第2部:青き聖水の産業化 2-2. 視察を欺くハリボテの聖域
酷暑の熱気が揺らめく午後のことだ。リシケシュの聖地へと続くガタガタの未舗装路を、誇り高い埃を巻き上げながら、国際的な環境監視団体のメンバーを乗せた最新型のマイクロバスが低く唸りを上げて到着した。工場の正門前では、ラジェシュ・グプタが、普段愛用している成金趣味の派手なスーツをクローゼットの奥深くへ放り込み、この日のためにあつらえた非の打ち所がないオーガニックコットンのクルタに身を包んで待ち構えていた。彼の背後には、わずか数日の突貫工事で作り上げられた「聖なる浄化センター」が、午後の陽光をこれでもかと反射して、罪の意識など微塵も感じさせないほど白く、神々しく輝いている。
ラジェシュは、バスから降りてきた視察団に対し、インド伝統の歓迎の儀式を執り行った。若く美しい女性職員たちが、彼らの首に芳香を放つマリーゴールドの花輪をかけ、額には真っ赤なティラックを施していく。ラジェシュは、ボリウッド映画の聖人君子のような穏やかな微笑みを貼り付け、視察団のリーダーである神経質そうな欧州人の男に向かって、大仰に両手を広げて見せた。
視察団が案内された施設内は、どこから調達してきたのかも不明な最新式のデジタル計器が所狭しと並び、意味ありげに緑や青のランプが規則正しく、しかし空虚に点滅を繰り返していた。壁際には、複雑怪奇な化学構造式が整然と描かれたホワイトボードが配置され、その前では白衣に身を包んだ若者たちが、さも世紀の発見を目前にしているかのような真剣な面持ちで顕微鏡を覗き込んでいる。彼らの多くはBNI社の事務職や門番の息子たちであり、昨日までは顕微鏡のピントの合わせ方すら知らなかった者たちであったが、ラジェシュが与えた特別な報酬のために、プロの俳優も顔負けの「科学者」を演じきっていた。
ラジェシュは、施設の中央にある中庭へ視察団を導くと、誇らしげに鼻の穴を膨らませ、勢いよく噴き出す噴水を指し示した。
「見てください。この透き通るような水は、我々が独自に開発した次世代光触媒技術と、古代ヴェーダの聖遺物に記された浄化の知恵を融合させた、世界初のハイブリッド・システムによって浄化されたものです。母なるガンガーの生命力を、我々は科学の力で再構築したのです」
ラジェシュの声は朗々と響き、まるで教会の聖歌隊のように中庭に響き渡った。しかし、その噴水から噴き出しているのは、実際には早朝に近隣の商店から買い占めてきた市販のミネラルウォーターを循環させているだけの代物であった。地下を通る贅沢なパイプラインは、工場の汚泥が流れる本管とは何ら接続されておらず、ただ視察団の瞳を欺くためだけに、透明な偽りの物語を循環させ続けていた。
中庭には、廃液の毒性などこの世に存在しないと言わんばかりの、極彩色の花々が狂い咲いていた。それらは近隣の農家から今朝届いたばかりの、栄養剤を過剰に投与された鉢植えであったが、計算され尽くした配置によって、あたかもその場所で長年育まれてきた楽園の如き様相を呈している。植え込みの影に隠された高性能スピーカーからは、録音された小鳥のさえずりと、深い瞑想へと誘うシタールの調べが控えめな音量で流され、化学物質の鼻を突く臭いは、焚かれた高級な白檀の香煙によって巧妙に塗りつぶされていた。
視察団のメンバーたちが、水槽の中を優雅に泳ぐ色鮮やかな金魚と水の透明度に感嘆し、熱心にメモを取っている隙を見計らい、ラジェシュの側近たちは密かに動いた。彼らは、視察団に同行してきた数名の中央政府役人に対し、まるで長年の友人を迎えるかのような親密な仕草で肩を叩き、視察団の視線から外れた場所にある離れの茶室へと静かに誘導した。
「閣下、お疲れでしょう。国際的な先生方の難しい話は彼らに任せて、我々は少しばかり、この土地が誇る最高級の茶と、収穫したての果実を楽しみながら、母なる川の輝かしい未来について語り合おうではありませんか」
