反抗期な次期英雄様
シホちゃんのおばあちゃんの髪の毛の色も紫色でした。
年なのかちょっぴり白っぽいけど、紫色でした。着物着てたけどそれも紫っぽい。
藤色ってやつなのかな、なんかよく分かんないけどお上品です。
おばあちゃんはすっごいなんか高そうな車からおりてました、なんかてかてかしててつるつるで新品みたいな車ですね。
ちょー黒いって、一緒に窓から眺めていたミギーくんが言ってた。
シホちゃんは超お腹空いたからって、カップラーメン食べてました。
野菜も食べないと体壊しますよー、彩萌はシホちゃんがくれたお茶とお菓子とコンビニのおにぎりしか食べてないから同じような感じですけど。シホちゃんいつもこんなのばっかり食べてるのかな、それとも今日だけなのかしら。
シホちゃんのおばあちゃんはぴんぽーんってチャイムを押してから、お部屋に入ってきました。
とりあえずおはようございますってあいさつしといたのです。
にっこり笑って、はいおはようって返してくれました。
「なんだい、お前はこんなものをお客さんに出したのかい。……ちゃんと冷蔵庫に加奈さんが作ってくれた朝ごはんがあるじゃないか、まったくお前はどうしようもないやつだねぇ、反抗期だか何だか知らないけどね、食べ物を粗末にするんじゃないよ、体に気を使ったもん食べないと駄目じゃないか」
「……うっせー、そんな味気無いもん喰った気にもなんねーよ」
「バカ者が」っておばあちゃんは言って、シホちゃんの頭をすぱーんって感じで叩いてた。
けっこう力入ってたみたいです、痛そうでした。
まあ食べた気にもならんって言ってたけど、叩かれたからかレンジでチンしてたよ。
怒られたから食べるんだね、酷い反抗期ではないんですねって思ってたら彩萌にそれを差し出すわけですよ。
彩萌はそんなに食べられないんですけど、そもそもそれはシホちゃんのお母さんがシホちゃんに作ってあげたものだと思うんですけど。
お皿の上に乗ってたのは、ちょっと焦げちゃってる野菜炒めとおにぎりとスクランブルエッグとやっぱりちょっと焦げてるウィンナーでした。
頑張って作りましたって感じです! すっごい頑張ってるって雰囲気が伝わってきます!
おにぎりはめっちゃ大きいです、どう頑張っても彩萌は量的に食べられないし、お腹はそこそこ膨れてたのでお断りしました。
まあそんな行動をしたシホちゃんはおばあちゃんにすぱーんって叩かれてたけど。
「いてぇな、俺は朝からおにぎり一個とちょっとの菓子しか食ってねーかわいそうな少女に恵んでやろうと思っただけだろーが」
「全部渡す必要は無いだろうが、バカ」
「見て分かると思いますけど、俺さっきカップラーメンとコンビニの弁当食べたからお腹いっぱいなんですよねー」
じゃあなんで温めたのさ、お母さんがかわいそうじゃん。
せっかくだから彩萌はおにぎり一個貰ったよ、野菜炒めとかも一口貰ったよ。
普通に美味しいですよ、苦い部分もあるけど。おにぎりの中身はこんぶだったよ。
美味しいですよって、彩萌が言えばシホちゃんはちょっとムッとした顔をしてたけど食べてました。
「いやぁ悪いねぇ、こいつはお子ちゃまでね、バカなんだよ」
「うるせーババアー、反抗的態度は大人になるための通過点じゃぼけー」
そんなおばあちゃんとシホちゃんの会話を聞いてたミギーくんは「へぇ……そーなん」って呟いてた。
ミギーくんも反抗期が来るんだろうか、反抗期が来たら誰に反抗するんだろう。
シュガーさんなのかな、彩萌が反抗期になったらディーテさんなのかな。
よく分からん、反抗期よく分からん。
食べ終わったら彩萌のお腹はパンパンですよ、うん……もう何も入らないよね。
お昼ご飯も……いらない感じだね、うん。
「それにしても……、なんて言うか、誰がこんな事をしたのか……非常に申し訳ない」
「あ、いえ……シホちゃんのおばあちゃんが謝ることでは……」
「でもま、私はこういうの苦手だからね、何の助けも出来なくて悪いねぇ」
一時的な避難場所にしかならんね、とわっはっはって笑ってました。
豪快な人です、お上品な印象だったけどいまは普通のおばあちゃんな印象になってます。
「あ、シホちゃんのおばあちゃんは白雪ふかちくんって知ってますか?」
「白雪ふかち……白雪ふかち? 分からんねぇ」
「巫の皆さんは知り合いとか、仲が良い訳じゃないんですか?」
「そうだね、外国の人も居るからねぇ……」
そうなんだ、それは寂しいね……。
精霊さんたちはけっこう仲良いのになぁ……巫さんたちも仲良くすればいいのにぃ。
そうしたら、もっともっと楽しく巫が出来るのにね! たぶんだけど……。
あ、そういえば白雪くんと叶山彩萌は同じ学校だったんだっけ?
じゃあ彩萌が学校行けば……、白雪くんに会えるのかなぁ。
でも学校行くのヤダなぁ、白雪くんとかルーカス先生とか怖いし……。
それにこっちの世界の彩萌を演技できそうにない……。
うぅ、幻想世界に帰りたい……。
またちょっと落ち込んでいたらシホちゃんに連れられて、おばあちゃんの車に行きます。
ミギーくんは超ふわふわじゃーんって、座席のふかふか具合を楽しんでいました。
そしておばあちゃんは超運転が荒かったです、すごい運転技術です。
下手って感じじゃないけど、荒い感じでした……。
ミギーくんは喜んでたけどね!
