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あやめとアヤメの交換日記  作者: 深光
不幸の箱の中の希望
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人間不信な少女たち

 ずっと住宅街が続いてて、なーんか彩萌嫌になってきちゃう……。

 こんなに住宅街長くないでしょー、そろそろなんかコンビニとかいろいろ見えても良いでしょー。

 何にもないんだね、マジで……。

 飽きたって言ったら、ふぇっくんも飽きてきたらしいです。

 早く呪いを見付けなきゃねー、って励まし合って歩いてるけど……見つかるのかなぁ。

 なんとなくだけど、彩萌はなんだか神社を探せばいいような気がしてきたんです。

 だって巫さんたちはなんか神社が大事なんじゃないかなぁって、彩萌は何となく直感したんです。

 精霊さんたちが魔人の国にこだわるような感じで、巫さんたちはきっと神社だよ。

 そう思ったから、彩萌は神社の方へとふぇっくんを連れて行きます。

 その道の途中でね、ちょっと背の高い女の子が見えたの。

 長い金色の髪で、青色の目をしてる女の子でした。

 青色というか……青緑色? かなぁ……。

 じーっと彩萌たちを見てたんだけど、ぷいっと顔をそむけて走り去って行ってしまいました。

 それにしても、可愛い女の子でしたね。


「さっきの子、知ってる子?」

「んー……知らない」

「そう言えばあの子、彩萌ちゃんが言ってた感じの白い小さい犬だっこしてたよ!」


 えっ、マジですか。というかあの子は誰?

 彩萌の知らない子だったけど、夢の中に出てくるんだね。

 走って追いかけるんだけど彩萌の足が短い所為であんまりスピード出ないなー、やっぱり乗り物欲しいなー。

 ふぇっくん馬にならないかなー、お馬さんって早いよねー。

 お馬さんってかっこいいよねー、風になって走るよねー。

 彩萌疲れたなーとか言ってたらふぇっくんがおんぶしてくれた。

 彩萌的におんぶじゃなくて乗馬したい気分だったけど、まあしょうがないです。

 なんか夢の中にいるのに、おんぶしてもらって一息吐いたら本当に疲れが来たんですけど……。

 寝てるのに疲れるなんてイヤだね……。

 でもふぇっくんはお兄さんの姿だったけど馬のように早かったです。

 すぐに金髪の髪の女の子に追い付いちゃったんですよ。

 流石ユニコーン……、一角獣はすごい。

 本当にその子は白い小さい子犬を抱っこしてました。


「――……精霊は、仲が良いですね」

「その犬は呪いの元凶だよね、渡してほしいなー!」


「イヤです」って言ってその子は来た道を引き返すけど、ふぇっくん足早いからすぐ追い付いちゃうんじゃないかな。

 彩萌を置いて、その子を追いかけようとするんだけど……さっき消えて逃げちゃった魔力の塊さんがあらわれたのです。

 その所為でふぇっくんの動きは止まります、卑怯ですよー。

 というかなんで怖がるシステムになってるんだろう。


「……ここ、居心地良いよね。ずっとここに居たい感じ」

「えー、居座られると彩萌困るんですけど!」

「良いでしょ、私を使いこなせれば嫌いな奴を“絶縁”できるし、貴女自身の力を取り戻せば“結縁”出来るようになるんだよ」


 うーん、精霊さんがこの人を怖がるのは絶縁の力の所為なのかなー。

 よく分かんないけど、絶縁はあんまり使っちゃダメな力なような気がするんだけど……どうなんだろう?

