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あやめとアヤメの交換日記  作者: 深光
紅い糸の軌跡
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隣の席の仮面の若君

 なんか朝の会みたいなので自己紹介をするらしい、彩萌は今日何回自己紹介するんでしょうかね。

 ちょっとドキドキするけど、隣の二人がめっちゃインパクト強そうだから彩萌は大丈夫な気がしてきた。

 だってさ、まず白仮くんは仮面だし。シェリエちゃんなんてめっちゃ美人だし。

 彩萌はインパクト薄いよね、うん……とっても薄い!

 子鬼とお面と美人だったら、美人が目立つよね!

 というか白仮くんはなんでお面なんだろう、お面邪魔じゃない? むれないのかな?

 グアリエ先生に、三人ともどうぞって言われて教室に入ったらやっぱりしーんとした。

 むしろちょっとだけ困惑しているような雰囲気を感じます、だってお面と子鬼と美人だもんね。


「それでは三人とも、自己紹介をお願いしますね」

白仮頼仁(しらけよりひと)、亜人」

「シェリエ・クアノーズ・ヴァニマ、魔人」

「え……えっと、叶山彩萌です! ……えっとえっと、鬼人……?」


 なんか、流れが出来てたから同じように言ったけど……言ってから別に同じようにしなくても良いって気づいた。

 一応拍手してくれたけど、みんな微妙な雰囲気だね。

 顔をしかめてる人も居るし……なんだか不安になってきます、でも大丈夫です!

 シェリエちゃんがいるから、彩萌は大丈夫です!

 教室の中にクーリーちゃんとミギーくんは居ないから、別のクラスみたい。


「えーっと、誰か三人に質問が有る子は居ますか?」


 グアリエ先生の問いかけに手を上げる子がいたんです、その子はクールでなんかツンってした雰囲気の女の子だった。

 髪の毛長くてサラサラでキレイな赤色なの、良いなぁ……キレイ。

 彩萌キレイなの大好きだから、ドキドキする。

 良いなぁ、髪の毛きらきらしてる。

 グアリエ先生はその子を指したんです、名前はケレンさんかぁ。


「何故、白仮くんは仮面を着けているのですか? 髪を留めるためのアクセサリーや魔力を制御するための魔具以外は校則で着用を禁止されていたはずでは無いのですか? それは校則違反では無いのですか?」

「えっとですね、白仮さんには特別な事情がありまして……、制御するための魔具だと思っていただけないでしょうか?」

「それは贔屓ではありませんか、特殊な事情とはどの様な物なのですか? 私達が納得できる様な説明が必要だと私は思います!」


 真面目な人なんだね、……そっかぁ校則では禁止されてるんだね。

 じゃあ学校では王子はきらきらじゃらじゃらしてないのかな、まあ今はそんなこと関係ないけど。


「事情なら見れば分かるよ、別に隠してる訳じゃないし……僕は面なんてつけなくても大丈夫なんだけど」


 ケレンさんにどう説明しようか考えていたグアリエ先生を見て、白仮くんはそう言ってお面を外したんです。

 白仮くんの顔を見て一部から悲鳴が上がったんです、ケレンさんも顔がちょっと青かった。

 彩萌もびっくりしたけどね、だって白仮くんのっぺらぼうだったから!

 すごいつるつるだよ! 鼻も無いんだね、本当に何にも無い!

 えー、どうやって声出してるの!? 何にもないのに……すごいじゃん!

 白仮くんの顔はたまごみたいな感じなの、でこぼこも無かったよ。


「みんながびっくりするから面を着けてるだけ、顔がない種族は珍しいらしいから」


 白仮くんはもしかして笑ったのか、そう言うと本当なら口がある場所がパカッて裂けて中の赤いのが見えたんです。

 ホラー耐性が無かった人は叫んでた。うん、でもそれはちょっと怖いよね。

 というか一応口があるんだね、じゃあ本当は顔がないわけじゃないのかも……。

 怖がられるのが好きなのかな、白仮くんは怖がってる人を見て笑ってた。

 白仮くんは妖怪だね、すごいや。


「み……皆さん落ち着いてください! 別に大丈夫ですよ、白仮さんは安全ですよ!」

「大変だね」


 白仮くんはのんきにそう言います、グアリエ先生大変そう。

 女の子泣いちゃったね、ケレンさんもなんかすごい申し訳なさそうな顔してた。

 白仮くんの方をもう一回見たら、口はなくなってたけどなんか大きい目が顔の真ん中にあらわれてた。

 ぱちぱち瞬きしてた、それが白仮くんなりの感情表現なのかな。

 その後、すぐに目を閉じてぴったり切れ目がなくなった。つるつるの顔に戻ったんです。

 シェリエちゃんの方を見たら、なんか欠伸してた。

 グアリエ先生が泣き出しちゃった女の子を落ち着かせようと頑張ってました。


「……ねぇ、白仮くんはどうやってご飯食べるの? さっき出てた割れ目からご飯食べるんですか?」

「そうだよ」

「白仮くんは……何を食べるの?」

「魚の干物」

「彩萌もそれ好きだよ! 白いご飯とよく合うよね!」

「そうだね、美味しいよね」


 またパカッて裂けて、口があらわれたんです。

 白仮くんの笑顔は怖い笑顔だね、彩萌は慣れたから大丈夫だけど。

 というか、本当にどうやって声を出しているのかな……謎です!