シホちゃんは慣れてるのか全然気にしてなかったです。
あと、おばあちゃんの家は超デカかった。マジでぇ、豪邸的なー日本家屋的なー。
ちょーひろいー、すげーじゃーん。
廊下も長いです!
きゃっはきゃっは彩萌たちがつつーって感じで、滑ったりしながら遊んでたらシホちゃんに注意されちった。
でもおばあちゃんはおっけーしてくれたよ。
おばあちゃんのお孫さんとか、娘さんとかそんな人に挨拶したら変な顔されたけど気にしないよ。
……やっぱりちょっと気にするけどね。
好きにして良いよって彩萌たちに言ってね、おばあちゃんはシホちゃんにちゃんと面倒見てやれよって言ってた。
おばあちゃんはなんか用事があるのかどこか行っちゃった。
うん、すごいお家にわーいって喜んでたけどなんだか悪いね。
なんかお返ししたいよね。
「なあシホちゃん、この家広いじゃん? なんか面白いもんとかないの?」
「離れにちっこいの、二階の一番奥の使ってねー部屋にキモいの、屋根裏に変なの、蔵に無口なの、この部屋に座敷童みてーなのが住んでるくらいで面白いもんはねぇな」
「ずいぶんいろいろと充実したお家なんだね……」
なんかシホちゃんは家から持って来たゲームをセットしながら、そんなことを言ってました。
この家って幽霊屋敷じゃん、彩萌たちは大丈夫だけどお孫さんとか娘さんとかは大丈夫なのかな。
ゲームやろうぜってシホちゃんが言うから、まあいっかーって思ってゲームやることにしました。
パーティーゲーム的な感じで、彩萌でもできそうな感じでした。
しばらくゲームをやってるとね、押し入れから覗き見てるチビッ子とか、窓の外からなんか逆さで見てくる白っぽいなんか変なのとかいろいろ現れてました。彩萌たちのことが気になっちゃって見に来ちゃった感じがします、昔の彩萌だったら絶叫してたね。
魔法が使える人のところに、幽霊とかって集まるんだね。
昔山吹君が何もないところ見てたりしてたのは、幽霊が集まってきちゃってたんだね。
あー……なんか、彩萌ってやっぱりもう現実世界では住めない体って感じー。
「地味に強い、なんだよ、地味に強い……お前、お前日本語わかんねぇんじゃねーのかよ」
「ニュアンスと直感で生きてる僕に死角はない! というかシホちゃん大人気ないじゃん?」
「手加減してるだけだしー! 超手加減してやってるだけだしー! 俺の実力はまだ発揮されてないしー!」
「じゃあ次も一位取るから、実力勝負して」
「俺……パーティーゲームは得意じゃないから……!」
「じゃあシホちゃんの得意なゲームやろう、すぐ覚えるから」
「何この子、地味に怖いんですけど」
「同等の力で遊べるのって良いよね!」ってにこにこミギーくんは言ってました。
ミギーくんめっちゃ生き生きしてんね、孤児院に居る時は楽しくなかったんですかね。
斬新で良いのかな、それにしても本当に良い顔してます。
あーなんかー、なんかーホッとしたら眠くなってきたー。
そーいえば彩萌全然寝てないじゃーん、寝てないじゃーん……。
「シホちゃん……眠い」
「俺も眠いよ」
「えー、マジでー、あーこういう時ってスピリット系の魔物ってマジ損だわー」
「ミギーお前、どっか散歩して来いよ……」
流石のシホちゃんもやっぱり眠いらしい、夜中起きてたもんね。
彩萌がぐだぐだしてたらシホちゃんが布団引っぱりだしてた、そんで彩萌をぽーいですよ。
投げるのは良くないよ、うん。シホちゃんはそのまま座布団を丸めて畳の上に倒れてました。
ミギーくんはもう既に部屋にいませんでした。
「なんでぇ……うとうとしてるときってー……いい感じなのかなー……」
「しらねー」
「シホちゃん……彩萌この前誕生日だったんだよ……」
「あーそ、おめでとー、さっさと寝ろ」
あーそういえば彩萌ケーキ食べられなかったー。
山吹君とケーキ入刀したかったのに……、そういえば山吹君は元気かな。
彩萌の体の中に現実世界の彩萌が今入ってるんだっけ……。
どうしよう……、もし山吹君が現実世界の彩萌の方が良いって言ったらショックだ……。
なんかよく分かんないけど、涙出て来ちゃった。
「ぐっ……うぅ、せめて陸斗君って名前呼びにランクアップさせてから死にたかったです……」
「まだ死んでねぇし」
陸斗君……いや、りっくんとかも良いよね……。
あっ、でもそれはりっちゃんと被るか。
りっきゅん、りったん、りくくん、りーくん、りくとん、りくりく、色々あるよね……。
……どれも山吹君が嫌がりそうだぜ、答えはきっとノーだぜ。
でも彩萌は将来山吹になるからね! いつまでも山吹って呼んでいられないんだ!
彩萌的にりくくんが良い感じです、りく君……えへへ。りく君。
うふふ、帰ったらりく君呼びをするんだ、えへへ。
うん……帰ろう、幻想世界に帰ろう。絶対帰ろう。
待っててね、山吹君。
でもその前に寝よう、彩萌の睡眠不足な脳味噌が死んじゃう。
山吹君の為にも、彩萌の為にも世間の目になんか負けない!
――あやめとアヤメの交換日記、三十九頁