 そういえば、二回目に見た現実世界での夢のお面の子は絶縁されちゃったから現実世界にいられなくなっちゃったのかな。

 うーん……使い方を間違えると危険そうな力じゃないですかね。


「それに、私まだ……――」


 何か呟いてた気がするんだけど、がくがく揺さぶられているような感じになって……目を覚まします。

 なんか眩しいです、小鳥のさえずりが聞こえます。

 あぁ、起きちゃったのか。うん……あれって意味のない夢だったのかな、それとも意味のある夢だったのかな。

 からんって何かが落ちる音がした、そっちを見ると青いなんか宝石いっぱいついた王冠みたいなのが床に落ちてた。


「彩萌ちゃん、大丈夫?」

「――……あぁ、ふぇっくんはやっぱり女の子の姿の方が良いよね」

「なんか……地味に傷付いた、僕はどんな時でも素敵なんだよ」


 そうだね、素敵だね。でも彩萌はやっぱり、女の子なふぇっくんが一番好きだ。

 可愛いからね、うん……彩萌可愛いのが好きなんですよ。

 なんか、よく分からんが彩萌はとっても疲れてます。


「ごめんね、今は無理に呪いを解こうとしない方が良いかも!」

「えー……なんで?」

「なんか、彩萌ちゃんの中の魔力を刺激しちゃったみたいだし」


 あれは意味のある夢だったんですね、あの王冠はなんかふぇっくんが持ってきたの?

