいだからね……。
親戚とか兄弟とかそんなレベルになっちゃったら……考えただけでも恐ろしいです! フルールフェニアは何にも悪くないのに!
たぶんだけど……ウェルサーはフルールフェニアが死んじゃって、きっと助けたかったんだと思う。助けられなくても、黒の魔力を使って来世が幸福になるように縁をつなげたかったんだと思う。だから一旦森に逃げ込んだけど、森から出てきちゃって兵隊さんに捕まっちゃったのかな……。
なんかそんな気がしてきた、彩萌の前世だけど……彩萌はそうだったんじゃないかなって予想した!
「歪みが戻されたら、きっと彼にも影響が出ると思うのです。それが何十年なのか何百年なのか何千年なのか分かりませんが……きっと、彼に影響が出る時には貴女は再びこの世に戻ってくると思うのです」
「えっ、それって彩萌はまた忘れているんじゃないですかね……」
「次は大丈夫ですよ、やり直しも何も無いですから記憶は無くならないと思いますよ」
というか彼か、男性なのか……女の子の友達が出来なかったんですね。
……もしかして、フルールフェニアは兵隊さんとかなのかな? 血の繋がりが濃い人物ですし。むーちゃん嫌がりそう。
白雪さんがお茶を淹れ終わったので、彩萌は運ぶのをお手伝いしたのです。
そしてお茶を持って行ったらディーテさんが「何話してきたのー?」って聞いてきたので、彩萌はフルールフェニアのことは秘密にしなきゃと思いながら「ライちゃんと知り合いだったのか聞いてきたー」って答えたのです。彩萌は女優ですからね、演技派なのですよ!
誰もそれを疑問に思わなかったのです、やっぱり彩萌は女優ですよ。
白雪さんと話している間にライちゃんは上悪土さんと共演OKになったのか、ミギー君と一緒に上悪土さんとゲームをしていました。そして上悪土さんはやっぱり弱くて、ムキィーって怒ってました。そんな上悪土さんをシホちゃんが熱血的に応援していました。
「白雪さんと夕闇の巫さんも仲良くなれると良いですね!」
「フェーニシア様、大丈夫ですよ。こう見えても私は彼女よりお婆ちゃんですから、孫を見るような気持ちで接しますよ」
「孫を見るような気持ちで接するって……初対面で首絞めてきたやつが何言ってるの?」
「時には厳しく締める、それが教育ってもんですよ」
「締めるの意味が違うわ!」って夕闇の巫さんが白雪さんにツッコミを入れていました、どうやら大丈夫そうです。
レジーナさんは白雪さんの淹れたお茶を飲みながら「元気でいいわねぇ……」って呟いてたので、たぶんレジーナさんも大丈夫だと思います!
というかレジーナさんって……テスさんに似てるね、時間の流れがちょっぴり遅い感じがします。
まあ……そんな感じでルーカス先生が帰ってくるまでみんなでわいわい騒いでいたのです、主に騒いでいたのは上悪土さんでした。
帰ってきたルーカス先生はとってもビックリしていました! まあ、知らない間にこんなに人が集まってたらびっくりするよね。そして彩萌を見てルーカス先生はため息をついたのです、「まーた貴女ですか……」って言われたけど、彩萌はなーんにも悪いことしていませんよ!
「ロリコンが帰ってきたね、とりあえず挨拶しておかないとかな?」
「まあ、彼は幼児趣味があるの? 現代では生き辛いでしょう、大変ねぇ……私はレジーナと申します、よろしくお願いしますね」
「そんな趣味ありません、絶対に違いますよ! 変なレッテルを張るのは止めてください!」
ルーカス先生は「よろしくと言われても、私はよろしくしたくないですけどね!」ってレジーナさんに言って、冷蔵庫に直行してました。
レジーナさんは少し気にした様子で「気を害してしまったかしら……」って言ってたけど、ルーカス先生は誰にでもあんな態度だから大丈夫ですよ!
「そう言わないでさ、仲良くしようよラッキィ」
「馴れ馴れしい、ボイスチャットをしているからと言って私と友達になったと思わないでくれませんか」
むすっとした表情のルーカス先生を見て、ライちゃんは笑いながら「火力不足でいつも困ってるくせにー」って言いながら肩を叩いていました。
そんな二人を見ながらシホちゃんが「マジで先生オンラインなん……」ってショックを受けててちょっと面白かった。
みんなの雰囲気も悪くなくって、巫のみなさんは結構仲良くできそうです。彩萌は安心しました。
少し申し訳なさそうなレジーナさんを見て、ルーカス先生は冷たくなりきれずに謝っていたのでした。
――あやめとアヤメの交換日記、七十六頁
Deirûagârua sînonanan, eniôru a dein'a, kure a garêsyuno kure a garêsyuno fuanitefurêsyuto
(ディルーア ガァルア シィノナナン, エニオール ァ ディンア, クレ ァ ガレーシュノ クレ ァ ガレーシュノ ファニテ フレーシュト)
≪穢れて嫌われた悲しい魔物、味方は死んでしまった。だから早く国から離れて、国から離れて、森に戻ってきて≫




