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あやめとアヤメの交換日記  作者: 深光
不幸の箱の中の希望
32/114

準備完了です!

 レニ様(超偉い犬)がお昼ごろに来て、たくさんの羊毛フェルトとなんか針とか持ってきた。

 暇潰しに良いんじゃないって、なんか羊毛を針でちくちくして作る可愛いお人形の作り方の本くれた。

 現実世界で人気らしい、本は日本語で書かれていました。

 彩萌も一度は聞いたことがあるような気がする、というかお姉ちゃんが作ろうとしてたけど途中で飽きてお母さんがやってたやつだ。

 誕生日プレゼントだって、ありがとうレニ様!

 そういえばディーテさんがいなくなってた、そんなにレニ様と一緒にいたくないのか。

 レニ様は今は休憩中らしい、彩萌が本を見ながらちくちくしてるのをお茶飲みながら見てたの。


「聞いた話によると、精霊さんとかの彩萌ちゃん交換する為のシーシープドラゴン買えなかったらしいねー。かわいそうだなーって思ったレニ様が追加でいっぱい羊毛買ってきたのよ」

「だからこんなにいっぱいあるの?」

「色別に作ったら素敵でしょ? レニ様にも作ってよー、部屋に飾りたいのよー」


 うん、ピンク色のやつね。

 へたっぴになっちゃうと思うけど、まあ初めてだから許してくれ。

 ちくちくちくちくしてたら指に何回も刺しちゃったけど、夢中になれるね。

 レニ様はしばらく彩萌に色々話しかけながらその様子を見てたんだけどね、休み時間終わっちゃったから途中で帰りました。

 彩萌が練習で作った本の最初の方に書いてあった簡単なやつは、子猫化したむーちゃんと小鳥化したユースくんがサッカーみたいなことして遊んでました。

 たまに爪とかに引っかかって二人とも足プルプルさせてて、面白いなぁって思いました。

 小動物だなぁって、思いました。

 ずっとちくちくしたのね、結構時間かかっちゃったけど……最初の羊さんは出来たのです。

 真っ赤な羊さんです! 奇跡です、ちゃんと自立してますよ。

 角とか上手につけられなかったけど、まあ良いかなって思います。

 羽をつければ、すごい不格好だけどシーシープドラゴンです。

 なんか彩萌の想像より全体的に大きくなっちゃったけど……シーシープドラゴンです!

 うん……、良い感じじゃん。たぶん。

 あと黒いのと、白いのと紫のと黄色とオレンジと青と緑ですよ。

 それとピンクね、でもレニ様は後ででも良いよって言ってたからいいや。

 夕ご飯の時間になるまでね、ずーっとちくちくしたよ。

 だって早く作らないと明日までに渡せないもんね、頑張ろー。

 夕ご飯はね、むーちゃんが作ってくれた。

 見た目も味もすごかったです、レストランとかレシピ本とかの料理みたいでした。すげー。


「ルニャは芸術方面に強いよね」

「へぇー芸術はグラーノさんなイメージだった」

「グラーノはねぇ、音楽とか詩かなぁ、ルニャは彫刻とか剥製とか……絵は描いてるの見た事ないけど、鑑賞は好きらしいし」

「料理は芸術だったんですね」


「剣も芸術だ」ってむーちゃんは言ってた。彩萌にはよく分かんないけど、そうなんだ……。

 ご飯食べ終わったあとはね、お風呂入ってからあの木製の山吹君にあげる用のやつをデコってみた。

 あんまり変な感じにならないようにね、むーちゃんに監修してもらったので大丈夫です、完璧の出来ですよ!

 夜更かししちゃダメだよーって、ディーテさんに言われたけど……彩萌は夜更かしをしてしまったのです。

 だってフェルトのシーシープドラゴンも作りたかったんだもん。

 とりあえずね、赤いのと白いのは出来た。

 あと六個か……、明日までには無理だなー。諦めよーっと。

 一日二日遅れても大丈夫だよね、気持ちが大事よね。

 お片付けしてから彩萌は寝ました、彩萌もついに十一歳か……。

 十一歳の癖に、彩萌はどうしてこんなに小さいんだろうか……、早く大人になりたい。





 ――彩萌は、起きたら現実世界の彩萌の家にいました。

 すぐに夢だなって思った、黒い糸は無かったけどね……。

 魔力の塊さんもいなさそうです、どこ行っちゃったのかな。

 部屋から出て、階段を下りるの。リビングに入るとね、長い金色の髪の女の子がいたんです。

 椅子に座ってました、まっ白い子犬を抱っこしてます。

 誰なんでしょうか、この金色の髪の女の子は……彩萌は見たことないですよ。


「……誰ですか?」

「――……上悪土(かみあくど)