 すっごい疲れてます、なんだろうこの疲労感。

 やる気も全部吸い取られちゃった感じぃ。


「んー……なんて言ったら良いのかな、彩萌ちゃん変な力の所為で元に戻りつつある感じってことで良いの?」

「たぶん」

「えー、ヤバイじゃーん」


 なんか軽い感じのヤバイじゃーんだったけど、まあ気にしないでおこう。

 実際になんか、ヤバイじゃーんって感じだしね……うん。


「ルニャどう思うー?」

「元から魔力の剥離があったんでしょ、元からまだ安定してないってことでしょ。だったら安定するのを待って無理に引きはがせば良いじゃん」

「それは荒療治過ぎない?」

「でもそれ以外に何かあるの? 自分の頭も使えば良いじゃん、王様の癖に馬鹿なの? 妖精は賢い生き物じゃなかったっけ?」

「……ムカつく」

「引きはがす時は革新の奴(夜の精霊)を使えばいいよ、アイツはそう言うのが得意じゃん」

「反論できなくてさらにムカつく」


 ムッとした顔をしながらふぇっくんは王冠を拾っていました。

 むーちゃんはなんか雑誌読んでた、保健室にトゥーニャ先生はいませんでした。

 窓の方を見ると何故かユースくんが空を飛んでる鳥さんたちを見ていました。

 ディーテさんは図書館に行っちゃったのかな、白仮くんは授業に出てるのかな。

 あー、彩萌は今疲れちゃってるけど……学校行きたかったなぁ。


「ねぇ……、彩萌ちゃんに魔法をかけたのはぁ……何者なの?」

「それはよく分かんない、たぶん現実世界の奴だと思うー」

「なんで現実世界の人が……彩萌ちゃんに魔法をかけたの、かな?」

「ルニャのそっくりさんらしいよ」

「なにそれわけわか……――あぁ、アイツらか、それだとますます魔法を掛ける意味が分かんないんですけど」

「え? 誰なの?」

「だから自分の頭使えば良いじゃん、馬鹿なの?」


 うーんってふぇっくんは必死に考えてるみたいだけど、全然何も思いつけそうにないのかずっと唸ってます。

 彩萌は疲れているので口を開きたくないです、眠くはないですけど。

 そんなふぇっくんを見てむーちゃんは溜息を吐いてた。


「現実世界と幻想世界を自由に行き来できるやつは精霊と他に何が居たか忘れちゃったの?」

「……あっ、そっか、そう言えばそんなのも居たね!」


 なんだ、精霊さんたちは巫さんたちのこと知ってたんだ。

 それとも前世の記憶を思い出したのかな、どっちなんだろう。

 そう言えば……あの魔力の塊さんは最後になんて言おうとしてたんだろう。


「あーあ、アイツらじゃなかったらそのまま殺しても全然問題なかったのになー……」

「うーん……厄介だよねー、何考えてるんだろうねー」

「ぼくとほぼ同じ役割をしてる奴だから、無駄なことはしないと思うけど」


 同じ役割かぁ……、もし……現実世界の彩萌と幻想世界の彩萌が入れ替わっちゃっても世界的にはどっちでもいいのかな。

 現実世界の彩萌は何も知らないのかな、それとも知ってるのかな。

 良いのかな、入れ替わっちゃっても。

 そんなことをぼんやり考えてたら、保健室の扉が開きました。


「えーっと……、彩萌ちゃん起きたの?」

「えー、もう薬できたのー? 早いじゃん、さすが旦那じゃーん……夜鍋ってやつだね!」

「ま……まだ旦那じゃないし! というか、君たちは此処に居て良いの?」


「護衛だもん」とふぇっくんがニコニコ笑って山吹君に答えます。

 面倒臭いし、ダルイけど山吹君の為に頑張って起きます。

 なんだかすごく嫌な気分になってる、何でだろう。

 山吹君ちょっと疲れた感じだね、薬っぽい臭いがします。

 なんだか悲しくなってきた、疲れすぎてるのかな。


「……どうしたの彩萌ちゃん、大丈夫? 薬飲める?」


 心配そうな顔で彩萌を見るんだけど、それがすっごくもやもやする。

 嬉しいような、嬉しくないような悲しいような。

 飲んでくれる? って山吹君は薬を差し出してくれるんだけど、彩萌はなぜかそれがすっごく飲みたくない。

 彩萌がなんとなく手を動かそうとした時、ふぇっくんが動くのが見えました。


「はい彩萌ちゃん、杖」

「あ……うん、ありがとう」


 無理矢理手に握らせる感じで、杖を渡されて彩萌は反射的に感謝していました。

 うん……でもなんか落ち着いた、もやもやもないし……疲れもちょっとなくなったかも。

 彩萌は山吹君から薬をもらって普通に飲みました、水が上手い。


「そうだ……、彩萌ちゃんこれ最近着けてないよね~……これもちゃんと効果あるんだよぉ、着けて欲しいなー……」


 窓の外を見ていたユースくんは前にユースくんがくれたカチューシャを持ってベッドに近づいてきました、もしかして彩萌の部屋から持ってきたのかな。

 角が邪魔だったから着けられなかったけど、ユースくんが力技で折って小さくして小さい髪留めにしてた。

 バキィってすごい音がしてたけど、魔法使えばよかったんじゃないかな。

 精霊さんって不思議だね、魔法使わなくて良い時はじゃんじゃん使うのに魔法使っても良い時には使わないんだね。

 まあさすがに最後の仕上げの時は魔法使ってたけど、最初から使っても良かったんじゃないかな。

 元カチューシャを頭につけるとね、ユースくんは嬉しそうに拍手してた。


「魔力吸い取る仕様にしたからね……」

「じゃあ、僕の王冠も……!」

「そんなに貰っても迷惑なだけじゃね」


 たしかにそうですね……! 彩萌が王子並みのじゃらじゃらアクセサリーになってしまう!

 杖にーディーテさんの十字架にー、元カチューシャにーぱっちん留めでしょ?

 目立ってしまいますね、ディーテさんの十字架は胸ポケットに入ってるけどさ……。

 なんか山吹君がちょっと居心地悪そうな顔をして、ため息吐いてた。


「……僕も持って来ちゃった」

「えっ、若旦那もなの? 良かったね彩萌ちゃん、モテモテだね!」

「家族なんだから心配するのは当然だよ~……、彩萌ちゃんが死んだらルニャグレるし~、ボク達は三人で一つだったからねー……」

「ぼ、ぼくはグレないし! 絶対にグレない、別に死んだってどうでも良いし! むしろ死ねばいいんじゃないのばーか!」


「心配してきてやったんじゃないし! 弱りきった顔を笑いに来てやったんだし!」ってむーちゃんはなんかユースくんの発言に怒って反論してた。

 これがツンデレってやつなのかなぁ、むーちゃん優しいなぁ。

 最近なんだか落ち着いて来たみたいで彩萌を殺そうとしなくなったし、良い傾向ってやつですよ。

 それで山吹君は何を持ってきてくれたのかな!

 魔具ってやつだろうけど、山吹君がくれるならなんでも宝物ですよ!

