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あやめとアヤメの交換日記  作者: 深光
不幸の箱の中の希望
20/114

箱の船で旅行中

 美味しくお昼ご飯をいただいたあと、彩萌は保健室の住人なので保健室に行くことに。

 行くときにミギーくんが白仮くんにこそこそ話しかけてたように見えたけど、あの二人ってそこまで仲良くなかった気がするんだけど。

 まあいいか、気にしてもしょうがないよね。

 いつもの階段を使います、朝に開けてしまった穴はもう完全にありません。

 保健室の先生は今日も怖い顔してます、別に睨んでたりするわけじゃないけど表情が無いからちょびっと怖いのよね。

 でも優しい、にこりとも笑わないけど優しい。

 なんで先生笑わないのかなぁー。……ビジネス優しさ?


「叶山さんこんにちは、今日の調子はどうですか?」

「こんにちは先生、すっごく良いです! 幻聴も減ったんですよ!」

「その杖のおかげですか、身体に影響をきたしてはいなかったようですけど……精神に影響でもきたしていたのですかね」

「魔力は心にも影響するんですか?」

「かなり影響されますよ、むしろ一部というか糧というか」


 とりあえずいつものように体温などを計られます、彩萌の成長記録が出来上がって行くのです。

 そう言えば彩萌は毎日保健室に行ってるのに先生の名前を知らないですね。

 うーん、先生は先生って言ってるし……。

 他の先生は前に名前をつけて呼んでるし……。

 でもいまさら先生の名前ってなんですかって聞くのもちょっと気恥ずかしいような。


「杖を持っていると調子が良いからと言って保健室に来るのを怠らないようにお願いしますよ」

「はーい……分かりました」

「それと何か質問したいことがあるならどうぞ」


 うぎゃ、何か物言いたそうな顔をしていたのかな?

 うーん……他に質問したいこと無いし……、名前聞くしかないかぁ。

 毎日通ってるのに名前知らないなんて、なんか悪いよね。


「彩萌は毎日保健室に来てるのに先生の名前知らないなぁって……ちょっと思いました」

「あぁ、たしかに名乗っていませんね。トゥーニャ・サニエ・マクニエスと言います」

「なんだか……可愛らしいお名前ですね」

「響きはそうですね、ですが名前の意味としては……意訳ですけど、祝福された冷静な正義の騎士ですから意味には可愛らしさは一切ないですね」

「先生はヴァージハルト出身ですか?」


 名前が長い人ってだいたい魔人かヴァージハルト出身なイメージがあります。

 シェリエちゃんとかフレンジアさんとか王子とか、一応エミリちゃんも名前長いか……。

 一瞬きょとんって感じの顔を先生がした、えーっと……トゥーニャ先生が表情を変えるのは初めて見た。

 突然出身の話になったから驚いたのかな。


「よく分かりましたね、そうですよ」

「彩萌の知り合いに出身の人がいるんです、その人の名前もそんな感じだったからそうなのかなって」

「ヴァージハルトの人は正義とか騎士とかそういう意味合いの言葉が好きですからね」


 あ、トゥーニャ先生ちょっと笑った。

 トゥーニャ先生はあれなのかな、警戒心が強い感じの人なのかな。

 彩萌がちょびっと馴染んできたってことなのかな、嬉しい変化ですね。うふふ。

 毎日通ってるからね、先生とはぜひ仲良くなりたいです。

 じゃないとお昼休みが辛い。


「じゃあ先生のプライベートネームはサニエなの?」

「そうなりますね、トゥーニャもサニエも少々可愛らしい響きなのでちょっと困ります」

「あー、じゃあマクニエス先生って呼んだ方が良いんですか?」

「お好きにどうぞ、長い事この名前と付き合ってきましたからね……困る事は有りますけど慣れてますから大丈夫です」


 うーん……じゃあ先生は先生って呼ぼう、名前聞いた意味無いけど先生は先生って感じだし。

 そう言えば保健室って彩萌意外誰も居ないよね、休み時間とかは知らないけど全然人来ないよね。

 どうしてなんだろう?


