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奇跡のコバルト・リヴァー  作者: バーラト・ニラ・インダストリーズ
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第3部:聖なる変異と青き檻 3-1. 青い痣の新人類

最初の放流から二十年という、一世代が入れ替わるほどの長い歳月が流れ去った。かつて母なる大河が湛えていた生命の輝きや、泥に混じる柔らかな茶色の色彩は、今やガンジス川流域の風景から完全に一掃されている。目の前に広がるのは、自然界の理を拒絶したような、粘り気のある重厚なコバルトブルーの静寂だ。川面はもはや流れているというよりは、巨大な青い鏡の如く固定され、その土手には、化学反応によって結晶化した青い塩のような堆積物が、夏の日差しを浴びて万年雪のように冷たく積み上がっている。


その不気味な青の世界を背景に遊ぶ子供たちの姿は、部外者の目には悪夢の具現化にしか映らない。彼らの肌は、インドの太陽が育んできた健康的な褐色を失い、まるで月光の下で数日間放置された死体のように青白く変色している。中には、皮膚の下を走る静脈が、まるで毒々しい蔓植物のように浮き上がり、全身が透き通るような青緑色を呈している者さえいた。


ある少年は、掌に並ぶ六本の指を、まるで神から授かった特別な道具であるかのように誇らしげに使い、重金属を含んだ青い泥をこねて、奇怪な形のシヴァ神像を形作っている。その隣では、別の少女が、骨という概念が消失したかのように軟らかい関節を、関節炎による激痛すら忘れたような奇妙な角度に曲げ、不自然なほど静かに地べたに座り込んでいた。


かつて、アルジュンが警告したであろう「公害による奇形」という医学的な宣告は、今やこの地では何の意味も持たない。その異様な姿こそが、今や「ニーラ・ヴァンシャ」、すなわち「青の血族」という、この流域で最も高貴な階級に属する者だけが許された聖なる象徴となっていたのだ。BNI社が二十年という長い時間をかけて、村々のあらゆる広場で垂れ流し続けた教育ビデオと、スワミ・ヴィシュヌによる陶酔的な説法。それらが、人々の恐怖を塗り替え、遺伝子の悲鳴を「シヴァ神の眷属として再誕するための聖なる刻印」として、彼らの深層心理に深く、そして取り返しのつかないほど強固に定着させていた。


村の広場は、熱病のような期待感に満ちていた。焼け付くような砂埃が舞う中、大きく膨らんだ腹部を抱えた妊婦たちが、気の遠くなるような長い列を作って立っている。彼女たちが手にしているのは、かつては日用品であったはずの、しかし今やBNI社のロゴが神聖な紋章のように刻印されたアルミ製のカップだ。その中には、工場から専用のパイプラインで直送されたばかりの、不純物と重金属が極限まで濃縮された特濃の青い水が注がれている。


彼女たちは、自身の胎内に宿った小さな生命を、一刻も早く、そして一歩でも深く「神」へと近づけるため、その猛毒の液体をまるで砂漠で出会った甘露のように熱心に煽り続けた。一人の若い女が、あまりの化学物質の濃度に食道を焼かれ、胃袋を激しく裏返すような発作に見舞われた。彼女は地面に膝をつき、口の端からドロリとした青い泡を漏らしながら激しく嘔吐したが、その顔に悲壮感は微塵もなかった。むしろ、周囲の妊婦たちから注がれる「そこまで純度の高い青を飲み込めたのか」という羨望の眼差しを浴び、血走った目で満足げに微笑んだ。


「この子の指が一本でも多く、その肌が少しでも深みのある青を持って生まれてくるというのなら、この程度の内臓が焼けるような苦しみなど、シヴァ神に捧げるべき聖なる供物でしかない」


彼女たちの間で交わされる会話には、かつてのインドの母親たちが持っていたはずの、子供の健やかな成長や無病息災を願うといった世俗的な概念は、もはや塵一つ残っていない。そこにあるのは、いかにして「純度の高い青」を効率よく胎児の血管に注ぎ込み、より完璧な変異を引き出すかという、狂気に彩られた倒錯した育児論だけであった。


彼女たちは、自分たちの体が毒によって内側から崩壊している事実を、魂が神聖な次元へと昇華するための「脱皮」であると信じ込んでいた。カップが空になるたびに、彼女たちは空を仰ぎ、まるで神の祝福を噛み締めるかのように、青く染まった舌を誇らしげに突き出してみせる。その光景は、一見すると祝祭のような華やかさを帯びていたが、その実態は、次世代の命を自らの手で青い檻へと閉じ込めていく、救いようのない連鎖の始まりであった。


新しく塗り替えられたカースト制度の頂点に君臨するのは、環境毒性によって変異の度合いが最も激しく現れた子供たちである。産室から上げられる産声が、多指症や皮膚の鱗状化といった明らかな異常を伴うものであればあるほど、それは神の寵愛の証明として祝賀の対象となった。銀皮症によって全身が金属的な青色に輝く赤子が産声を上げると、その家にはBNI社の役員が自ら出向き、莫大な「神聖養育手当」を約束する目録を手渡した。近隣の住民たちは、まるで救世主の降臨を拝むかのように、その不自由な体を持つ赤子の足元に額を擦り付け、自らの魂の救済を請うのだった。


親たちは、我が子が将来「ニーラ・ヴァンシャ」として工場の管理階級に迎え入れられ、特権的な地位を約束されることを熱烈に夢見ていた。彼ら自身もまた、二十年にわたる重金属の摂取によって関節が醜く腫れ上がり、指一本動かすのにも激痛が走る肉体を持て余していたが、その震える手で青いボトルのキャップを、聖なる儀式のように誇らしげに開け続けていた。彼らにとって、その一滴はもはや生存に必要な水分ではなく、神と一体化するための唯一の絆であった。


「我らは選ばれた。この青き痛みこそが、天界への階段なのだ」


そう呟く老人の歯茎は、鉛毒によって黒ずんでいたが、その瞳には狂信的な光が宿っている。そこには、毒を飲み続けるという自傷行為を介してしか維持できない、あまりにも残酷で、そして底知れぬ静けさを湛えた日常が、鋼のような強固さで広がっていた。人々は、自分たちの血が、肉が、そして未来が、工場の排水溝から流れ出る化学物質に完全に書き換えられたことを喜び、青い泥が流れる川面に向かって、絶えることのない祈りの合唱を捧げ続けた。


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