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第1章8 勇者の痛ましい爪痕

最後まで読んでくださると嬉しいです!

『ロックバードズ』との戦いに見事勝利をした僕らは、その後も慎重にこの道を進んでいった。

「タクマ様!村の門が見えてきましたよ。」

「あぁ。良かった、でも最後まで油断せずに行こう!」「はい!」とまぁ会話をしていたらいつの間にか峠下村の門前についていた。


 峠下村とうげしたむらの門を固く閉ざし、竹槍を構える村人たちの瞳には、深い「不信感」と「恐怖」が張り付いていた。

 僕が【知恵】の権能で村の内部を俯瞰すると、活気は微塵もなく、子供たちは空腹で力なく座り込んでいる。

「待ってくれ、争うつもりはない! 僕は市ノ尾村から来た旅の者だ」

 僕が両手を挙げると、村人の一人が吐き捨てるように叫んだ。


「嘘をつけ! 先日も『聖剣の勇者様の一行』を名乗る連中が来て、村の備蓄を根こそぎ持っていったばかりだぞ!」

「……勇者レオンの一行か?」

「あぁそうだ! 『魔王討伐のために必要な供出だ』と言ってな! 抵抗すれば『魔王に加担する反逆者』と見なすと脅され……冬を越すための種籾たねもみまで奪っていったんだ!」

 彼らにとって、村を救うことは「クエスト」であっても、村の「生活」を持続させる視点など微塵もない。彼らが振りかざす「正義」は、この村にとってただの「略奪」でしかなかった。


 その時、村人の後ろから一人の少年が走り出てきた。

 年は僕と同じ、14歳くらいだろうか。粗末な服を着ているが、その瞳には商売人特有の鋭さと、必死な光が宿っている。

「……待ってください! その人、もしかして『知恵の勇者』タクマ様じゃないですか!?」

 少年は僕の腰の鉄剣と、市ノ尾村の鍛冶屋が打った独特の紋様がある盾を見て、息を呑んだ。


「おじさんたち、槍を下げて! 僕は先週まで市ノ尾村に仕入れに行っていたんだ。そこで見たよ……。このタクマ様が、死にかけていた村をたった一週間で作り直すのを!」

 少年は村人たちに向き直り、熱っぽく語り始めた。


「市ノ尾村は今、活気で溢れてる。子供たちは文字を学び、見たこともないほど効く薬を作って、商人たちがこぞって集まってるんだ。タクマ様は、ただの勇者じゃない。僕たちみたいな『持たざる者』に、生きるための武器と知恵をくれる本当の救世主なんだ!」

 少年の必死の証言に、竹槍を構えていた男たちの力が抜けていく。


僕は少年に小さく頷き、村人たちへ一歩歩み寄った。

「紹介に預かった通りだ。……村の人たち。僕はあいつらとは違う。あいつらが持っていったのが『略奪』なら、僕が提案するのは『再建』だ」

 僕はカバンから、道中で仕留めたロック・バードズの肉と、市ノ尾村の特製滋養薬を取り出した。

「これを今すぐ空腹の者に配れ。代金は後でいい。……その代わり、この村を僕の『傘下』に入れ。市ノ尾村とこの峠下村を繋ぎ、旧ルートを僕たちの専用物流網として再定義する」


「傘下……? 私たちを支配しようというのか?」

「いいや、商売のパートナーになるんだ。君たちは王国の搾取から守られ、僕はここを西への重要な物流拠点として活用する。……勇者が壊したこの村の『負債』、僕がすべて買い叩いて、利益の出る優良物件に変えてみせるよ」

 【言霊】を乗せた僕の宣言に、村人たちの瞳に希望という名の「計算」が灯る。

 

「……ミユ、次の仕事だ。この村の帳簿をすべて洗うぞ。奪われた分は、あいつらから倍にして取り返してやる」

「はい、タクマ様! 悪徳勇者なんかに負けられませんね!」

 知恵の勇者タクマ。彼の「支配域」が、今、二つの村へと広がった。

最後まで読んでくださりありがとうございました!また別の作品や次の話も読んでくださると嬉しいです!

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