「せんせー、保健室って人来ないですね」

「まあ……軽傷なら魔法でどうにかなってしまいますからね、重傷の子供くらいしか来ませんよ」

「それは寂しくないですかー?」

「最近では叶山さんが来てくれます、それにかなりの頻度でリーディア先生も来ますしね」


「不貞寝しに」と先生は教えてくれました、山吹君保健室でふて寝してるんですか。

 生徒の相手は疲れるようですよって、先生は言ってました。

 それから彩萌はちょこっと先生とお話してから保健室を出ました、早く教室に戻らなきゃだね。

 また来たときと同じ階段を上っていると、なんだか杖からひそひそと音が聞こえた。

 それにずりずり音がするから、近くにおもちゃ箱のミミックさんがいるのかもしれない。

 階段を上ってるとね、階段の上にミミックさんが見えた。


「あっ……精霊様ー、ご機嫌いかがでしょう?」


 上りきっておもちゃ箱のミミックさんを近くで見ると……なんかがったんがったんしてた。

 中に何か入ってるのかな、って思って見てたらパカッてふたが開いたんです。


「あ――っきょあーッ!?」

「ひょえぇっ!? 目が回ります!」


 中に教室を覗いてたちびっ子たちが入ってたみたいなんだけど、なんかふたを開ける勢いが良すぎちゃったみたいでミミックさんごと階段を転げ落ちて行った。

 ちょうどふたがされてなんかぐるんぐるん落ちていって、どんって壁にぶつかって止まったの。

 ミミックさんがすごい頑丈なおかげで壊れなかったけど、壁にひびが入ってた。

 中に入ってた子たちは大丈夫だったんだろうか、死んでないかな。

 職員室が近くってよかったね、今呼んであげるからね。


「カルヴィンせんせー! カルヴィンせんせー! おもちゃ箱が階段から落ちましたー!」


 今回の件は彩萌は関係ないぞ、絶対に関係ないぞ。

 中の子たちの安否が気になるけど彩萌は関係ないぞ、ただちょっと彩萌の運が悪いだけなのです。

 彩萌はカルヴィン先生を呼んですぐに教室に戻ったからね。

 だって彩萌は無関係だもんね、カルヴィン先生も分かってくれたし……。

 壁にひびが入ってたのだって見なかったもん、彩萌は絶対に関係ないからね。

 彩萌が落としたわけじゃないからね……。

 ちょっと、なんか……よく分かんないけどごめんなさい。





 ――授業終った! シェリエちゃんと帰りたいけど、帰れるだろうか。

 帰りはおっけーしてくれた、機嫌を直してくれたのかな。

 帰りはシェミューナちゃんのところによって帰ろうねーって話をしながら教室を出ます。

 なんだか今のところは普通です、昨日と今朝はなんだったんだろうか。

 シェミューナちゃんのところに行こうとすればクーリーちゃんも一緒になりました、クーリーちゃんもなんだか普通です。

 なんだかすんなり普通になると逆に心配……、あれはなんだったの!?

 そんなこんなを考えていれば指導室に到着です、コンコンノックをすればシェミューナちゃんの返事がします。


「シェミューナちゃんお疲れさまです!」

「ほんとだよ、休み時間と昼休みだけとは言えジェジア先生と二人っきりなんて恐怖以外の何物でもないわ……!」

「でもそれ以外は暇なイクシィール先生が遊びに来てるでしょー? 良いじゃない、楽しそうで」

「ちゃんと勉強してるもん! 自習してるんだよ、しかも休み時間はジェジア先生が目の前でチェックするの!」

「頭が良くなりそうじゃない、シェミューナアンタちょっとお馬鹿さんなんだから丁度良いじゃん」


 クーリーちゃんにいろいろ言われて「私……別にバカのままで良い」ってシェミューナちゃんはふて腐れた感じで呟いてた。

 まあまあ、落ちこまないでシェミューナちゃん。


「そういえば動く宝箱って言うのが噂になってるらしいけど、誰か見た?」

「彩萌は見たよ」

「……そんなものを見ていたのか、私も少し見てみたいな」


 というか彩萌が発見したんだけどね、今朝壁の中から出してあげたんですよ。

 そして彩萌は怒られちゃったわけです、あの箱には少し恨みがあります。

 まず先生に相談しに行かなかった彩萌も十分悪いけどね……。


「えー、どんなのなの!?」

「ただの動く箱です、喋れませんしー」

「なんだ、詰まんない。そんなもんかー、興醒めだね!」


 そんなもんですよ、中はかび臭いおもちゃでいっぱいでしたよ。

 そういえばあの子たち大丈夫だったのかな、ちょっとだけ心配になってきた。

 彩萌たちはそんな学校の噂話とかしながら帰る前に図書館によったの。

 今日はディーテさん居ないみたい、まあ……良いか。

 本を借りたり返したりして、シェミューナちゃんとは図書館を出てからお別れしました。

 高いところから見るクレメニスはきれいだなぁって思います、まあ正門に近づかないからあんまり見る機会ないですけど。


「そう言えば、二人とも昨日と今朝はどうして様子が変だったの?」

「えっ……あぁ、うん。まあ気にしないで!」

「少し用事があったからね……」


 にっこにこ笑って言ってたけど、なんか隠してる感じがした。

 うーん……まあ深く聞いて欲しくないならしょうがないなぁ、気にしないようにしよーっと。


「そういえば、降誕祭って交換するのって一人一回までとか制限あるの?」

「えっ!? あ……別にないよ! 大丈夫!」


 ……なんでクーリーちゃんそんなに動揺したのかな、まあ良いけど……。

 でも大丈夫ならいっぱい用意したいな……、ディーテさんとかエミリちゃんとかシェリエちゃんにあげるやつ!

 あとでミギーくんとか白仮くんにも一応交換するかどうか聞いとこう。


「クーリーちゃんとシェリエちゃんとも交換したいんですけど、良い?」

「大量のシーシープドラゴンが保管されることになるね! 可愛いやつ用意しとくね」

「そう言えばそうだよね……、そのシーシープドラゴンってどうするの?」

「お家に飾ったりするんだよ、どうしても捨てたいって時は海に流すんだってさー」


「私は彩萌以外のはどうでもいいけど、邪魔だし」ってシェリエちゃんが呟いてて、クーリーちゃんが苦笑いしてた。

 良かったです……なんかやっぱり様子が変だけど、彩萌嫌われたわけじゃないみたい!

 これからも仲良くしてくださいね……、シーシープドラゴン用意しとくからね!

 あー、なんか安心したらお腹すいたなぁ。

 夕飯なんだろうなー、楽しみです!





 ――あやめとアヤメの交換日記、二十頁

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