「顔が無いくらいで驚くなんて、最近の子供は貧弱だね」


 シェリエちゃんは強いんだね……、彩萌だってちょっとびっくりしたのに。

 授業は大丈夫なのかなって心配してたけど、このクラスの今日の一時間目はグアリエ先生が担当してるクレメニスの歴史らしい。とりあえず白仮くんにはお面をかぶってもらった、見え辛くないのか聞いたら……これが顔みたいなものって言ってた。

 少し経って一応なんとか落ち着けたけど、質問する雰囲気じゃないしもう授業始めないといけないから朝の会終わり。

 本当は白仮くんは隣の席じゃなかったんだけど、隣の席の子が嫌がったから彩萌の隣になった。

 なんかみんな嫌そうな雰囲気だしてて、白仮くんがかわいそうだなって思ったから彩萌の隣を立候補したんだよ。 一番前の一番左端、でも白仮くんは気にするどころか嫌がって怖がる子を見て笑ってた。

 そういう時に笑いが出ちゃうところも……怖がられちゃう原因だと思う!

 でも白仮くんはたぶん心の広い人なんだね!

 怖がられても嫌がられても笑って許しちゃうんだね!

 我が道っていうやつを行ってるのかもしれないです、カッコいいですね!

 彩萌も笑って許せるような人になりたいです……。

 そういえばシェリエちゃんは背が高めだから、後ろの方だったよ。


「……色々と混乱もありましたけど、授業を始めます。皆さん少しずつで良いですから分かり合ってくれることを望んでいます、……できれば仲良くしてあげてくださいね。悪い子では決してありませんから」


 グアリエ先生はちょっと困った感じの笑顔でそう言った。

 グアリエ先生の雰囲気はすっごい柔らかいね、柔らかすぎて頼りないって思っちゃう子もいるかもしれないけど。

 何しても怒らなそうな雰囲気があるね……、それくらいグアリエ先生は穏やかな感じ。

 とりあえず職員室で貰った教科書を机にしまっちゃうよ、かわりにノートと筆記用具とクレメニスの歴史本と聖書出すよ。

 ちょっと幻想文字を解読するのに手間取ったけど、まあ手間取ってる姿は白仮くんにしか見られてなかったからセーフだよね。

 幻想世界の筆記用具は全部インクのやつだからね、魔法が使えない彩萌には書き直しが無理です。


「編入生も居ることですし、長いお休みもありましたから今日はおさらいをしましょうか」


 彩萌はグアリエ先生の話を必死にノートに取ります、最初は幻想文字で頑張って書いてたけど日本語で書いた方が早い。

 日本語で書いて、休み時間とかに違うノートに幻想文字で……ノートが大量に必要かもしれません。

 まずクレメニスは最初は魔人が住んでいた町だったとか、魔人と人間の間に起こった最初の戦争で負けてしまった魔人族がこの島国から逃げ出したらしい。

 クレメニスは気候が良くて、海も穏やかだから船で攻め込まれやすかったとか……。

 信心深かった魔人族は聖地を手放したけど、聖女の遺体と教えは魔人の国に持って行ったらしい。


「最初のアムシェシェレンシィアは気高き魔人の王でした、最期までこの地に留まったと言われています。聖地を穢してはならないと、全てを捧げてこの地に魔法をかけたと言われています」


「誰かを傷付けるための魔法ではなく、この地に住まう全てのものを守る魔法です」とグアリエ先生は心を込めて言います。

 グアリエ先生は、魔法とはその様に使われるべきだと思います、力とはその様に使われるべきなのですって言ってた。彩萌もそうだと思う、傷付けるために使うよりも仲良くなるために使った方が楽しいと思う!

 グアリエ先生の声が優し過ぎて、ちょっと眠くなったけど彩萌は頑張って起きてたよ。

 白仮くんは普通に気にせずに腕に頭を乗せて堂々と寝てたけど、グアリエ先生は堂々と眠ってた白仮くんにかなり戸惑ってた。

 白仮くんはどちらかと言えば夜行性らしい、だからグアリエ先生が起こすべきなのかどうか迷ってた。

 まあ起こされてたけど、お面で顔が見えなかったけどすっごい眠そうでした。

 白仮くんはすっごい不思議ちゃんだ、不思議だ。

 一時間目はそんな感じで終わりました、二時間目は算数ですってよ。

 算数の先生はおじいちゃんな先生だった、現実世界から来た人らしい。

 幻想世界の算数は、現実世界と変わんない感じだった!