案内された秘密の応接室は、外の喧騒が嘘のように静まり返り、最新のエアコンが心地よい冷気を吐き出していた。革張りの贅沢な椅子に深く身を沈めた役人たちの前に、ラジェシュは自ら、ずっしりとした重みのある最高級マンゴーの木箱を恭しく差し出した。役人の一人が、品定めをするような鋭い目でその蓋をゆっくりと開けると、そこには黄金色の果実に混じって、青い水の販売利益から捻出されたばかりの、インクの香りが残る新札の束がぎっしりと詰め込まれていた。
ラジェシュは、役人の耳元に顔を寄せ、花の蜜のように甘く、そして抗いがたい響きを帯びた声で囁いた。
「これは、母なる川の尊厳と、我が国の発展を支える愛国的な公務員の方々へ向けた、私からのささやかな敬意の印です。あなたは今日、この目で世界で最も優れた、そして最も神聖な浄化施設を目撃したのです。我々は、あなたのような高潔な人物にこそ、『聖なる事業を支える守護者』という名誉ある称号を贈りたいと考えているのですよ」
役人は、数秒前まで頭の隅を掠めていたはずの、工場裏の排水路から立ち上る異常なコバルトブルーの光景や、川底に沈む魚の死骸への疑問を、マンゴーの箱の蓋と共に力強く、音を立てて閉じ込んだ。彼の脳内では、新札の束が積み上がる音と、将来約束される地位の重みが、心地よいリズムとなって刻まれ始めていた。
役人は、目の前に並べられたサフラン入りの黄金色の茶を一口啜り、鼻に抜ける贅沢な香りに満足げに目を細めた。彼の指先は、先ほど閉じられたマンゴーの箱の感触を忘れられぬかのように微かに震えていたが、それはすぐに権力者特有の冷徹な落ち着きへと変わった。彼は備え付けの高級な万年筆を手に取ると、視察報告書の結論欄に、淀みのない筆致で太鼓判を押し始めた。
「本日の調査の結果、BNI社の施設に異常は一切認められない。むしろ、最新技術と伝統的信仰を融合させたこの浄化システムは、自然環境への多大な貢献が認められるものであり、国家的な誇りとして推奨されるべきである」
この「完璧な」評価を記し終えた役人は、ラジェシュと力強く握手を交わした。その手のひらの間で、無言の契約が完結した。数分後、視察を終えた国際団体のメンバーたちは、偽りの浄化センターの美しさに心を打たれた様子で、ラジェシュと役人の見送りを受けながら、満足げな表情でマイクロバスへと乗り込んでいった。バスが埃を立てて去り、その排気ガスの煙が視界から消えた瞬間、工場の静寂を切り裂くようにして、噴水のスイッチが無機質な音を立てて切られた。
先ほどまで清らかに湧き出していたミネラルウォーターは、まるで魔法が解けたかのように勢いを失い、排水溝へと虚しく吸い込まれていった。ラジェシュは、首元を窮屈に締め付けていたオーガニックコットンのクルタのボタンを乱暴に外すと、大きく息を吐き出し、元の強欲な実業家の顔へと豹変した。彼は、卑屈な笑みを浮かべて自分を振り返った役人の背中に向かって、吐き捨てるような冷笑を浴びせた。
「見ろ、李さん。これほど安上がりな演劇があるかね。数箱の果実と、偽の鳥のさえずりさえあれば、世界の賢者も政府の犬も、揃って盲目になる。真実を隠すには、嘘を重ねるよりも、彼らが望む夢を見せてやるのが一番なのだよ」
彼は、役人が座っていた椅子を不潔なものを払うように一瞥し、側近に命じて豪華な茶器を片付けさせた。中庭に咲き乱れていた極彩色の花々は、役目を終えた大道具のように、夕暮れの影の中でその不自然な色を失い始めていた。ラジェシュは、かつてない高揚感と共に、再び自らの帝国を象徴する脂ぎったスーツへと着替えるべく、大股で社長室へと向かった。そこには、再びコバルトブルーの廃液を川へと流し込むための、真実のバルブが待っているのだ。