 わくわくした顔で山吹君を見れば、なんかちょっとやっぱり居心地悪そうと言うか……引いているというか。


「僕のは良いよ……しょぼいし、精霊から貰ったものがあれば十分でしょ」

「何言ってんの若旦那! 僕達が上げた物なんてゴミ同然だよ、むしろポイっだよ! 女心を分かってないな、この若造め!」

「あ……ボクのやつ本当に投げちゃダメー」

「そうですよ、危ないですよ……。せめて手渡しで返してあげるとか……!」


 まあゴミとは言わないけど、山吹君がくれる物ならしょぼい物でも何でも他の人がくれるより価値があるのはたしかです。

 ふぇっくんにそう言われた山吹君は、渋々持ってきたものを出してくれました。

 指輪でした、とってもカワイイです!

 えーマジで、これ貰って良いの? 貰って良いんだね、ひゃっほい!


「ありがとう山吹君! 病気が治っても一生大事にするね!」

「ま、まあ……そうして」

「若旦那もっとぐいぐいいかなきゃダメだよ、横から取られちゃうよ……僕みたいな感じの奴に!」

「言動も軽ければ頭も体も何もかも軽いよねー、彩萌ちゃんに近付かないで欲しい感じぃー? 病気が悪化しちゃうからさ、死んでくれなーい?」


 酷いってふぇっくんが嘆いてたけど、彩萌はフォローできそうにないです。

 ごめんねふぇっくん、彩萌も君のことはすっごい軽いって思ってます。

 誰もむーちゃんの発言に対して反論しなかったからか、ふぇっくんは本当に落ち込んでいました。


「もう良いもん、ジェンナに慰めてもらうから君たちなんて知らない!」

「あっそー、じゃあなー」

「バイバーイ」


 手を振って別れの挨拶をしたらふぇっくんは本当に泣きながら出て行った。

「誰か引き止めてくれたっていいじゃーん!」って泣いてた。

 ……ちょっと悪いことをしたかもしれない、悪乗りし過ぎたかな……。


「ところでジェンナって誰? 初めて聞いた名前だったね」

「新しい彼女じゃん? ぼくも初めて聞いたし」

「学校に来る途中……ナンパしてた人の名前かも~?」


 山吹君はこんな会話を聞いて苦笑いしてた。

 むーちゃんとユースくんはやることなくて暇だからここに居たいらしい。

 あんまり迷惑かけないなら良いんじゃないかな、って山吹君が言ってたから二人はなぜか子猫と子フクロウになって一緒に雑誌を読んでました。

 体積が減ったから人目に付き辛い、とか言ってたけど……保健室に動物っていいのかな……。

 孤児院に一旦帰ってお風呂とか着替えとかしたいって言ったけど、とりあえず一日は様子を見る為に此処にいるようにって山吹君に言われちゃった。着替えはシュガーさん(孤児院のお母さん的存在)に持ってきてもらうことになった、お風呂は学校のシャワー室使えば良いってさ。

 どうしよう……、なんか彩萌めっちゃ病人扱いじゃん。

 ちょっと元気になってきたのに、ちょっとまた不安になっちゃうじゃん……。

 あとバカになっちゃうから……できれば勉強したいです。

 勉強は山吹君が見てくれるようです、やったー。

 でも保健室をそんな個人使用して良いの……?

 そう思ったけど、どうやら彩萌が寝ている間に空き教室に移動していたらしい……。

 気づかなかった……、そう言えば周りあんまり見てなかったね。

 山吹君が来て初めて体起こしたし……。

 というか病院行けばいいんじゃないの? って言ったけど、病院では魔法を使った治療をしている場合が多いから、魔力に関係した病気の人は入院するのは好ましくないとかなんとか……。通院しろってことですかね。

 レニ様の御好意とディーテさんのわがままで彩萌は此処に居るらしいです。

 いざという時は山吹君の家にお邪魔する形で、という話らしい。

 学校休むのは罪悪感があるけど、山吹君と勉強できるならいいや。

 とりあえず、彩萌は先に魔力を安定させることを目標に治療をするらしいです。

 安定してきたら夜の精霊さんに魔力を引き剥がしてもらう……ってプランですって。

 安定するまでは呪いとかそう言うのはノータッチで行くらしいです。

 ……なんか、時間かかりそうだけど大丈夫かなぁ?





 ――あやめとアヤメの交換日記、二十七頁

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