「上悪土さん? 変わった名字ですね」

「本名じゃないから、……地名から取ってるから」


 ふーん……偽名なんだ、何で偽名を名乗ってるのかな。

 とりあえず彩萌も同じ感じで椅子に座るよ、上悪土さんは色白で目がぱっちりしてる。

 とっても暗い印象の子です、この子は本当に誰なんでしょう。


「……調子、乗らないでね」

「はぁ……乗ってないと思うんですけど、どうなんでしょう?」

「本当は貴女なんて必要ないんだから、しかたなく必要としてるだけなんだからね」


 うつむきながらぶつぶつその子はそう言います。

 そういえば……その白い子犬は呪いですよね、どうしてそんなもの抱っこしてるんですか?

 いろいろ聞きたいけど、なんだか拒絶されてる感を半端なく感じています。


「ふかちくんがこの方が良いって言ったから、ここに居るだけなんだから……」

「……上悪土さんも(かみなき)なの?」

「私が巫じゃいけないの? そうは見えないの? 私が人間じゃないから、馬鹿にしてるの?」

「え、人間じゃないの?」


 ルーカス先生が人間って言ってたから、巫は人間がなるものだって思ってたよ。

 そっか……人間じゃなくても巫になれるんだね、というか上悪土さんそれは被害妄想だよ。

 別に彩萌は上悪土さんを馬鹿にしてないよ。

 上悪土さんはネガティブな人なんだね。


「元精霊とか、落ちぶれただけでしょ……。ふかちくんは私のお友達なんだから、媚び売らないでね」

「はぁ……、そうですか。そもそも彩萌は白雪くんのこと苦手ですし……」

「嘘言わないで、ふかちくんの良さが分からない人なんていないんだから!」


 どうしろって言うんだよ、上悪土さんは彩萌に何を求めてるんだよ。

 早く起きたい……、この人ちょっと変だよ。

 媚び売らないでって言ったから、別に苦手だから大丈夫だよって言っただけじゃん。


「あぁ、早く帰りたい。こんなつまらない場所なんか居たくない……ふかちくんに会いたい」

「帰れば良いじゃないですか……、ついでにその白い子犬も連れて行ってくれると嬉しいです」

「今帰ったら……ふかちくんに嫌われちゃうじゃない! その隙に媚び売ろうって魂胆なの!?」


 違うし、全然違うし。彩萌はどっちかって言うと白雪くんは嫌いの方の人だし。

 恨みは深いのです、許せません。

 白雪くんの所為で白仮くんは死にそうになっちゃったんだよ、反省してほしいです。

 反省したら許しても良いけど、反省しないかぎりは許しません。

 上悪土さんはなんか……お腹空いてるの? お腹空いてるとイライラするよね。

 ご飯食べたいよね、彩萌の中にいるからご飯食べられてないんじゃない?

 よく分かんないけどさ……。


「ふかちくんは私のお友達なんだから……、貴女なんて……必要ないんだから、……(えにし)なんて」


 なんだか泣きそうになってます、どうしたんだろうね。

「私から取らないで」って言うけど、彩萌関係ないよね。彩萌は白雪くん苦手だし……。

 顔見知り程度なら良いけど……、さすがの彩萌もお友達になるのは無理かな……。

 怖いもん、白雪くんは恐怖だ。


「……私の方が、すごいんだから」


 そう言うと上悪土さんは彩萌の家から出て行った……、なんだったんだろう。

 彩萌に調子に乗るなって言いたかったんですかね?

 とりあえずどうしたら良いんだろう、寝たら普通に起きられるかな。

 うーん……よくある感じだよね、よし寝よう!