 でもやっぱり説明は幻想文字だから、そのぶん彩萌は苦労した。

 二時間目の白仮くんは、なんか食べてた。

 眠気覚ましらしい……、黒い何かを口に入れてた。

 夜行性は辛いね、夜行性の人の為の学校があったら良かったのにね。

 二時間目は何事もなく終わりました!

 ちょっと難しいところがあったけど、ちゃんと頑張って幻想文字を解読したら解けたよ。

 彩萌は勉強熱心なので、休み時間は一時間目のノートを幻想文字に変える作業をしたいと思います。彩萌は他の人よりもいっぱい勉強しないと遅れてしまうからです!

 せっかく同い年の人たちと同じクラスに入れてもらったから、頑張らないといけません! というのは建前で、本当は山吹君に褒めてもらう為に頑張ります。

 休みの日に山吹君にこんなに頑張ったんだよすごいでしょーって見せびらかしに行くために頑張る。ドルガー家はなんかすごいところなので、彩萌もすごい人にならないとお嫁さんになれないかもしれないです。

 だから彩萌はどこに出しても恥ずかしくない子鬼になって、山吹君にプロポーズする!

 よし、頑張ろう!

 なんかシェリエちゃんはよく分かんないけど、色白のすごい小さい先生に呼ばれてどっか行っちゃった。

 職員室でイクシィール先生に毒吐いてた先生だった、よく見たら耳が丸くて長かったからエルフさんなのかも……。

 彩萌が意気揚々と新しいノートを取り出してたら、白仮くんに呼ばれた。


「歴史でしょ、僕にもノート見せて」

「えーっと……彩萌のノートは日本語で書かれてますよ?」

「大丈夫、日本語の方が得意だから」


 そうなんだ、白仮くんは日本語が出来るんだ。

 白仮くんの故郷は現実世界から来た日本人が教師をしていたらしい。

 けっこう日本人が居たらしい、というかその教師をやってる日本人が日本人を拾ってきていたらしい。

 文化が似てるから馴染んでたらしいです。

 白仮くんはその故郷ではちょっと偉い方のお家……らしい。

 白仮くんはクレメニスと故郷のハクボという国の交流の一環でこの魔術学園に来たとか。

 交換学生ってやつですね!


「あれ……シェリエは居ないの? というかアヤメ休み時間なのに勉強するの!?」

「うわー彩萌優等生じゃん! というか隣の席のすっごい怪しい感じだね!」


 彩萌が頑張っていたら、クーリーちゃんとミギーくんがやって来たんです。

 クーリーちゃんとミギーくんはあれなんだね、他のクラスに入るのが抵抗ない感じなんだね!

 白仮くんは顔をあげないで名前を名乗ってた、彩萌も早くやっちゃわないといけないんだった。


「ねぇ、アヤメこれ何語?」

「日本語です」


 ふーんと言いながらクーリーちゃんとミギーくんは彩萌と白仮くんの様子を観察しているのでした。

 ミギーくんはなんか……ゲームみたいなのやってたけど。

 そういうのって持ち込み禁止じゃないの? というか幻想世界(ふぁんたじー)にそんなのあったの? ってことを聞いたら、イクシィール先生が現実世界の人間から起動しない携帯ゲーム機を高値で買い取って、魔石を無理矢理くっつけて機動させたらしい。でもイクシィール先生は起動させたかっただけだから、ゲーム自体には興味が無かったらしい。

 それでイクシィール先生は携帯ゲーム機の複製を作ろうとしたらしい。でも授業そっちのけで作ろうと頑張ってたから、イクシィール先生は怒られてたらしい。

 そういうのは授業中にするんじゃないって、怒られてたって。

 それでイクシィール先生はすねたらしく、このゲームの所為だー! ってぐずってたからミギーくんが貰ってきたらしい。

 ちなみにミギーくんは魔法薬の授業で作った着色剤で机をキレイにデコレーションしたから、職員室に呼ばれてたんだって。

 本当は着色用に、もうすぐ降誕祭(こうたんさい)だからという理由でシーシープドラゴンの木製人形が用意られてたらしい。

 シーシープドラゴンの木製人形か……、しーちゃん会いたいな。

 そしてちょっと遅れてこの教室にやってきたのは机を洗ってたから、らしい。

 ミギーくん……あなたはとんでもないやつですよ。

 ちなみにその着色剤は魔力に反応するやつらしくって、色々な活用方法があるらしい。

 そしてミギーくんを叱ったのはやっぱりカルヴィン先生みたいです。

 早く山吹君に会いたいなぁ! 一番前の席だから良く見えるよ!





 ――あやめとアヤメの交換日記、五頁

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