壱 鬼の噂
「行ってきます、おじいさん、おばあさん」
どざえもんは、早朝、山へ木の実を採りに行きました。
どざえもんは桜色の絣の着物を着ていきました。「あ、モモが生ってる」
と言って、6つモモを採りました。
また違うところには野苺、また違うところには、見たことのない小さな実がたくさん生っていました。
「美味しそう。食べてみようかな。」
とつぶやいて、ひとつ採ろうとしました。
が、その瞬間。
風を斬る音が聞こえ、いつの間にかどざえもんの背中からは血が出ていました。
「っ・・・・」
どざえもんはバランスを失い、ぐらりと倒れました。
「・・・・っ・・だ、誰・・?」
どざえもんは道ばたにうずくまって、唸りました。
と、そのとき。
「我の糧を横取りするのは見逃せられんな。」
どざえもんの目の前に、少年が立っていました。そして、木の実を入れていた籠を奪い取りました。
「たっ・・食べないで!それはおじいさまの-」
言い終わらないうちに、籠は空っぽになってしまいました。
「ん?何だよ。人の食料を取って自分のは駄目なのか?」
「まだ食べてないわ・・。触れてもないのに・・」
そういうと、少年は顔を真っ赤にし、食べかけていたモモを放り投げました。
「はっ、早く言えよ!」
「あんたが斬りにきたのよ・・・」
そう言葉を吐くと、あまりの痛みに気を失いました。
「・・むら、ほむら!」
「ん・・・お、おばあさん!」
「やっと気づいたかね?ああ、良かった・・・。」
おばあさんは傷を治療してくれていました。
「おばあさん、あたし・・何故ここへいてるんでしょうか・・?」
どざえもんはゆっくりと起きあがり、聞きました。
「ああ、倒れている炎を見つけて、山から帰ってきたのさ。炎より少し年下の男の子だったかね。」
どざえもんはびくっとしました。
あの偉そうな男の子だと瞬時に分かったからでした。
「名前を、たしか・・・ああ、冴鬼と言ってたよ。」
冴鬼・・・か。
「そうそう、炎!最近あそこの山で鬼が出るんじゃと。炎も鬼にやられたんじゃないのかい?」
「鬼?」
「そう。最近あそこで子供が次々と殺されていてなぁ。」
…まさかとは思うが…
「あの‥」
心当たりがあるのです、と言おうとした。
「ああ・・炎が死ななくて良かった・・・」
おばあさんが泣いていました。
「恐いですね‥。」
夜10時頃。
(鬼って‥結局あの男の子じゃないの‥?)
頭からあの話題が離れず、眠れなかった。
(ああ…今日は疲れたから明日‥探そう……。)
そう思いながら、どざえもんは目を閉じたのでございました。
深い、深い眠りにつくために……。
あー、やっと炎以外のレギュラーキャラが出てきました。
とりあえず話が進む様になります。
次話も読んで下さーい!