 彩萌は急いで部屋に戻ってベッドに入ったよ、目を閉じてね静かにしてたんだよ。

 全然眠れないなぁって思ってさ、目を開けたら彩萌の部屋じゃなかった。

 空き教室にいました……どうやらマジで起きちゃったみたいです。

 まだ明るくなっていませんでした、まだ暗いね。

 かちってベッドランプをつけたのです、寝てから一時間もたってなかったですよ。

 でも眠れそうにありません! しかたないので彩萌はしまいこんでたフェルトを出してちくちくし始めたの。

 ベッドテーブルって楽ちんだね、ベッドに座ったままできるもんね。

 椅子の上で寝てたむーちゃんはちらっと彩萌を見たけど、また目を閉じて尻尾をぱしってしただけで動かなかったよ。

 ディーテさんは居なかったです、山吹君の家に帰ったんだね。

 とりあえず今は紫色のシーシープドラゴン、ユースくんのを作っています。

 なんか慣れてきたのか、ちょっと早いような気がする!

 ちっくちくしてたらね……フクロウなユースくんがベッドの上に乗ってきたんです。

 ぴょんぴょんジャンプしながら近づいて来てね、彩萌がちくちくしてるの見てるの。


「ボクのも……、これつけて欲しいー」


 山吹君のシーシープドラゴンをデコったときのあまりのビーズを……指差し(羽だけど)ながら彩萌に言うんです。

 まあね、きらきら好きだしね! もこもこしたところにいっぱいつけてあげよう。

 足の上に乗ってきて腕の間から見るんだけどさ、ちょっと邪魔だなって思う。

 まあ良いけどさ、もこもこだしね。

 そんな感じでしばらくちくちくしてたら、忍び足でむーちゃんが近づいてきたんですよ。

 そんで彩萌の背中にのしかかるんです、子猫化してたはずなのに普通の大人な猫ちゃんになってたのでめっちゃ重い!

 猫背になってしまう……、むーちゃんは彩萌の肩から手元を見てるんですよ。

 重いです、体が痛くなっちゃいます。

 あと、地味に引っかかる為に出てる爪が痛い。

 パジャマだから良いけど、パジャマじゃなかったら怒ってたよ。


「もっと丸みがあるほうが綺麗」

「分かってるよーう……、というか重いから軽くなってよ」


 そう言えばぱしって尻尾で背中を叩かれた後に軽くなった、そうだよ……元から重さなんてない生き物なのに無駄に重くならないでよ。

 彩萌の腰とか肩とか背中がかわいそうなことになっちゃうでしょ。

 明るくなる頃には、ユースくんにあげるシーシープドラゴンはできたのです。

 ちっちゃいし、へたっぴです。でもちょっぴり早く作れるようになったよ。

 でもやっぱり今日中に全部は無理だな、あとふぇっくんの作ろう。

 ふぇっくんとユースくんとむーちゃんとディーテさんにはお世話になったから、当日に渡したいね。

 楽しみだね、お祝いされるのは嬉しい。

 最近グラーノさんとかフレアマリーさんとかテスさんに会ってなかったから、楽しみだなー……りっちゃんとウェルサー二世さんは来るんだろうか。

 山吹君とりっちゃんが対面した姿を見てみたいとか、ちょっと思ってみたり。

 自分のそっくりさん見たら、びっくりするのかな。

 彩萌はいますっごくご機嫌です、怪しいくらいです。

 誕生日会夜やるらしい……楽しみですよーえへへ。

 そんなご機嫌な感じでふぇっくんのを作り始めて、来てくれたディーテさんに朝ごはんもらってから、頑張って完成させました!

 作ったシーシープドラゴンたちをね、キレイな袋に入れたんだよ。

 もちろん山吹君に上げるやつもちゃんとラッピングしました、リボン可愛いですー。

 それでとりあえず着替えてなかったから、着替えたんですよ。


「とりあえずさー、もうちょっと眠っててくんない?」


 着替え終わってベッドに座ってたらさ、むーちゃんがそんなこと言うわけです。

 ヤだよ、服がしわしわになっちゃうでしょって言ったら、魔法をかけられて強制的に眠らされたのです!

 あー服がしわしわになっちゃったらどうしよーって考えながら彩萌はベッドに倒れ込んだのです。

 なんだかよく分からないけど、陰謀を感じました。

 こっ、これは陰謀だー……、陰謀に違いないー……。





 ――あやめとアヤメの交換日記、三十二頁

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